昇進の挨拶ってつまらない…?部下の心を掴むにはどうしたらいいのか?

昇進の挨拶ってつまらない…?部下の心を掴むにはどうしたらいいのか?

こんにちは。俣野成敏です。こちらのコーナーは、主にビジネスパーソンの方を対象に、よくある悩みや疑問にQ&A形式でお答えしていく、というものです。

本コーナーを執筆する目的は、これをお読みのあなたに、今までとは違った視点をご提供することです。少しでもお役に立ちましたら幸いです。

たった1回の挨拶で、すべてが決まることはない

それでは、本日の質問はこちらです。

【本日の質問】

昇進が決まって、チームメンバーの前でひと言挨拶をすることになりました。みんなから信頼されるような人になれたらと思いますが、初日でメンバーにどんな挨拶をすればいいのでしょうか?

質問した方がどのようなシチュエーションの下にいるのか、この文面だけではよくわかりませんが、だいたい以下の3つのパターンが考えられます。

1、今までいた部署で、そのまま昇進する

2、昇進と同時に、別の部署に異動する

3、昇進し、新たなチームを結成する

1番のメリットは、自分もスタッフも、お互いを熟知していること。その反面、自分が他人より抜きん出た形になるため、やっかみを受ける場合があります。

2番のメリットは、お互い余計な先入観がないこと。ただし、部署の中で自分が新米になってしまうことは否めません。「どんな人が来るのか?」警戒した視線を浴びることが多いパターンです。

3番のメリットは、みんなで1からチームをつくれること。しかし「異動+ニューメンバー+事業の新規立ち上げ」となった場合は、負担がかなり重くなるでしょう。その反面、サラリーマンとして最も貴重な経験ができるパターンでもあります。

どのパターンであっても、メリットを活かし、デメリットがなるべく表に出ないように、というのが基本的戦略になります。そのための第一歩が就任挨拶、というわけですが、とはいえ、たった1回の挨拶ですべてが決まることはありませんので、ご安心いただければと思います。

就任挨拶は、聞き手にとっては面白くない

普段、私もセミナーに登壇したり、部下を教育したり、しばしば人前で話をする機会があります。

ここでは、私がまだ人前で話すことに慣れていなかったころに、実践していた方法をご紹介したいと思います。「何かのテーマについて取材や講演を求められたら、最初にテーマの関連本を売れ筋から順に複数冊を購入しました。なぜ、私がこのようにしていたのかというと、書籍になるレベルの世のスタンダードを知りたかったこと。そして、それらに書かれている内容と差別化を図るためです。

すでにほかの人が語り尽くしたことを話したところで、聞き手は面白くないだろう、と考えたからです。もちろん、共通の概念は出てきます。その時に有効なのが自らの体験です。実体験を語ることで、オリジナリティが生まれます。

あなたが過去にお聞きになった、誰かの就任挨拶を思い出していただければわかると思いますが、実際に直接関わることになる人を除けば、他人の挨拶などどうでもいいのが本音ではないでしょうか。たいてい、話も似たり寄ったりで、面白くないと相場が決まっています。ですから、ここでもし、聴衆から「おやっ?」と思われるような話ができれば、違った印象が残せるはずです。

大きな目標が、人を動かす

だったら「どんな話をすればいいのか?」という事例をお話ししましょう。かつて、ザ・ボディショップやスターバックスのCEOを務め、『「ついていきたい」と思われるリーダーになれる51の考え方』(岩田松雄著、2012年、サンマーク出版)等の著書のある岩田松雄氏は、ゲーム会社アトラスの社長を経験した後に、当時、売上の低迷していたザ・ボディショップのCEOに就任します。

岩田氏が就任後に感じた業績低迷の要因とは、「ザ・ボディショップの創業者であるアニータ・ロディック氏の理念や社員たちの思いと、会社の方向性が合っていない」、ということでした。そこで氏は、経営企画室に「日本におけるボディショップの可能性はどれくらいか?」と聞いたところ、140億円くらいである、という返事がきました。

ここから、岩田氏は「年商150億円を目指そう」とスタッフに向けてメッセージを打ち出します。それまで何年も、100億円を狙っては未達だったにもかかわらず、です。けれども、事前に会社のことを調べていた氏には、「この会社にはそれだけのポテンシャルがある」という確信がありました。会社の力を正しく把握し、それを具体的な目標にして掲げ、スタッフがそれを信じるストーリーを展開させたことで、売上が後押しされていったのです。

部下が上司を見る目は、厳しくて当たり前

実のところ、昇進時の挨拶をする時に、一番心配なのは「部下に舐められるのではないか」ということではないでしょうか。その昇進が、最初に挙げた「昇進した際に考えられる3つのシチュエーション」のどれに当てはまるにせよ、基本的に部下の上司を見る目は、常に厳しいものです。

本来、信頼関係というのは、ある程度の時間をかけて築いていくものです。ですから、最初の挨拶では、「貢献」にフォーカスを当てましょう。具体的には、「自分がこれまでしてきた経験」と「この部署で何を実現したいのか?」の2つ。これをみんなに向けて発信すると、「コミットメント(宣誓)」に近い意味合いになることを、知識として知っておいていただければと思います。

俣野成敏(またの・なるとし)

ビジネス書著者/投資家/ビジネスオーナー

30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。『プロフェッショナルサラリーマン』(→)及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(→)のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』(→)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。2012年に独立。フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネースクールを共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』に3年連続で選出されている。

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