薄れる中古住宅への抵抗感! でも“認知度が低い”中古住宅キーワードとは?

薄れる中古住宅への抵抗感!でも“認知度が低い”中古住宅キーワードとは?

全宅連・全宅保証協会では、毎年9月23日を「不動産の日」と定め、消費者向けに不動産に関する意識調査を実施している。2018年の調査結果を見ると、中古住宅への抵抗感が薄れている傾向が見られたという。その一方、中古住宅流通のカギを握るキーワードについての認知度は低かった。具体的に見ていこう。【今週の住活トピック】

「2018年『不動産の日』アンケート結果」公表/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)

中古住宅に対する抵抗感が薄れている!

まず「既存住宅(中古住宅)に抵抗はあるか」を聞いた結果では、「まったく抵抗がない」と「どんな状態であろうと抵抗がある」という真逆の選択肢の回答が、同率の13.5%だった。また、最も多い回答は「きれいであれば抵抗はない」の39.8%で、次いで「売買金額と状態のバランスを見て判断する」の33.2%となった。Q.既存住宅(中古住宅)に抵抗はあるか(出典:全宅連・全宅保証協会「2018年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

Q.既存住宅(中古住宅)に抵抗はあるか(出典:全宅連・全宅保証協会「2018年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

「中古住宅である」というだけで抵抗を感じる人が13.5%いる反面、「中古でもきれいであれば」「売買金額が見合えば」といった条件をクリアすれば抵抗を感じない人が7割超いることになる。加えて、「中古住宅にまったく抵抗がない」人も13.5%いるなど、筆者が思っていたよりも中古住宅への抵抗感が薄れていることが分かった。

近年、特にマンション市場では、新築の価格が上昇して一般消費者には手が届きにくい価格帯になっている。この市場を受けて、中古マンションの取引が活発になり、2016年からは売買される件数が新築と中古で同程度の規模になっている。

また、1990年後半~2000年前半までの新築マンションブームで大量供給されたものが、近年の中古マンション市場に出回ることで、「新築に近くて価格が手ごろなもの」から「築年がかなり古くて低価格のもの」まで、幅広い中古マンションから選択できるということも、抵抗感を薄める要因になっているのだろう。

「安心R住宅」「瑕疵保険(かしほけん)」「インスペクション」の認知度は低い

中古住宅への抵抗感が薄れているにもかかわらず、中古住宅の品質を見極めるカギとなる重要な仕組みについては、あまり知られていないことも分かった。

この調査では、「安心R住宅」「瑕疵保険」「インスペクション」を知っているか聞いているが、それぞれの認知度(=「知っている」)は「安心R住宅」6.4%、「瑕疵保険」16.3%、「インスペクション」7.7%とかなり低かった。「安心R住宅」「瑕疵保険」「インスペクション」の認知度(出典:全宅連・全宅保証協会「2018年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

「安心R住宅」「瑕疵保険」「インスペクション」の認知度(出典:全宅連・全宅保証協会「2018年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

この中でも特に、「インスペクション」の認知度が低いことに驚いた。

インスペクションとは、建築士などの専門家が住宅の劣化や不具合の状況について調査を行い、報告をするもので、「建物検査」や「建物状況調査」などとも呼ばれている。

2009年にNPO法人日本ホームインスペクターズ協会が誕生し、ホームインスペクションの普及やインスペクターの育成に努めてきた。政府も宅地建物取引業法(宅建業法)を改正して、2018年4月からは中古住宅の売買の際にその住宅のインスペクション(「建物状況調査」という名称を使っている)を行うかなどの確認をするように仕組みを整えている。

具体的には、住宅を仲介する不動産会社に中古住宅の売買を依頼するときに「媒介契約」を結ぶ際には、契約書にインスペクション事業者のあっせんを望むかどうか確認して記載したり、中古住宅を購入する際に「重要事項説明」として、インスペクションの実施の有無などを書面に記載し、実施している場合は報告結果の概要を説明するといったことだ。

「瑕疵保険」は、この中では最も認知度が高い。

中古住宅の瑕疵保険は、正しくは「既存住宅売買瑕疵保険」といい、個人が保険に加入するには、検査機関に対して「住宅の構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分など」の検査と保証を依頼するもので、これら重要な構造部分の欠陥が見つかった場合には補修費用などについて保険金が支払われる仕組みだ。

また、「安心R住宅」は、国が定めた品質基準を満たす中古住宅について、物件を広告するときに「安心R住宅」のマークを表示できる制度だ。安心R住宅の基準を満たすためには、インスペクションを実施した結果、構造上の不具合や雨漏りが認められず、「既存住宅売買瑕疵保険」に加入できる用意がなされているなどの条件がある。

ただし、不動産会社を束ねる事業者団体がそれぞれで「安心R住宅」のマークを使用する際のルールなどを決めて徹底させる必要があり、この団体の登録に時間がかかっているという状況もあって、実際にマークを目にする機会はまだそれほど多くはない。

とはいえ、いずれも中古住宅の品質を専門家が客観的に調査をして、その結果を明らかにしたり、保証をしたりするものだ。一般消費者にはわかりにくい品質のチェックのためには、積極的に活用してほしい仕組みなだけに、もっと認知度を高めてほしいところだ。

もっともこの調査の対象は、住宅を探している人に限定しておらず、7割近くがすでに持ち家に住んでいるということから考えると、現実的に住まいを探している人ではもっと認知度が高いのだろうと期待している。

中古住宅への抵抗感が薄れていることは喜ばしいことだ。新築ばかりが本当に住む人にとって最適な住宅とは限らない。ただし、中古住宅は玉石混交の市場なので、品質の高いものを選んだり、購入後にリフォームをしたりすることが欠かせない。どういった仕組みがあるのか、しっかりと把握してほしいものだ。●関連サイト

「2018年『不動産の日』アンケート結果」詳細
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