VOL.46 中野量太監督
宮沢りえ主演映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)で、「第40回日本アカデミー賞」など多数のタイトルを獲得した、中野量太監督。商業映画デビュー作にして大きな話題をさらい、中野監督はもっとも注目される新進監督の一人となりました。そんな中野監督の最新作は認知症がテーマ。作品にかけた思いから、影響を受けた作品まで、ご本人にお話を伺いました!
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——5月31日に公開される『長いお別れ』ですが、どんな作品に仕上がりましたか?
中野監督(以下、敬称略):「認知症」が一つのテーマになっている作品で、新しい認知症映画として制作しました。認知症のお父さん(山﨑努)と触れ合うことで、その周りにいる人たちが新たな気づきや発見をしていくというもの。認知症映画というと、どうしても重いイメージをしがちですが、そうではなく、思わずクスッと笑えたり、どこか温かみを覚えたりといった要素を盛り込みました。厳しい状況下で人が”どれだけ愛おしく滑稽か”が伝わる作品になっています。
——蒼井優さん、竹内結子さん、松原智恵子さん、山﨑努さんといった豪華キャストが勢ぞろいしています。
中野:本当に素晴らしいキャストが集まってくれて、彼らが想像以上に魅力を発してくれたことは、僕自身にとって学びになりました。どのキャストも存在感があってとても良い作品に仕上がったと思いますが、特にお母さん役の松原智恵子さんの演技にはぜひ注目してほしいです。
——作品にはどんな思いやメッセージを込めましたか?
中野:お父さん(おじいちゃん)、娘、孫という3世代のお話で、お父さんが認知症になってから亡くなるまでの7年間を描いているのですが、その間、周りにいる人たちにも同じ7年間があってそれぞれの人生があります。家族を持っている人の多くが経験するだろう「認知症」をキーワードにしながらも、ただ「認知症って怖くないよ」とか、「家族が一番」みたいなことが言いたいわけではなくて。認知症の人が近くいることでいろいろな発見や学びがあるんだ、ということを伝えたいですね。これから起こるであろう現状に対して、恐れずに立ち向かってほしい。そんなエールが伝われば嬉しいです。
——豪華キャスト陣はもちろん、ストーリーにも注目ですね。中野監督といえば、これまでオリジナル作品が多かったと思いますが、今作は小説家・中島京子さんの同名のタイトルが原作となっています。
中野:原作の小説は、プロデューサーから紹介していただいたんですが、実はこれまでもいろいろな人から「これを作品にしてみないか?」というお声掛けをいただいていました。でも、僕が描いて面白くできる自信がないなという感じだったんです。今回、初めて本を読んでいる時から「自分ならこう撮りたい」という気持ちになり、「これは上手く映像にできるぞ」という自信が芽生えて、撮らせていただくことになりました。
——ところで、中野監督は普段はどんなジャンルの映画を観ているのですか? また、影響を受けた作品があれば教えてください。
中野:人間ドラマですね。ホラーやアクション映画はほとんど観ません。それと、映画を作るうえで影響された映画というのは実はないんです。強いて言えば、僕が映画を見始めた頃はスピルバーグ作品が人気でしたが、こういった見て面白いと思う映画、エンターテイメント要素がある映画はどこかで意識しているかもしれません。僕の中で映画はエンターテイメントがあるものだと思っていて、単純に観た人に楽しんでもらいたいし、いろいろなことを感じてもらいたい。映画館から出たら楽しかったな、という映画を撮ることが僕の役割だと思っています。
——その中で好きな映画というと、どの作品を選びますか?
中野:『スタンド・バイ・ミー』ですかね。昔に見て、ずっと忘れられない映画の一つです。大人になって観てみると、不思議と涙が出てくるんです。いつかこういう映画を撮りたいなと思います。
——最後に、中野監督の今後の展望をお聞かせください!
中野:実は今、撮影中のプロジェクトが進行しているのですが、やはり「原点に戻りたい」とは思っています。「完全オリジナル映画」という原点です。先ほどもお話した通り、僕は人間ドラマしか興味はありませんので、やるとしたら人間ドラマを撮りたいなとは考えています。
(取材・文/小山田滝音)
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『長いお別れ』
5月31日(金)より全国でロードショー
監督:中野量太
脚本:中野量太、大野敏哉
出演:蒼井優、竹内結子、松原智恵子、山﨑努、北村有起哉、中村倫也、杉田雷麟、蒲田優惟人 ほか
配給:アスミック・エース
2019/日本映画/127分
公式サイト:http://nagaiowakare.asmik-ace.co.jp
©2019『長いお別れ』製作委員会 ©中島京子/文藝春秋
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