2018年 企業倒産件数減少の中、通販・訪販小売業の倒産件数 過去2番目に多い66件、前年比24.5%増(株式会社フィデス/ネットショップ CS情報局)

2018年 企業倒産件数減少の中、通販・訪販小売業の倒産件数 過去2番目に多い66件、前年比24.5%増

今回は『株式会社フィデス/ネットショップ CS情報局』より久保 京子さんの記事からご寄稿いただきました。

2018年 企業倒産件数減少の中、通販・訪販小売業の倒産件数 過去2番目に多い66件、前年比24.5%増(株式会社フィデス/ネットショップ CS情報局)

経済産業省調査では、2017年BtoC-EC市場規模は16 兆 5,054億円(対前年比109.1%)と、拡大が続く通販市場ですが、東京商工リサーチによると、2018年の通信販売・訪問販売小売業の倒産件数が、過去2番目に多い結果となっていると発表しています。

倒産が増えた要因は、相次ぐ中小企業のネット通販への参入で過当競争が進んでいること。(これはかねてより指摘されていることですが)

2018年の全国の企業倒産状況と比較しながら、傾向を確認します。

2018年の通信販売・訪問販売小売業の倒産は66件、前年比24.5%増

2018年1-12月累計の通信販売・訪問販売小売業の倒産は66件(前年比24.5%増、前年53件)に達し、調査を開始した2009年以降では2015年(77件)に次ぐ、過去2番目に多い件数となっている。
対して、全国の企業倒産状況は、2018年の全国企業倒産件数は8, 235件(前年比2.02%減、前年8,405件)で、10年連続で前年を下回り、低水準で推移している。
産業別でみると、小売業が1,132件(前年比1.3%増)で10年ぶりに増加に転じた。

通信販売・訪問販売小売業の負債総額、全体の7割が負債5千万円未満

通信販売・訪問販売小売業の負債総額は1,037億円(前年30億6,300万円)で、激増した。これは食品通信販売の(株)ケフィア事業振興会(東京、負債1,001億9,400万円)の大型倒産によるもの。
全体の7割(構成比78.7%)を占めるのが、負債5千万円未満で52件(前年比36.8%増、前年38件)となっている。

一方、全国の負債総額は1兆4,854億6,900万円で、前年比53.1%減となっており、過去30年では1989年(負債1兆2,322億9,600万円)に次いで2番目に少ない金額だった。

全国倒産件数2018年 通販倒産件数2018年

業種別倒産 衣食住にわたる各種商品小売りが43.7%増

通信販売・訪問販売小売業の業種別倒産件数は、衣食住にわたる各種商品を扱う「各種商品小売」が最多の23件(前年比43.7%増、前年16件)。
インテリア用品や美術工芸品など「その他」が16件(同15.7%減、同19件)。
アパレル関連などの「衣服・身の回り品小売」が14件(同75.0%増、同8件)。
「飲食料品小売」が11件(同37.5%増、同8件)。
家電などの「機械器具小売」が前年同数の2件17件(同30.7%増、同13件)。

倒産形態別 破産が9割

形態別では、企業が解体・消滅する破産が64件(前年比23.0%増、前年52件)で、全体の9割(構成比96.9%)を占めた。一方、再建型の民事再生法は1件。
原因別では、販売不振(業績不振)が46件(前年比31.4%増、構成比69.6%)。次いで、事業上の失敗が8件(前年比33.3%増)、他社倒産の余波が6件(同20.0%増)、運転資金の欠乏が3件の順だった。

従業員5人未満が3割増

従業員数別では、5人未満が61件(前年比32.6%増、前年46件)と増え、小規模事業者の倒産が全体の9割(構成比92.4%)を占めた。
2013年以降に設立された事業者は20件(構成比30.3%)で、設立から日が浅い5年以内の新規事業者が約3割を占めた。
全国企業倒産においても、従業員数5人未満が74.3%を占め、過去30年間で最高となっている。

全国企業倒産件数が低水準で推移する中、増加した「通信販売・訪問販売小売業」の倒産。
要因は、参入障壁が低く、相次ぐ中小企業のネット通販への参入による競争激化によるものと分析されています。
過当競争に拍車がかかる中、大手事業者も競争激化の波にさらされています。
昨年10月に、カタログ通販大手の千趣会が280人の希望退職者を募集したことが注目を集めました。

「多品種」を扱う「総合通販」は、在庫過多による利益率低下のリスクがあります。ネットユーザーの特性として、欲しいものをピンポイントで検索して比較検討する購入スタイルも、「総合通販」にマッチしないのかもしれません。

同業他社に対する差別化された「魅力」がなければ、消費者や市場から淘汰されてしまう、厳しいネット通販市場が浮き彫りになりました。

 
◆2018年「通信販売・訪問販売小売業」の倒産は66件、過去2番目の高水準に増加
(東京商工リサーチ:平成31年1月15日公表)
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190115_02.html

◆2018年(平成30年)の全国企業倒産8,235件
(東京商工リサーチ:平成31年1月15日公表)
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2018_2nd.html

◆苦境の千趣会、立て直し策は? 
 2期連続の大幅赤字で正念場、経営陣刷新や本社ビル売却、大規模な早期退職募集も
(通販新聞:2018年11月1日 ) https://www.tsuhanshimbun.com/products/article_detail.php?product_id=4393&_ssd=1

参考記事

・2015年1-11月の通販・訪販小売業の倒産、前年同期比39.1%増
(商工リサーチ 平成27年12月公表)
http://blog.fides-cd.co.jp/article/432752951.html

・2017年BtoC-EC市場規模16 兆 5,054億円。伸び率9.1%で引き続き拡大傾向
(経済産業省調査)
http://blog.fides-cd.co.jp/article/460228338.html

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執筆: この記事は「株式会社フィデス/ネットショップ CS情報局』より久保 京子さんの記事からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2019年2月26日時点のものです。

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