「賃貸で家賃交渉ができるって本当ですか?」 住まいのホンネQ&A(9)

「賃貸で家賃交渉ってアリ?」 住まいのホンネQ&A(10)

一生賃貸、というライフスタイルも増えつつある昨今。しかし「ただ家賃を払い続けるより、購入するほうがいいのでは」――。長年、賃貸暮らしが続くと、こんな考えが頭をよぎることがあるのではないでしょうか。今回は少しでもお得に賃貸住宅に住むための裏技「家賃交渉」について、さくら事務所会長の長嶋修氏に聞きました。

あなたの「家賃」、本当に適正?

「家賃を払い続けるのはもったいない」といった言説に出くわしたとき、確かに家賃は毎月家計から消えてなるものであり「ならばマイホームを買った方がいいのではないか」と考えるのは分からなくもありません。そんな時目にした「月々、家賃並みの支払いでマイホームが買えます」といったキャッチコピーに惹かれるといったパターンが多いのではないでしょうか。2年に一度の更新料を支払う時期が迫ればなおさらです。

「賃貸」か「持ち家」か。この永遠のテーマをいざ真剣に検討し始めると「歳をとったら賃貸を借りられなくなる」とか「低金利の今が買い時」「2020年以降不動産価格は下がる」「人口減少で空き家が増える」といった様々な情報が巷に飛び交い、何を基準に意思決定をすればわからなくなっている方もいるはずです。

しかしちょっと待ってほしいのです。そもそも、今あなたが借りている賃貸住宅の家賃は「適正」なのでしょうか。実は、相場より高い家賃を払っていることが多いものです。

家賃というものは一般に、新築時に最も高く、経年によって減価していきます。減価率は立地や物件種別によってさまざまですが、一般に年1パーセント程度とみておけばよいでしょう。例えば新築時に家賃20万円だったところに住んでいれば、毎年2,000円ずつ減価していき、10年後の家賃は18万円、20年後は16万ということになります。もちろん期間中に景気が悪化したり、周辺物件に空室が増加したりすれば、もっと下がるケースも出てきます。

筆者は職業柄「レントロール」を見ることがあります。レントロールとは「家賃表」のことで、そのアパートに入居している人たちが、いつ、いくらの家賃で入居したかがわかるものですが、これを見ると、同じアパートでも各戸の賃料は異なり、それは見事に「入居時期」に比例するのです。例えば新築時からずっと入居している人はずっと10万円を払い続けているものの、12年目に入居した人は8万5000円であるという具合です。つまり長く入居しているほど、相場より高い家賃を払っているということになります。

賃貸でも、更新時期の家賃交渉は「アリ」

そこで筆者がおすすめしたいのが「家賃がもったいないからマイホームを」と考える前に「家賃交渉」をしてみることです。これは、2年に一度の更新時期に行うのがよいでしょう。更新が近づいたらその数か月前に大家さんから、あるいは賃貸管理会社を通じて「更新の通知」が来ます。この時に、周辺の賃料相場を調べてみましょう。自分が借りているアパートと同程度の駅や間取り、築年数の物件が、いくらくらいで貸し出されているか、SUUMOなどで検索してみるとよいでしょう。サンプルが少なければ周辺駅も探してみます。平米数にばらつきがある場合は「平米あたりの賃料」で比較してみるとよいと思います。

そこで、自分が今払っている賃料が、現行相場に比べて高いと感じたら、率直に交渉するとよいです。その際には、事前に調べた家賃相場などの根拠も提出するといいですし、あくまで誠意をもって交渉を進めることが大切です。

家賃交渉は大家にもメリットが?

大家さんの立場に立って考えてみましょう。もし今あなたに退去された場合、建物を修繕して入居者を募集し入居者が決まり、実際に家賃が発生するまでは少なくとも数か月はかかります。しかも次の入居者からもらえる賃料は現行相場に合わせる必要があり、いまあなたが払っているより安くなるケースがほとんどでしょう。ならば、多少家賃を下げてでも、あなたにそのまま住んでもらった方が、入居付けの手間や不安もなく、むしろそちらの方がいいと考えるはずです。

むろん、こうした根拠がなかったり、法外な、あるいは強引な賃料交渉ではいくら値下げを希望しても、通りにくいと思います。大家さんだって賃料相場は理解しているし、何より人の子です。入居させていただいている日頃の感謝を書面などで示しつつ、調べたデータを基にして賃料交渉するのがよいでしょう。

こうした賃料交渉に関して、大家さんの対応は千差万別。前述した理屈で交渉通りの家賃減額を勝ち取れることもあれば、要望より少し高いところでどうかと再交渉となる場合もあるし、中には全く交渉に応じないというケースもありえます。そうした回答を得たうえで、再度こちらが判断すればよいということです。

筆者の知人で、築浅物件を好景気の時に37万円で借りていたものを、景気低迷時に2年ごとの家賃交渉を行い、15年経過後の現在は22万円程度にまで賃料値下げに成功しているケースもあります。まずは現在住んでいるエリアの家賃相場を調べることから始めてみましょう。s-長嶋修_正方形.jpg長嶋 修 さくら事務所創業者・会長

業界初の個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクション(住宅診断)を行う「さくら事務所」を創業、現会長。不動産購入ノウハウの他、業界・政策提言や社会問題全般にも言及。著書・マスコミ掲載やテレビ出演、セミナー・講演等実績多数。【株式会社さくら事務所
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