新海誠監督「2年間の自分たちのすべてを一言で否定されるって結構痛い」少しでも痛みのない映画作りを目指し客観性を重視
アニメ映画「天気の子」が本日7月19日に公開され、同日放送の情報番組「スッキリ」(日本テレビ系)に新海誠監督が生出演し、“新海ワールド”を創り上げる上での裏側を語った。
番組MCの加藤浩次はすでに作品を観ており、前作「君の名は。」を観た上で、「個人的には『天気の子』の方が好きです」とコメント。「作品通してじわ~っとグッときちゃったの。(涙が)ポロッときちゃった」と感動したことを明かした。そして、「やっぱり雨の描写が素晴らしい。雨が全部違う。手前の雨と奥の雨が違って、雨に奥行きがある」と緻密な映像についても絶賛した。
さらに、番組では新海監督の映画の制作段階についても注目。新海監督作品では、絵コンテを映像にした“Vコンテ”(ビデオコンテ)を事前に制作。絵に加え、音、BGM、吹き替えまでも新海監督自身が行い、映像化するのだという。
流れとしては、まず、新海監督がセリフを録音。そのセリフに合わせてカットを決めていく。
映像でコンテを作る理由について新海監督は、「完成映像のイメージにとても近くなるじゃないですか。これを(作品1本分の)2時間分作るんですけど、それを観ていただくと、面白いのか、面白くないのかがわかりますよね。紙に描いた絵コンテだと、これはすごい画になるにちがいないとか、テンポが気持ちいいんだろうな、すごい音楽がかかるのかな、とか思いながら見てしまう。それを人は期待するから、より頭の中だと良いものになるんです。でも、ビデオコンテをプロデューサーや映画会社などスタッフに見せると、『ここちょっとわからなかった』とか、『ここ退屈だったよ』など、本当に映画を観たような意見が戻ってくるんですね。結構残酷な意見が戻ってきて。でもそうすると、『そうか、直さなければ観客に届かないな』ということで直していく。だから、ビデオコンテを作っておくと、最初の観客に完成映画を見せる前に、残酷な観客の意見、感想を聞けるんですよ。そのために限りなく完成に近いものを最初にやるんです」と述べた。
理由を聞いた加藤は「新海さんは客観的な意見を早い段階で聞きたいんですか?」と質問。
新海監督は「漫画やTVアニメであれば、毎週やってお客さんの反応を聞いてちょっとずつ『あ、こっちの方がお客さん好きなんだ』と軌道修正できるんです。でも映画は2年かけて作ってポンと出して『つまらなかった』と一言で返されたりするんですよね。もちろんお客さんはそれを言う権利はあるんですけど、2年間の自分たちのすべてを一言で否定されるって結構痛いんですよ。もう大変な痛みで。そういう気持ちをたくさん経験してきて、少しでも痛くない映画作りというか、確実に面白いと言ってもらえるようなものにしたい、と。そのためにいろんなやり方を試してきて、たどり着いたのがビデオコンテです」と、客観的な意見を求める理由も明かされた。
ビデオコンテを取り入れたのは「言の葉の庭」あたりからで、新海監督は夫婦でセリフを担当したビデオコンテを作り、プロデューサーら関係者にプレゼンをしたという。「ビデオコンテがあれば、それが設計図ですから。基本的にはその通りの映像を緻密なものにしていく作業なのでスムーズではあると思います」と、円滑な制作にも繋がると述べた。
※画像は「天気の子」公式サイトより。
https://tenkinoko.com/
テレビが好きだポン。NHKの受信料はちゃんと払ってるポン。
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。