甘いだけではない砂糖の話

甘いだけではない砂糖の話

今回は佐藤健太郎さんのブログ『有機化学美術館・分館』からご寄稿いただきました。

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甘いだけではない砂糖の話

最近、某所で砂糖に関する原稿を書いております。紀元前から使われてきた最高の甘味物質で、世界で年産1億6千万トンにも上ります。世界70億人が一人当たり毎年23kg消費している計算ですから、その凄さが分かります。

砂糖(スクロース)分子

砂糖(スクロース)分子
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砂糖は、ただ食べられるだけが能ではありません。安く大量に手に入るため、構造に手を加えていろいろな用途に使われています。例えば、8つのヒドロキシ基に硫酸基を結合させたものは、胃粘膜保護作用があるため胃潰瘍の患者に用いられます。スクラルファートと呼ばれ、市販の胃腸薬にも配合されていますから、名前を聞いたことのある方も多いでしょう。

スクラルファート

スクラルファート。実際には水酸化アルミニウムとの塩として用いられる。
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水溶性である砂糖の分子に、脂溶性である脂肪酸の長い鎖をつけたものは、界面活性剤としてはたらきます。毒性もなく安全であるため、食品の乳化剤などとして活躍します。脂肪酸の種類、結合位置や数により、いろいろな性質を持ったものが作れます。

着色

水溶性のスクロース部分を水色、脂肪酸部分をピンクに着色。
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もっと短い、酢酸とのエステルもあります。スクロースの8つのヒドロキシ基を全てアセチル化したものは、意外にも非常に苦いのです。そんなものをどうするんだと思いますが、間違って子供が飲んではいけないようなものに少量加え、誤飲を防ぐという用途があるのです。また、純粋なエタノールには酒税がかかりますので、消毒用のエタノールにはこれを少量混ぜて、飲用できないようにしたものがあります。

オクタアセチルスクロース

オクタアセチルスクロース
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それにしても、甘い砂糖と酸っぱい酢酸を化合させると苦い物質になるというのは、ちょっと不思議です。化学の面白さ、味覚の不思議さを伝えるのに、これは最適の題材といえるかもしれません。

執筆: この記事は佐藤健太郎さんのブログ『有機化学美術館・分館』からご寄稿いただきました。

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