『ダンボ』肌の質感やリアルな表情はどう作られたのか? VFX担当者が語るメイキング映像
ウォルト・ディズニーが手がけた、世代を超えて愛され続ける名作アニメーション『ダンボ』を、鬼才ティム・バートン監督が見事に実写映画化!ディズニー×ティム・バートン監督が、オリジナル脚本で贈る新たな感動のファンタジー・アドベンチャー『ダンボ』が、MovieNEXと4K UHD MovieNEXで発売中、デジタル配信中です。この度、本作のVFXを担当したリチャード・スタマーズのインタビューコメントが到着!
本作に登場するダンボはフルCGだが、本物のゾウのような肌の質感や動き、ときに人間のようなリアルな表情など、その最新鋭のCG技術が活用されてる。今回は、本作のVFXを担当したリチャード・スタマーズにインタビューを実施し、ダンボ製作秘話を明かしています。
――ダンボや動物たちは、全てCGで製作されているとは思えないほど素晴らしかったです。キャラクターたちが現実に存在しているかのように見せるための、こだわりやポイントなどを教えて下さい。
ダンボをできるだけリアルに見せるように表現するのは、本当に難しいチャレンジでした。ティム(監督)の要望は、映像でリアルに見せられるよう、本物の象よりも肌をなめらかに見せたり、清潔感のあるキャsラクターにすることでした。最初はアジア象の子象をモデルにしていました。アジア象は、シワが多くて顔のあたりが毛深いタイプですが、ティムは、あまり毛深かったりシワだらけにはしたくないと言うので、かなり苦労しました。リアルな画像があれば、そのままコピーするか、デザインに利用するかできるのですが、使えるものがありません。そうなると、象の肌の質感について細かい情報を探してこないといけません。結局最終的には、ダンボとダンボの母のジャンボの顔と肌の微妙な質感を細部にわたって表現するのに、相当な労力がかかることになりました。目玉一つまで、解像度の高いクローズアップにも対応できるほどのクオリティに達した時に、やっと、どんな撮影倍率でも使えると自信が持てました。
その次のステップは、肌の動きをどう表現するかです。かなりの時間と労力を費やして、筋肉にかぶさる肌の動きを再現するフィジカルなシミュレーションを、筋肉のついたスケルトンのリグを使って行いました。筋肉を動かしたり引っ張ったりして、その上にある肌を動かします。こうしてシワを伸ばしたり縮めたりするわけです。技術的にかなり高度で困難なプロセスでしたが、強力なパイプライン(情報処理のプロセス)を構築したことで、ダンボとジャンボを細部まで表現することができました。
――ダンボの映像は最後に完成したと伺いましたが、キャストの演技に合わせてダンボの映像をCGで制作する際に苦労した点やチャレンジした点などを教えて下さい。
ダンボのアニメーションと実写キャストの映像を合わせるために、撮影のタイミングには細心の注意を払うことが必要でした。主要撮影の時にはダンボの代役(モーション・キャプチャー・アクター)を使いました。私が特に重要だと感じていたのは、撮影前に、ティムがダンボの演技を演出する際の、あらゆる可能性を想定しておくことでした。そうすることで、撮影後にダンボをどこに入れるか考えるのではなくて、撮影中に監督自身がどこにいて何をする必要があるか考えることができます。
▲完成前
▲完成後
この他にも重要だったのは、キャストとダンボの共演のシーンです。例えば、ミリー役とジョー役の子供達が、ダンボを触ったり、なでたり、ダンボと遊んだりするシーンがあるので、ダンボの代役が必要でした。ダンボをデザインする最初の段階で、ダンボのサイズや形を確かめた上で、ダンボのグリーンスーツを着ることのできる小柄の俳優(エド・オズモンド)をキャスティングしました。この俳優はダンボのスーツを着て、ティムの指示に従って歩いたり腕を伸ばしたりします。他の俳優たちとの共演のシーンでは、ダンボと俳優たちが実際にやり取りしているように見せる工夫が重要でした。
▲完成前
▲完成後
――ダンボは、お母さんに会うため、子ども達を助けるためなど、いろいろな目的や思いを持って飛びますが、ダンボの気持ちを表現するために工夫したことはありますか?
新しいテクニックを開発する必要はなかったですが、ダンボの感情を表現するのに、いくつかキーポイントがありました。まずはボディランゲージです。原作のアニメでダンボがどんなポーズをとっているかを見て、本物の象はどうなのかを比べました。撮影前のダンボのデザインの段階で分かったのは、キャラクターのシェイプやサイズを考慮すると、アニメのダンボと本物の象の中間ぐらいのボディランゲージがちょうどいいということでした。
この他苦労したのは、目の表情です。ダンボの目は大きくて、しゃべることができないので目が感情を表す窓になります。でも、最小限の顔の動きで、かなりの表情が表現できることがわかりました。これは、見る人が納得できる映像にするためのキーポイントの一つでした。
――VFXを担当されたリチャードさんだからこそ知っている、制作の裏話などがありましたら、教えて下さい。
ダンボの代役をしたエド・オズモンドやキャストとの撮影で、面白かったプロセスがあります。ダンボのシーンはいつもエドがスーツを着ているわけではなく、ダンボの代わりになる道具を作って撮影をすることもあります。例えば、ダンボが空を飛ぶシーンでは、棒にテニスボールをくっつけて、ダンボの目がどこにあるかわかるようにします。ほかには、(コレット役の)エヴァ・グリーンや子供達がダンボに乗るシーンでは、シーンに合わせて作成したいくつかのリグを使いました。このように色々と工夫するのが大変でした。
【動画】『ダンボ』はこうして作られた! VFX担当者が語るメイキング映像
https://www.youtube.com/watch?v=xJHrL8HgOEE [リンク]
一つ、残念ながら実際には使われなかったのですが、あるシーンの撮影で面白いエピソードがありました。サーカスのパフォーマンスの前に、バックステージでマイケル・キートン演じるヴァンデヴァーが、床に横たわるダンボの上に座って、ダンボと子供達と話すシーンです。撮影では、ダンボ役のエドが背中にマイケルを乗せたまま、ダンボのポーズを取っていました。そして、マイケルが立ち上がって振り向き、ダンボに「よし、ダンボ。立って。ショーに出るぞ。」と言いながら、ダンボの尻を叩いたのです。マイケルがダンボの尻を叩くのは、残念ながらショックが大きかったようです。このように、予想に反した結果になって、計画通りにならないことも、たまには起こります。
――完成した映像をご覧になった時の感想と、さらに今後チャレンジしたいことなども教えて下さい。
今回の映画製作をとても誇りに思っています。1000人を超えるビジュアル・エフェクト・アーティストが関わり、多くの時間をかけて作り上げた作品ですから。ダンボのような愛らしいキャラクターを映像に仕上げるのはやりがいのある仕事でした。素晴らしいプロセスを経験することができました。
今回の製作では、その時にやっていることについて確認したり、次は何をするか考えたり、かなり話し合いがありました。その時々で最善の決断を下しながら製作を進めていくのですが、あとで振り返ってもっと違うやり方があったかもしれないと思いたくはありません。そう考えてみると、今回使ったテクニックは最高のもので、また同じようなことをやるとしても、同じ決断を下すと思います。
――ブルーレイやデジタル配信で、「何度も見てほしい」と思うシーンはありますか?
ピンクの象のシーンは、仕上げるのに苦労したシーンで、最後の最後までかかりました。ダンボが喜びを感じる瞬間を描く大切なシーンだったんです。ティムからは、映画のストーリーを追いながら、虐げられて心の傷に苦しんできたダンボのキャラクターを描写するように言われていました。ピンクの象のシーンでやっと、ダンボが自分の殻を破るのですが、それを心から楽しんでいる様子が顔の表情に現れます。そして、空を飛ぶシーンでは、地上にいた時の苦痛から解き放たれ、喜びにあふれるのです。空を飛ぶシーンは、トラウマから解き放たれた喜びを表すメタファーとして一番のシーンですが、ピンクの象のシーンでも、ダンボが喜びを経験する時の感情の変化を読み取れます。
最新鋭のCGで、見事にダンボの成長を描いた本作のMovieNEXには、”ようこそ! サーカスの世界へ”や”メイキング・オブ『ダンボ』”、”アニメーション映画『ダンボ』へのオマージュ”、エンドソング「ベイビー・マイン」を担当したアーケイド・ファイアのミュージックビデオなど、貴重なボーナス・コンテンツも多数収録。また、デジタル配信(購入)には限定で、作中の魅惑的な「ドリームランド」のシーンを解説した”「ドリームランド」へようこそ!”が収録され、MovieNEXとデジタル配信では、それぞれ異なるコンテンツを楽しむことができます。
『ダンボ』
MovieNEX(4,200円+税)、4K UHD MovieNEX(8,000円+税)発売中、デジタル配信中
https://www.disney.co.jp/movie/dumbo.html
(C)2019 Disney
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