第70回 モンスター「ヴェノム」が愛されキャラなワケ
もうすぐ『シャザム!』というヒーロー映画が公開されます(※4月19日(金)全国公開)。
とても楽しいヒーロー冒険映画なのですが、このキャラ自体はいわゆるマントの超人で”スーパーマン”系。しかし最大の特徴は、子ども=少年がシャザム!という呪文を唱えると瞬時にこのヒーローに変身。しかし意識は子どものままなのです。
1940年にデビュー。実はこのシャザムは当初は”キャプテン・マーベル”と呼ばれていました。シャザムと”キャプテン・マーベル”(同名の女性ヒーロー映画が公開されますが)については他にも多くの方が書かれているのでここでは割愛しますが、僕の中でシャザムに近いなと思うのはキャプテン・アメリカなのです。
キャプテン・アメリカはやせっぽちの若者が超人血清の力で一瞬にして素晴らしい肉体を手にいれます。シャザムもキャプテン・アメリカも”たくましい男にすぐになりたい”という子どもの夢にストレートに応えたヒーローではないかと思うのです。
こうした中、華奢な体でもヒーローになれるんだよと希望を与えてくれたのがスパイダーマンです。スパイダーマンが人気の理由の一つにマッチョでないことをあげる人は少なくありません。
かつて手塚治虫氏が「アメコミ・ヒーローの中で日本で人気が出るのはスパイダーマンだと思う。あの体形は日本人でも共感できるから」みたいなことを指摘していました。
華奢なスパイダーマンに、すごく大きくマッチョなライバルをからませたら面白いだろう、そういう着想で生まれたのがヴェノムです。原作コミックではスパイダーマンに付着し、その能力をコピーした、黒い寄生宇宙生物がマッチョな男にとりつき生まれたというモンスターです。昨年、このヴェノムを主人公にした映画が公開され大ヒット。このたびブルーレイ等がリリースされました。(この映画版にはスパイダーマンは登場せず、ヴェノムというキャラだけにスポットをあてた作品になっています)
先日、このヴェノムの、コミックでの生みの親の一人であるトッド・マクファーレン氏とインタビューする機会がありました。トッド・マクファーレン氏はアクション・フィギュアブームを巻き起こした「スポーン」のクリエーターとしても有名です。トッド・マクファーレン氏は「ヴェノムの魅力はやっぱりスパイダーマンよりデカいことなんだ。僕はスパイダーマンが糸で相手の動きを封じ込めて刑務所に送った、ぐらいの悪党にしたくなかったんだよ。スパイダーマンの小技が通じない。だからこそ毎回スパイダーマンがどうやったらこいつを倒せるんだろう、と思われるぐらいのキャラにしたかったんだ」
「だから今回の映画で、あのトム・ハーディがヴェノムを演じてくれてイエイ!と思ったよ。トムはすこくかっこいいし、なによりもあのトムを宇宙生物がつつみこんでヴェノムになるわけだから、ヴェノムがデカいキャラになるわけさ。イメージどおりだよ」
確かに映画『ヴェノム』は、原作コミックで感じたヴェノムのマッチョさ迫力が十分に出ています。このヴェノムも宇宙生物と合体すれば登場!みたいなキャラですから、シャザムやキャプテン・アメリカ同様、”すぐに大きく、強くなりたい”という少年の願望に応えたキャラかもしれません。
トッド・マクファーレン氏は続けます。
「ヴェノムは基本ヴィラン(悪役)だ。正しいことをやるにしてもお行儀よくなんてやらない。デカくて強くてひたすら暴れまわって、こんなクールなキャラを好きにならない子どもなんていないよね」
そうヴェノムは確かにモンスターですが、これだけ愛され人気キャラになったのは、まさに少年の夢がいっぱいつまっているからかもしれません。
ぜひご覧ください。
なお「ヴェノム」の日本吹替版の監修を、わたくし”杉山すぴ豊”が担当しています。すごくアメコミ好きの方が喜ぶセリフを仕込んでいますので、日本吹替版もお楽しみください。
(文/杉山すぴ豊)
■関連記事
第69回 『アリータ:バトル・エンジェル』の魅力
第68回 2019年は『アクアマン』から!
第67回 『アベンジャーズ/エンドゲーム』予告編解禁! 気になるのは”かかし”
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。