イスラエル総選挙:2019年4月9日決定 2019.1.1(オリーブ山便り)
今回は石堂ゆみさんのブログ『オリーブ山便り』からご寄稿いただきました。
イスラエル総選挙:2019年4月9日決定 2019.1.1(オリーブ山便り)
ネタニヤフ政権は、12月24日、前回一致で、国会を解散、総選挙を、任期満了(11月)前の4月9日に行うことを決めた。ネタニヤフ首相が、国防のために、今は政府を解散するべきでないと国民に訴えてから、わずか4週間後である。
ネタニヤフ首相は、4週間前の訴えから一転して総選挙を歓迎したことについて、ヒズボラのトンネル摘発が始まった今なら、総選挙をしてもよくなったと答えている。
解散の理由は、超正統派の従軍義務に関する法案が1月15日を期限に決議が行われるのだが、国会120議席中、与党61議席というぎりぎり多数派の状態では、与党が提出している法案が通らないとみられることが原因である。
この法案は、超正統派が金を払うことで義務を逃れる道があるらしく、これに未来がある党(やエル・ラピード党首)、イスラエル我が家党(リーバーマン党首)が反対している。
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5432602,00.html
国会解散、総選挙が決まったことで、政界ではさっそく様々な政党が、しのぎをけずりはじめている。
ベネット教育相+シャキード法務相が新党結成
29日、ベネット教育相とシャキード法務相は、ユダヤの家党を出て、新党「新右派」と結成すると発表した。ベネット氏の妻は世俗派で、シャキード氏の夫も世俗派であることから、新党の特徴は、様々な右派が共存するという点だという。
先月末、ベネット氏とシャキード氏は、リーバーマン元国防相が辞任した際、ベネット氏を国防相にするよう、ネタニヤフ首相に要求。通らない場合は、ユダヤの家党は連立を離脱すると主張した。
ところが、ネタニヤフ首相は、今は政府を解散すべきどきではないと訴え、国防相は自らが兼任し、防衛上、今は政府も解散すべき時ではないとベネット氏に、政権残留を要請した。ベネット氏とシャキード氏はこれを理解し、全面的に受け入れ、政権に残留したのであった。
ベネット氏のこの以外なUターンは、ネタニヤフ首相への屈服とみられ、国民の間に、ベネット氏とユダヤの家党への幻滅としてメディアは封じた。
ところがそのわずか4週間後に、ネタニヤフ首相自身が、政府を解散し、総選挙を実施すると発表したわけである。ベネット氏とシャキード氏は、ネタニヤフ首相への怒りを表明したが、この後に至っては、すでに信頼を失った形なので、このままで総選挙に向かえば、議席数は確実に減少すると予測された。
これは、このまま何もしないで、ユダヤの家党の中にとどまっている以上、時期政府で、重要なポジションを期待できないということである。
このため、苦渋の策として、ベネット氏たちは、新党を結成し、新たな右派層を見方につけることで、超正統派と結託するリクード(ネタニヤフ首相政党)に取って代われる新しい右派政党をめざすという賭けに出たわけである。
しかし、現時点での予想では、結局、ネタニヤフ首相のリクードが28議席(現在30)でトップ。2位は、未来がある党(ラピード党首)が議席を伸ばして15議席。ベネット氏らの新党「新右派」は、14議席との予想である。
中道左派で、労働党(アビ・ガバイ氏)と、ハテウナ党(ツイッピー・リブニ氏)が合併した党、シオニスト連盟党(ガバイ党首)は、現在の15議席から9議席に激減するとの予想である。時代は今や右派、ということである。
https://www.timesofisrael.com/bennet-and-shakeds-new-right-poised-to-win-at-least-10-seats-polls-find/
ベニー・ガンツ元参謀総長が新党”イスラエルの回復力”結成
総選挙が決定した今、注目が集まっているのが、元イスラエル軍参謀総長ベニー・ガンツ氏(59)である。長く政界入りを予測されてきたガンツ氏がどの党に入るかで、議席数が大きく変わってくるからである。
4月の総選挙の結果は今の所、ネタニヤフ首相が最強という予想になっている。しかし、中道の未来がある党(ヤエル・ラピード党首)か、中道左派のシオニスト連合党(アビ・ガバイ党首)かが、ガンツ氏の取り込みに成功すれば、ネタニヤフ首相を打倒する可能性も出てくるという。
現在3閣僚を兼任するネタニヤフ首相は、強力なライバルになる可能性を秘めるガンツ氏を取り込むため、外務相のポジションを申し出たと伝えられている。しかし、ガンツ氏はこれを拒否した。
未来がある党のラピード氏は、選挙リスト2番目のポジションを、シオニスト連合のガバイ氏は、自ら党首をおりて、かわりに党を導くよう、トップの座を申し出たが、ガンツ氏は、これも拒否した。
最終的に、ガンツ氏は、12月27日、自らが党首となる新党「イスラエルの回復力」の立ち上げを発表した。
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5434496,00.html
これにより、ガンツ氏の「イスラエルの回復力」党が、現在の予想では2位の未来がある党(ラピード党首)を抜いて2位になる可能性が出てきている。
https://www.timesofisrael.com/ex-idf-chief-gantz-unveils-new-political-party-ahead-of-april-elections/
*ベニー・ガンツ氏
1959年生まれで、1979年からイスラエル軍のパラシュート部隊に所属。レバノン、西岸地区の司令官えお歴任後、2002年からは北部総司令官、2005年からは陸軍総司令官を務める。
2007-2009年はアメリカで、イスラエル軍代表を務める。その後、イスラエル軍の副総司令官となり、2011-2015年、第20代イスラエル軍総参謀長となった。この間、ハマスとの囚人交換でシャリート軍曹を奪回する事件(2011)、ガザとの戦争、防衛の盾作戦(2014)などを経験している。
教育においては、歴史学で学位、政治科学でマスター、アメリカの国家防衛大学で、国家資産運営に関する学びも終えている。妻と4人の子供あり。
https://mfa.gov.il/MFA/AboutIsrael/State/Personalities/Pages/Benny_Ganz.aspx
執筆: この記事は石堂ゆみさんのブログ『オリーブ山便り』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2019年1月17日時点のものです。
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