映画『二ノ国』日野晃博さん(製作総指揮/原案・脚本)に聞く「ゲーム版『二ノ国』とのつながり」とは?
製作総指揮/原案・脚本:日野晃博(『レイトン』シリーズ)×監督:百瀬義行(『おもひでぽろぽろ』原画 )×音楽:久石譲 (『千と千尋の神隠し』)という日本を代表するドリームメーカーで贈る、アニメーション超大作『二ノ国』が大ヒット上映中です。
『レイトン』シリーズの他にも、『妖怪ウォッチ』や『イナズマイレブン』など数多くのヒットコンテンツを生んできた日野さんが、「二ノ国」を今映画化した理由とは? お話を伺いました。
――映画『二ノ国』が制作されるまでどの様な経緯があったのでしょうか?
日野:ニンテンドーDS用ゲーム『二ノ国 漆黒の魔導士』の時から、スタジオジブリさんと作品作りをする以上、どこかのタイミングで映画を作りたい気持ちがありました。それが実現せずにいたのですが、2年くらい前に配給会社のワーナーさんから「一緒に映画を作らないか?」という話をいただき、その中で「『二ノ国』が映画になったら絶対にいいと思う」とすごく推していただいたんです。それから、本気で『二ノ国』を映画にするにはどうすればいいか? ということを考えるようになりました。
――レベルファイブの作品はこれまでもメディアミックスが成功していますよね。
日野:基本的に、ゲーム、映画、TVアニメのそれぞれで、物語の作り方やどうすれば面白くなるかはセオリーが違うと思っています。 レベルファイブの作品は、設定に幅があって、TVアニメも作れたり、ゲームも作れたり、映画も作れたりする設定を考えているんです。 それが毎年映画をやっている『妖怪ウォッチ』などのクロスメディアです。 映画で使う設定というものは映画だけで使うものではなく、ゲームで使ったり、TVアニメでも使ったり、コンテンツの要素としての裁量を考えた設計になっています。しかし、今回だけは映画を作るために全て用意したものです。ゲーム版『二ノ国』 の世界観がテーマになりつつも、全て映画のために作った物語ですし、映画のために作られたキャラクター設定なんです。 そこが今までと違うパターンで、新しいアプローチでした。
――ゲームとは登場人物も変わっていますね。
日野:『二ノ国』はシリーズごとに主人公が違いましたし、幼い年齢のキャラクターが主人公でした。この作品では、映画として多くの方にアプローチしやすくするために、年齢を高校生まで上げたり、ラブストーリーをベースにしたりと、映画だからこそ引きが強い設定を選びました。
――映画の為の新しい設定はすぐに決定したのですか?
日野:いえ、迷いまくりました(笑)。
――『二ノ国』の様な壮大な世界観の作品は、設定一つ一つとってもすごく時間がかかりそうですよね…。脚本も相当に時間をかけられたのではないでしょうか?
日野:はい、時間はかかりました。実は最初に書いたシナリオは、ほぼ”二ノ国”だけの内容だったんです。『二ノ国』という作品なのですが、”一ノ国”は出てこない”二ノ国”という世界を舞台にしたファンタジーの物語で。そのシナリオに色々な部門許可をいただいて、脚本も進行していました。でも、音楽を担当してくださった久石譲さんにそれを見せた時に「2つの世界を行ったり来たりするのが『二ノ国』なのに、これでいいの?」っていう、ちょっとした挑戦状を叩きつけられまして……。 それを言われて「確かにその通り……」と思いました。いつの間にか好き勝手に物を作っている自分がいたことに気づきました。ファンタジーの世界の方が魅力的だと思って『二ノ国』の根本を変えてしまっていたんです。
「内容が面白ければそれでいい」という考えもあると思うんですが、それでもやっぱり『二ノ国』の最初に作った世界観の面白味って、”2つの世界があってそれが繋がっている”ということなのだと考え直させられました。
――久石さんは音楽のみならず、映画のお話に関することもガンガン言われるんですね。
日野:そうですね。音楽のみならず色々アドバイスしてくださっています。新しいコンセプトで作ったものに関しては良いと言っていただけましたが、その後もいろいろとアドバイスを受けました。 今回のテーマ上、命のやり取りがあるので、殺伐とした言葉が少なからず登場します。久石さんは温かい作品を作りたかったこともあって、「”殺す”っていう言葉が多すぎる!」と言われ、「うーん……」と悩みましたね。 なのでそういった言葉を極力シナリオから減らしていったりと、そういう細かなところを久石さんには気づかせてもらえました。久石さんの言うことは聞かなきゃいけないかなって思っています(笑)。
――久石さん、さすがです…(笑)。これは、ゲームファンの方へのお楽しみポイントだと思うのですが、今回の映画はゲーム版『二ノ国』とどのように繋がっていますか?
日野:僕の中では、『二ノ国Ⅱ レヴァナントキングダム』の主人公であるエバンが、エスタバニアを作った数百年後のエスタバニアが本作という設定で作っています。軽い繋がりなんですけどね。エバンの時代に二ノ国を統一するんですよ。 なので、二ノ国の王達がエスタバニアには銅像として立っている様なシーンが映画でもあって。 でも、すべての国を束ねるって長く続かないんじゃないか? ということで、内乱が起きたり、それに反発する勢力が生まれたりして、エスタバニアを脅かすという状況になっています。
――ゲームのファンの方はそういうつながりがあるんだと気付けますし、映画からご覧になった方はこれをきっかけに「二ノ国」の世界観をじっくり楽しむのも良いかもしれないですね。
日野:僕はとにかくファンタジーの世界観が好きで、それで最初は映画も”二ノ国”だけで良い!とすら思ってしまったのですが、映画の中の二ノ国は自分も行ってみたいなあと思える素敵な世界観になっていると思います。ゲームをプレイしたことのある方も無い方も、ぜひそこを楽しんでいただけたらなと。
――日野さんご自身は “二ノ国”に行くことになっても受け入れられますか?
日野:行きたいですね! だ、一定の立場以上にいたいですね。王子じゃなくていいんですけど、戦士くらいにはなっていたいです(笑)。 町人とかだと嫌ですよね、もうちょっとエキサイティングなポジションでいたいです。剣を使って戦うくらいのことはさせていただきたい!
――今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!
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