働き方先進国、フィンランドのワークスタイルについて(前編) (note/ikkaku -サラドの情報発信メディア-)
今回は『note(ikkaku -サラドの情報発信メディア-)』より中村 洋一郎さん執筆の記事からご寄稿いただきました。
働き方先進国、フィンランドのワークスタイルについて(前編) (note/ikkaku -サラドの情報発信メディア-)
サステナブルで成果の上がる働き方が注目される北欧諸国。高級オーディオメーカーBang&Olufsenを生んだデンマーク、スタイリッシュな家具メーカーIKEAや音楽界のイノベータ―Spotifyを生んだスウェーデン、そして、世界的に支持され続けるムーミンやマリメッコを生んだフィンランド。
そんなフィンランドの広告業界に15年間勤務した後、現在はニューヨークを拠点に活動するメディア・ストラテジストのテロ・ホンカラさん。日本文化にも造詣が深いホンカラさんに、ムーミンとマリメッコを生んだ働き方先進国フィンランドのワークスタイルを聞いてきました。
性別に関係なくチャンスが与えられる労働文化
— まずはじめに現在のお仕事をお聞かせください。
フィンランドのメディア企業での勤務経験を活かし、現在はフリーランスで働いています。クライアントは主に米国進出を果たしたフィンランド企業。彼らのマーケティング・チャネル選定、メディア戦略プラン、ターゲティングなどをお手伝いしています。最大顧客は北欧有数のメディア企業です。
— フィンランドの働き方の特長を教えてください。
なにより「平等」です。誰にでもチャンスがあり、平等に扱われます。性別は関係なく、男女ともに同等の権利をもちます。伝統的には男性優位の傾向が強くありましたが、そのような時代は終わりました。女性のリーダーが非常に多く活躍しています。
少なくとも過去20-30年は、完全に男女対等だと思います。社会は既に変わりましたし、いまも変わり続けています。フィンランドは女性の首相が誕生した数少ない国の1つであり、2000年から12年間、女性の首相が政治のトップにいました。
*筆者注:フィンランドは古くからのジェンダー先進国であり、1906年には世界で初めて女性の被選挙権を認めました。その後の世界大戦期間は女性が国内経済を牽引し、戦後も政治・経済の世界に女性が残り続けました。こういった歴史がフィンランドにおける男女平等文化の礎になったものと推測します。(参考:フィンランド厚生労働省ウェブサイト*1 )
*1:「Finland is a gender equality pioneer」『Sosiaali- ja terveysministeriö』
https://stm.fi/en/finland-is-a-gender-equality-pioneer
(ニューヨークを拠点に活動するメディア・ストラテジストのテロさん)
階層に左右されない、率直なオープンコミュニケーション
「率直さ」も特長の1つです。ミーティングでは最初から、ものすごくはっきりと、直球で議論を始めます。前置きがありません。そして合意、納得した内容は、ブレることなく支持します。
また発言に階層は関係ありません。例えば、役員クラスのミーティングにそのアシスタントが同席したとします。そこで、アシスタントも手を挙げて発言できます。発言する権利と職位は無関係である、と考えられています。もちろん上司にもよりますが、どんな意見であっても、耳を傾けることが前提です。
事前の口合わせや、事後の撤回なども一切起こりません。これがフィンランド人のDNAであり文化です。
— それは意外でした。北欧の方は柔和なイメージがあったので。
もちろんいい人たちだし、親切ですよ。直球議論と言っても、攻撃的に議論するわけではありません。お互いをリスペクトもしています。はっきりと論点のみを議論し、それ以上でも以下でもありません。裏もありません。言語的にも、丁寧語や謙遜語などがないため、同僚に対するのと同じ言葉を使って議論します。とても心地良い文化です。
—以前からそのような文化があったのでしょうか。
私の知る限り、20年前も同様です。社長に言いたいことがあれば、言うだけです。もちろん、必ずなにかを言わなくてはいけない、ということではなく、本当に言うべきことがあるなら、言う機会はあるという意味です。
例えば従業員200名程度の企業で働いていた際、社長(女性)は常に自分のオフィスのドアを開けていました。社員はいつでもノックして、いまちょっといいですか?と話せます。もちろん彼女が忙しいときは、あとにして、と言われますが、通常は「そこに座って。どうしたの?」という感じでした。相手が新入社員であっても、です。
また別の会社では、社長や役員は自分の部屋すら持たず、オープンスペースで働いていました。他の従業員と同じ場所、同じ環境で、いわばコーワーキングです。ただしオフィスの一角に「サイレントルーム」があり、そこで仕事している際は、声をかけてはいけないルールがありました。
(テロさんの言葉に耳を傾ける筆者。)
できないと言いやすくするのが上司の役割
もうひとつフィンランドの企業文化で好きな点は、「できない、難しい」と上司に助けを求められることです。助けを求めることに全く躊躇がない。助けを求めるのは失敗でも敗北でもない。我慢もしません。
これは、部下を助け、解決策を見つけるのが上司の重要な業務であるいう認識が浸透しているからです。そのため、部下が躊躇なく助けを求められる環境を作ることが上司の大切な仕事になっていました。
日本には「できない」と言いにくい文化がありますよね。フィンランドでは、「できない」と言ってOKなんです。
業界による違いはあり、メディア系企業は進んでいる方だと思いますが、昔ながらの文化を継承する保守的な業界であっても、概ね同様だと思います。
競争の激しいアメリカ、感情面に優れたスウェーデン
— アメリカ企業とはどのような違いを感じますか。
上司に話しやすい環境という点は似ていると思います。
異なるのは、社員が持つ権限の大きさ。フィンランドでは、社員は自らの業務内容を決められます。自分がその目標にどうやって到達するかは自分次第です。アメリカの特に大企業だと、業務範囲がとても狭く、その狭い業務範囲の中でお互いがけん制し合って仕事しているように感じます。フィンランドではそんなことはありません。
またアメリカの職場は競争が非常に激しいです。油断していたら誰かに仕事をとられる、出し抜かれる、なんていう競争意識を感じます。これはフィンランドではありえません。
あとアメリカには必要以上に発言する方が多くいますね。フィンランドは必要ないことは発言しません。このあたりは日本人とフィンランド人の似たところかもしれません。
— 他の北欧諸国との違いはいかがでしょうか。
スウェーデンとは大きな違いを感じます。フィンランドは統計や数値的な情報を重視します。これ自体は悪いことではありませんが、度が過ぎると感じることもあります。逆に感情面や主観を重視すると低く評価されてしまうこともあります。
一方、スウェーデンは感情面や主観の扱いが上手で、マーケティングを得意とします。IKEAやSpotifyのマーケティングがいい例でしょう。それと対照的なのがフィンランドのNOKIAのマーケティングです。
フィンランドは工学教育に非常に力を入れている国であり、教育システムの違いが企業の強みに影響を与えているように感じます。
後編に続きます→
https://note.mu/salad_tokyo/n/n3c64ecd31013
執筆:中村 洋一郎(@Yoichiro32)
中村 洋一郎(NY在住 人と組織のコンサルタント)
企業は人なり – 健康は生活習慣に宿る – 伝統とエビデンス – 身体との対話 – 米国栄養療法協会認定 栄養療法コンサル
https://note.mu/yoichironakamura
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ランチは午後の自分への投資として考えオフィスにいる間のパフォーマンスをベストな状態に整えるためのサラダランチを提案しています
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執筆: この記事は『note(ikkaku -サラドの情報発信メディア-)』より中村 洋一郎さん執筆の記事からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2019年10月2日時点のものです。
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