【ここは法廷だゼ!】裁判所のランチ事情・大阪編 消えた牛すじカレー
大阪高等・地方・簡易・家庭裁判所の建物は、地下鉄御堂筋線、淀屋橋という駅から歩いて徒歩5分ほどのところにある。写真の通り窓が多く、天気がよければ法廷前ロビーにはたっぷり光が入り、裁判所だということを忘れてしまいそうになるほどだ。ここは霞ヶ関と大きく違うところだろう。
もうひとつ霞ヶ関と違うところは、法曹関係者や裁判所職員と傍聴人が会話している場面を目撃するところだ。法廷前ロビーや喫煙所などの人間交差点ではそんな会話シーンを何度か目にしたことがあった。傍聴人同士も適度な距離感で会話しており、霞ヶ関で孤独な傍聴ライフにいそしんでいるときなど、ふと、うらやましくなることは多い。
5月のある日、実に2年ぶりくらいに大阪の裁判所を訪れる機会があったため、久しぶりに食堂エリアを探検してみた。やはり裁判所のスタンダードスタイル、地下一階に食堂、というパターンだ。ついでに『喫茶』と立て看板が置かれた、何のひねりもない名称の喫茶店がある。その並びには、よろず屋という名前のほうがしっくりくる雰囲気のコンビニ(兼本屋)もある。
昼食を食べるには少し遅めの13時半に到着したところ、地下の大きな食堂はすでにランチタイムを終えていた。このせっかちともいえるほどの早い閉店時間にまた大阪らしさを感じる旅人の筆者であった。という訳で選択肢はなく、喫茶店『喫茶』へ。ここは来るたびに利用しているが、雰囲気が変わらない。低めのソファー椅子に低めのテーブル、店をきりもりするのは熟女……と、田舎町の喫茶店という体だ。メニューは比較的安い。特にトーストは150円、ホットケーキは250円というビックリ価格。粉もの文化の浸透している関西だからこそだろうか……? トーストはコーヒー(250円)よりも安いのである。色々迷うが、この日は高菜ピラフ(スープつき400円)をオーダー。なぜかピラフは充実しており、海老ピラフ、五目ピラフ(いずれも値段は同じ)もそろっていた。
食べ進めていると、筆者のもとに、ここ近年で見かけたことがないような大きなハエが寄ってきた。他にも客はたくさんいるのに執拗にアプローチをしかけてくる。たまらず早食いし、退散した。なぜあんなにハエに好かれてしまったのだろう……。
ところで、この日はそもそも食堂で『牛すじカレー』を食べようと企んでいたのである。2008年当時、食堂には『牛すじカレー』という、他では見かけないようなメニューがあり、味もなかなかだったため、ぜひまた食べようと思っていたのだが……業者が変わったのか、食堂前に貼り出されているメニューは一新されていた。牛すじカレーの文字はどこにもない。あのカレーは幻となってしまったようだ。
かつての大阪のように、各地の裁判所では地域性のあるメニューを出すところもいくつかあったのだが、そのような流れはなくなっていきつつあるのだろうか。2007年当時、福岡の裁判所には豚骨ラーメンと丼もののセット『パワーランチとんこつ』なるエネルギッシュメニューが存在したが、これも現存しているのか、確かめに行かなければならないと強く心に誓った。
傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。
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