人事評価項目に、新たに「イノベーション」が加わった…ルート営業の自分は何をすればいい?【シゴト悩み相談室】

人事評価項目に、新たに「イノベーション」が加わった…ルート営業の自分は何をすればいい?【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!

曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。最新刊『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)も好評。

CASE33:「評価軸に『イノベーション』という項目が追加されたけれど、いったい何をすればいいの?」(27歳・機械関連メーカー勤務)

<相談内容>

中規模の機械関連メーカーで、営業職として働いています。今期から、人事評価の軸に「イノベーション」という項目が新たに加わりましたが、これをどう捉えればいいのか悩んでいます。

上司には「営業成績や行動評価だけでなく、現場でどれだけイノベーションを起こせたかも評価対象になる」と言われましたが、何をすればいいかまったくピンときません。

イノベーションとは?でネット検索したら、さまざまな分野での革新を意味しているとわかりました。ただ、企画系職種ならわかりますが、ある程度顧客が固定しているルート営業の私の仕事において、どんなイノベーションが起こせるというのでしょう?

いったい会社は、どんな目的でイノベーションを評価軸に加えたのでしょうか?そして私にできるイノベーションはあるのでしょうか?

今まで営業成績は良く、評価も比較的高かっただけに、この評価軸が加わったことで評価が下がらないか不安です。(営業職)

業務改善や業務効率化への取り組みで、十分評価対象になるはず

「イノベーション」とは本来、産業革命レベルの大きな革新のことを指します。ただ現在では、「改善」という意味でつかわれているケースが多いようです。

おそらく相談者の勤務先も、働き方改革の一環で、「業務務改善・業務効率化」を狙ってイノベーションの項目を追加したのではないかと思われます。

だから相談者も、そんなに大げさに捉えすぎる必要はないと思います。上司が言うように「現場でどれだけイノベーションを起こせたかが評価対象」であればなおさら、0から1を生み出すような大きなことを考える必要はなく、現状の業務フローを見直してムダを排除するような取り組みを行い、業務改善や効率化を行うことで十分評価されると思われます。

営業としてもう一歩踏み込むならば「新顧客・新領域」を目指しては?

経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションのことを「新結合」と表現しています。つまり、すでに存在するもの同士を結合することで、新たな価値を生み出すのがイノベーションであると定義しています。

相談者がもう一段踏み込んで「イノベーション」に取り組んでみたいのであれば、「新結合による新しいマーケットの拡大」を目指しましょう。相談者は営業担当ですから、これが実現できれば高く評価されるのではないでしょうか。

営業においてイノベーションを考えるときは、「どんなターゲットに対して」「どんな商品・サービスを提供するのか」という2軸で4象限に分けて考えます。

4象限のうち「既存ターゲット(=クライアント)に既存の商品・サービスを提供する」のは相談者がすでにやっていること。そして、4象限の逆サイドにある「新しいターゲットに新しい商品・サービスを提供する」のは、現在のリソースが全く使えないということになるため、難易度が高く失敗する可能性が高いと判断できます。

となると、ピポッドの可能性があるのは「既存クライアントに新しい商品・サービスを提供する」か、「新しいターゲットに既存の商品・サービスを提供する」か、のどちらか。そして、固定客向けルート営業担当の相談者に対して、会社があわよくば期待しているのは、おそらく前者のほうでしょう。

固定客と密接な関係を築いているルート営業の場合、顧客の信頼を得れば得るほど、業務上のいろいろな悩み、課題を聞いているはず。その中には、「うちの商品・サービスでは解決できないから」とスルーしてきたものもあるのでは?今までのやり取りを振り返ってみてそれを洗い出し、「新たなマーケットの可能性」として企画や開発部門に伝えるのです。

小説家のマーク・トウェインの名言に、「ハンマーしか持たない者には、すべてのものが釘に見える」というものがあります。つまり、自社の商品・サービスで解決することしか考えない人は、そのほかの課題を聞かされても聞き逃してしまうものなのです。

視野を広げて再度振り返り、もしくはもう一度クライアントに「以前こんなことをおっしゃっていませんでしたか?」などとヒアリングして、自社では解決して来られなかった悩み、課題をまとめ、「これらの課題を解決できる商品・サービスが作れれば、きっと喜ばれるはず。当社にとって新しいマーケットになり得る」と進言しましょう。現場でしかつかめない課題をもとに進言することは大きな価値があり、重要なイノベーションの芽として評価されるでしょう。

もちろん、既存の商品・サービスを新しいクライアントに売り込めないか、考えてみるのも一つの方法です。

例えば、ある人材採用メディアの営業担当は、新規採用予定のないクライアントに対して「『人材育成を重視して成長している会社』というコーポレートブランディングとして、広告を出しませんか?」と広報部門にアプローチして、売り上げ拡大に貢献したそうです。

相談者の勤務先がどんな製品を作っているのかわからないので、具体的なアドバイスはできませんが、相談者も視点を切り替えてこのような可能性を探ってみてはいかがでしょうか?

既存クライアントから情報収集してみたり、社内で「新しい芽がないか」と意見交換してみたりして、新たな営業先の可能性を検討してみるのです。たとえすぐには実を結ばなくても、こういう取り組み自体が評価ポイントになるはずです。

上司にアイディアをぶつけ、求められているイノベーションの方向性を探る

前述したような業務改善、業務効率化や、既存顧客の別ニーズの吸い上げ、新規顧客の開拓などの案を上司にぶつけ、どういう方向、どういうレベル感のイノベーションが期待されているのか、確認してみるのは一つの方法です。

きっとどれも実現できればイノベーションとして評価されるでしょうが、現状でどの取り組みがより求められるのか、確認してから行動に移せば、「評価されにくいイノベーション」に取り組むリスクを減らせると思います。

もし上司とうまく期待値がすり合わせられず、イマイチ何をやればいいのかわからなかったら…割り切って営業に没頭し、営業成績でぶっちぎりましょう。

アドバイスまとめ

1.業務を見直し、改善を図る

2.新規顧客、新規マーケットを検討する

3.上司と期待値をすり合わせておく

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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