本当は幸せじゃない“ジューン・ブライド”?

6月を英語でいうとジューン。これがローマ神話のジュノー(ユノー)に由来していることは、“6月の花嫁(ジューン・ブライド)”の語源からご存知の方も多いのではないでしょうか。
ローマ神話に出てくる女神ユノーはギリシャ神話の女神ヘーラーと同一視される存在で、主神ユピテル(ギリシャ神話ではゼウスと同一視される男神)の妻であり、女性の結婚生活を守護するといわれていることから、ユノーの加護があるように願いをこめてとジューン・ブライドという言葉が生まれました。

ところで太陽系の惑星の英語名が、ギリシャ・ローマ神話の神々の名前に由来していることはご存知でしょうか。マーキュリー(水星)はローマ神話のメルクリウス、ギリシャ神話のヘルメスのことですし、マーズ(火星)はローマ神話のマルス、ギリシャ神話のアレスのことです。
そして太陽系にある惑星のなかで、質量・大きさともに最大である木星の英語名がジュピター、すなわちローマ神話のユピテル、ギリシャ神話のゼウスになります。木星には66もの衛星がありますが、なかでも有名なのが、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの“ガリレオ衛星”と呼ばれる4つの衛星です。実はこのうちイオとエウロパ、カリストはギリシャ神話においてゼウスの愛人たちの名前、ガニメデはゼウスがそばに置いた美少年の名前なのです。木星のほかの衛星にもゼウスの愛人や、愛人に生ませた子どもなどの名前がついています。木星にゼウス(ユピテル)の名前がついたのは、大きさや質量が最大であること以上に、この衛星の多さが愛人の多いゼウスの姿に重なって見えたからかもしれません。

ギリシャ神話はゼウスの浮気なくして成立しないと言っても過言ではないほど、ゼウスの恋物語に端を発した話が多くあります。直接的には関係していなくても、ゼウスの愛人が生んだ子どもが主役だったり、あるいはその子孫が主役だったりと、とにかく元をたどればゼウスにたどりつく物語がほとんどです。
それだけ浮気を繰り返す夫なら、妻も愛想を尽かして離婚するか、あるいは諦めてどうでも良くなるかが現代女性では多数派だと思うのですが、ヘーラーは律儀に夫の浮気に憤怒し、ゼウスの愛人たちに嫉妬します。時には愛人たちに対して残酷な仕打ちをすることも。

夫の浮気に悩まされるヘーラーが、幸せな結婚生活の守護神というのもおかしな話ですが、もともと違う神話だったローマ神話とギリシャ神話が融合した際に生じた齟齬(そご)なのでしょうか。あるいは、ギリシャ神話には性に奔放な女神も多くいますがヘーラーが貞淑であることを考えると、かつては貞淑な妻であることが幸福な結婚の証とされたのかもしれません。
神話における結婚が土着宗教との融合を意味するなどの解釈もありますが、表面的なことだけを見れば、ヘーラーの結婚は果たして幸せと言えるのかどうか……。

これから結婚を考えようとしている女性の皆さん、幸せな結婚の加護がほしいのであれば、ジューン・ブライドにこだわり過ぎないほうが良いかもしれませんよ?

ちなみにヘーラーの名前がつけられた天体は、木星と火星の間の小惑星帯にある小惑星ジュノー。火星の名前の由来であるマルス(アレス)が、ユピテル(ゼウス)とユノー(ヘーラー)の間に生まれた息子であることを考えると、ちょうど良い位置なのかもしれませんね。

画像:足成より引用
http://www.ashinari.com/

※この記事はガジェ通ウェブライターの「nikolaschka」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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