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政府の借金は‘善’なのか?-MMTが問いかける難題(万国時事周覧)

政府の借金は‘善’なのか?

今回はブログ『万国時事周覧』からご寄稿いただきました。

政府の借金は‘善’なのか?-MMTが問いかける難題(万国時事周覧)

「日本の消費増税「デフレ招く」=財政赤字膨張にひるむな―異端の米教授」2019年4月20日『gooニュース』
https://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-190420X936.html(掲載終了)

 最近、アメリカではMMT(現代金融理論)なる理論をめぐり活発な議論が起きているそうです。‘常識を覆す理論’、あるいは、‘異端の理論’とも銘打たれ、その斬新さが強調されておりますが、些か疑問がないわけではありません。

 そもそも、同理論が前例のない‘新しい理論’なのか、と申しますと、そうでもないように思えます。同理論の主唱者であるニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授は、政府の財政均衡よりも完全雇用や経済成長を優先すべきと主張しておりますが、この立場こそ、バブル崩壊後の日本国政府、並びに、不況に直面した各国政府が採用してきた政策でした。積極的な財政出動を是認したケインズ主義とも共通しており、財政再建vs景気対策の、従来の一般的な対立構図の延長線上に置くことできないわけもないのです。

 仮に、同理論において‘新しさ’があるとしますと、‘政府の借金は‘善’である‘と公言して憚らない点にあるのかもしれません。特に日本国の一般的な認識では、借金は可能な限り避けたい’悪‘、あるいは、’必要悪‘ですので、MMTは’善悪の逆転‘という強いインパクトがあるのでしょう。ケルトン教授は、自らの見解に基づいて、消費税率10%上げを前にして日本国の消費税増税にも反対しております(もっとも、日本国政府は、仮に増税によって税収が増加したとしても財政再建に注ぎ込むつもりはないようなのですが…)。

 もっとも、MMTには不透明な部分があり、政府の借金は‘善’とする結論に達しているのか疑問なところです。同理論の基本的な立場は、「通貨発行権を持つ政府は発行額の制約を受けない」というものですが、この立場に立脚するならば、政府紙幣をも肯定することとなります。政府紙幣とは、政府が法を以って紙幣の通用力を保障することで発行し得る通貨を意味します。政府紙幣の制度では、中央銀行が発行する銀行券とは違い、借金をせずに無制限に紙幣を発行することができるのです。

一方、今日の中央銀行制度にあっては、通貨供給量を増やそうとすれば、中央銀行は公開市場操作を実施し、市中の金融機関から債権等を買い取る買いオペを実施する必要があります。買いオペには、通常、一定の期間が経過した後に再売却する条件が付されていますので、いわば、中央銀行は、‘借金’をしているに等しくなるのです。言い換えますと、今日の通貨制度は、いわば、‘借金’をしなければ通貨を増やせない‘債権本位システム’なのです(なお、金本位制の場合には、通貨発行には金地銀を保有する必要があり、通貨発行額も金保有量の制約を受ける…)。

MMTが政府の借金は‘善’という時、こうした中央銀行の仕組みを念頭に置いています。つまり、中央銀行は買いオペを実施するに際して、通常、BISの評価にあってもリスクが低い国債を主たる対象としているため、政府の国債発行残高が高い程、通貨供給量も増やせるという側面があるのです(この他にも、中央銀行が政府から直接に国債を引き受けるケースもある…)。ここに、政府の赤字⇒通貨発行量の増加⇒景気上昇という構図が描かれるのであり、政府の借金は‘善’となるのです。

 以上に政府紙幣と銀行券の両者について通貨供給の観点から述べてきましたが、この両者を並べてみますと、MMTには論理が一貫していないところがあります。何故ならば、政府には無制限に通貨を発行する権限があるならば、政府紙幣を選択した方が‘借金’をしなくても済むからです。つまり、政府の通貨発行権を認めるならば、MMTの論者は、中央銀行制度から政府紙幣制度への転換を主張すべきとも言えましょう。

目下、MMTをめぐる論争の主戦場は財政問題ですが、同理論は、貨幣、延いては資本主義とも共産主義とも異なる経済システムの在り方をも問いかけています。そしてそれは、人類の将来をも左右するほどの重要議題なのではないかと思うのです。

 
執筆: この記事はブログ『万国時事周覧』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2019年4月29日時点のものです。

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