葬儀業界の最先端を行く人々をインタビュー お葬式事情の”今”とは?

葬儀業界の最先端を行く人々をインタビュー お葬式事情の”今”とは?

 お葬式というと、斎場や寺などで故人の親戚や友人、知人を集めて執り行うのが一般的。ですが、中にはこうした決まり切った形式から離れ、独特なスタイルで弔いの儀式をする人もいるようです。

 たとえば、母親が生前に使っていたベッドで「仏壇」を手作りした人、ゆうパックで遺骨を引き取るお寺の住職、葬儀会館に「ドライブスルー」を導入した社長など……。本書に登場するのはそんなインディーズ精神にあふれた、葬儀業界の最先端を行く人や会社。著者の朝山実さんの取材、インタビューを通し、変わりゆくお葬式事情とその周辺の”今”が見えてくるノンフィクションとなっています。

 本書からいくつかの事例を紹介すると、母のベッドで仏壇を作ったというのは、アート・ユニット”明和電機”で知られる土佐信道さん。お母様は2017年の大晦日に亡くなったそうですが、それまで寝ていたベッドは廃棄するというのを聞き、「あ。このベッドで仏壇つくれるかも」とピーンとひらめいたことから、葬儀の合間にアトリエで制作したといいます。前々から木工が好きな土佐さんにとっては、ベッドの木目を活かしてアーバンな家具調仏壇に作り変えるというのは造作なかったよう。仏壇内の天井部分にはIKEAで調達した小さなライトも取り付けたといいます。

 ゆうパックで遺骨を引き取るという「送骨サービス」をおこなっているのは、埼玉県熊谷市にある曹洞宗・見性院です。希望者はインターネットなどから申し込み、お寺から送付されたダンボールの郵送キットに遺骨を収めてゆうパックで返送すると、永代供養をしてもらえるという仕組み。寺院の敷地内にある「永代供養墓」へ納骨された後は、管理料金などの類は一切ナシだそうです。これで3万円ポッキリというのは破格では……。このサービスは、収めるお墓がないと思案に暮れる人たちの文字通り”駆け込み寺”になっているようです。

 そして著者の朝山さん自身もある種、葬儀業界の最先端に携わっているといえます。5年前に父親の葬儀の際に出会った霊柩車の運転手が葬儀会社を起業したのですが、朝山さんは父親の残した一軒家を葬儀会館として貸し出しているのです。昔ながらの屋敷のような純和風建築は一見すると葬儀会館には見えないそうですが、利用した人たちからは「落ち着く」と好評だといいます。

 ほかにもさまざまな弔いの現場・現状が描かれている本書。最先端というのは何であれ、異端児でありパイオニアであるもので、中には本書に登場するような人たちに対しても、驚いたり眉をひそめたりといった反応を示す人もいるようです。けれど、形式通りの葬儀よりもむしろ強い思い入れをもって「弔い」というものに臨んでいるように感じられて、読んでいてとても興味を惹かれます。

 そして、葬儀事情の今を垣間見ることで、これから先どうなっていくのかについても自然と思いが広がるはず。本書は自身の終活について考えるきっかけにもなる一冊と言えるかもしれません。

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