「兜町の女神」が教えてくれた。株式投資の初心者が資産を作るための心得とヒント
日経平均が2万円台を超え、株式市場が活況を呈している今。周りに株を始めた人が増えてはいるものの、いざ自分がやってみようと思うと「興味はあっても知識がない」状態で何から始めたものか……という人も多いのでは?
そこで、今回は夕刊フジの「株1グランプリ」2014年グランプリにも輝いた有名株式投資アドバイザー 向後(こうご)はるみさんに、これから株を始める人が押さえておくべき「初心者の心得」を聞いてみた。
『兜町の女神』の異名を取る彼女は市場や心持ちの何を重要視しているのか? さっそく紹介してみよう。
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・株をはじめる際の鉄則は「マイルール」の設定
・株式投資に必要なのは、知識やスキルよりもメンタル
・株は「人間力の向上」と「モテ期」をもたらす?
・銘柄選びのヒントは「身近な世界」や「国策」に
株をはじめる際の鉄則は「マイルール」の設定
向後さんが株式投資を始めたきっかけは、ファイナンシャルプランナーの資格取得に向けた勉強を通じて資産運用に興味を持ったことだという。
「資産形成の勉強をしていくなかで、まだ20代もそこそこに“長生きリスク”というものを考えるようになったんです。将来的にどんな外部環境の変化が起きても生きていけるようにしたいな、と。それで保険やインフラ関連の中国株を買いました。当時はもちろん知識もまだまだで、不安がないわけではありませんでしたが、“とにかく踏み出さなければ何も変わらない”と思って始めてみたんです」
同じように一歩踏み出そうとしている人たちは、まず何を考えるべきなのだろうか。向後さんは「上手くいったときの“上昇イメージ”だけでなく、“下降リスク”を想定しておくことが投資の大前提」と話す。
「株で失敗する人には、儲かる姿ばかりをイメージして、下を見ていないというパターンが多いように思います。つまり、負けるときのこともしっかり想定しておくということです。投資用の資金を準備し、実際に株を購入したら、“それがいくらまで下がったら手放すか”という出口を自分のルールとして決めておくことが大切です」
日経平均が2万円台に突入し活況を呈する株式市場は、勝ちやすく負けやすい環境であるともいえる。仮に10万円の投資資金を用意して株を購入するなら、これが5万円に下がったときはきっぱりやめるなど「マイルール」を決めておく必要があるのだ。
株式投資に必要なのは、知識やスキルよりもメンタル
また、向後さんは「株式投資に最も必要なのは知識でもスキルでもなく、メンタル」と断言する。何が起こるか分からない株式投資の現場で、不測の事態にも冷静に対応していけるのは知識の豊富さではなくメンタルの強さだという。
「株も人間関係と同じで、事前に調べて相手を知れば知るほど、“自分の思い通りになってほしい”という期待ばかりが先に立ってしまうんです。けれどもマーケットは常に中立。自分だけに味方をしてくれるはずがありません。先入観を持たずにフラットに物事を判断するために必要なのがメンタルなんです」
向後さんが指摘する「株式投資に必要なメンタル」は以下の通りだ。
■自分の非やリスクを素直に受け入れる
「間違うはずがない、きっとまた上がる」という頑固さから抜けられない人は失敗する。
■人の意見や情報に流されない
皆が言っていることや報道されていることはすでに多くの人がつかんでいる情報。流されずに、ときには「動かない、手を出さない」という判断をすることも大切。
向後さん自身も日々入ってくる膨大な情報と向き合い、「自分はフラットな目で判断できているだろうか」と自問自答を繰り返す日々だという。
「こうした習慣を身に付けると、実生活にもプラスに働くんです。私自身“人のせいにしたり文句を言ったりしない”“人に対して期待しない”ことが当たり前になって、人間関係がとてもスムーズになりました。知識やスキルうんぬんの前に、メンタルのコントロールが必要であることを知り、意識してほしいですね」
株は「人間力の向上」と「モテ期」をもたらす?
公的年金制度に対する不安や、終身雇用という過去の常識の崩壊……。老後の安心を考えれば、資産運用に踏み出すことはマストであるようにも思える。一方でどうしてもリスクばかり考えてしまい、なかなか手を出せない人も多いだろう。
「投資に踏み出せない人の多くは、リスクへの“恐怖”を乗り越えられないことが理由だと思います。先ほどお話ししたように、下降リスクを想定して身を引く基準をしっかりと決めておけば緩和できると思うんです。
また、株がもたらしてくれる収益以外の恩恵にも目を向けてもらいたいですね。投資をしていると“無駄な支出は控えよう”と考えるようになって金銭感覚が磨かれていきます。銘柄を研究するうちに世界経済の仕組みが見えてくるようになり、人生観も深まっていく。それが人間力の向上につながっていきます。株をやっていると、「モテ方」も変わってきますよ(笑)」
向後さん自身は、買い手と売り手がし烈な戦いを繰り広げる株価チャートの世界が「とてもドラマチック」だと感じるのだそうだ。チャートの軌跡を単なるカネの動きと見るのではなく、そこには市場に資金を投じている人の思いが詰まっている。今、大笑いしている人もいれば、ドン底を味わっている人もいるのだ。
「私自身は“銘柄選びは男選びよりも楽しい”と思っています(笑)。ある意味では株オタク。チャートの動きを見つづけていくうちに“明日ストップ高になりそうな銘柄”を見つけるコツが掴めるようになったりして、どんどん楽しくなっていきました」
銘柄選びのヒントは「身近な世界」や「国策」に!
最後に、実際に株を買う際に考える「銘柄選び」にもアドバイスをいただいた。
「まず大切にしてほしいのは、自分自身の身近な世界から考えることですね。自分が働く業界や、普段の生活で利用するサービスの中で“素晴らしい”と思えるものがあれば、これから伸びていく可能性があります。ただし、自分自身の思いこみだけで判断しないこと。自分が良いと思うものは他人の心にも響くものなのかどうか、周囲と会話をすることで感性を磨きながら、最終的には自分で決めることです。
また、時流に乗って伸びていく業界や企業、サービスを知るヒントは、例えば内閣府のホームページにたくさん眠っています。マイナンバー制度の導入に伴ってセキュリティ関連の銘柄が注目されていたり、ニュースでもよく目にするインバウンド関連の銘柄が注目されていたりしますね。こうした“国策”に端を発するものは世の中を大きく動かしていきます」
これからの世の中がどう変わっていくのか、それを実現しようとする企業やサービスへ期待の意味を込めて投資することが株の本来的な意義でもある。さまざまな情報に触れ、流されることなく「未来への想像力」を働かせるトレーニングが大切だと向後さんは語気を強める。
「いちばん分かりやすい銘柄選びの基準は、“買った理由を自信を持って人に説明できるかどうか”です。その株を買った背景を冷静に、客観的に語れるのであれば大丈夫。上手にリスクと向き合いながら、株式投資を楽しめるはずですよ」
<向後はるみさん プロフィール>
投資エバンジェリスト、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト(CMTA®)。投資助言業では需給や得意のチャート分析、情報網を駆使し、旬なセクターや銘柄による効率的なパフォーマンスを追求。柔軟な投資スタイルと徹底したリスク管理で「損小利大」を目指す。専門サイトや多数のマネー誌での執筆のほか、ブログ(http://profile.ameba.jp/fp-talk/)でも個人投資家に向けて有益な情報を発信中。
文/多田慎介+プレスラボ
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