ガジェ通日誌:『ETロボコン2018』の“ガレッジニア部門”で審査員をしてきました

特定の用途に対応するソフトウェアを搭載して動作する“組み込み機器”の展示会『Embedded Technology/組込み総合技術展』。こちらと並行して毎年開催されているロボットコンテスト『ETソフトウェアデザインロボットコンテスト』(以下『ETロボコン』)をご存知でしょうか。若手エンジニアの育成を目的として、分析・設計モデリング開発や製品サービスの企画開発にチャレンジする機会を提供するこの『ETロボコン2018』に、審査員として参加してきました。

ガジェット通信編集長として筆者が審査員を務めたのは、『ETロボコン』に昨年新設された“ガレッジニア部門”。「ガレージ」と「エンジニア」の造語から想像できるように、「ガレージで作り始めるような、オモシロイものをつくろう」というコンセプトでものを作り、発表してもらう部門です。


通常の“デベロッパー部門”は、『レゴ マインドストーム』の走行体を、障害物などを設置した規定のコースで走行させ、走行タイムやソフトウェア設計のモデルを評価して競い合う部門であるのに対して、“ガレッジニア部門”はより幅広いテーマで参加できるのが特徴。センサーとアクチュエーターを1個以上使い、ソフトウェアで制御するものを予算50万円以内で製作するのが条件です。
1次審査は『YouTube』で競うビデオ審査
1次審査は、製作した作品のパフォーマンスを『YouTube』に公開した動画で評価するビデオ審査。一般視聴者が『YouTube』上で押した「いいね」数と、審査員が動画を見て評価した点数を基準に、11月14日のチャンピオンシップ大会への出場チームを選考します。『YouTube』の「いいね」数がポイントになるところがイマドキっぽいですね。
筆者が高得点をつけたのは下記の4チームでした。
ETロボコン2018ガレッジニア部門_116_NEXT漢育児(YouTube)
https://youtu.be/YP4pgXLG4Yo
「子供がおもちゃを片付けない」という親の悩みを解決するために、いろいろな方法で子供の注意を引き付けるロボット。ロボットが片付けるのではなく、あくまで子供自身が片付けるための“きっかけ”を与えているのがポイントです。
ETロボコン2018ガレッジニア部門_173 _Now loading…(YouTube)
https://youtu.be/0fLmCv6vYoQ
「宇宙出張になった父親が地球にいる子供と遊ぶためのロボット」という壮大なコンセプトの作品。グローブ型コントローラーで操作するパペット“ぱぺたろう”が、遠く離れた子供とのコミュニケーションを実現します。
ETロボコン2018ガレッジニア部門_218 _AT車限定~GTK~(YouTube)
https://youtu.be/lTVr7zWgJcY
日本酒のラベルを読み込ませると、そのお酒に最適な温度でお燗をしてくれるというデバイス。これを使うために家に早く帰りたくなるので、働き方改革が実現するそうです。
ETロボコン2018ガレッジニア部門_280_PolyDev9(YouTube)
https://youtu.be/ajeoIBe6jcE
洗濯物を干している際、雨が降ってきたらカーテンをかけて洗濯物を守り、晴れるとまたカーテンを開けて乾かしてくれるロボット。すぐにでも欲しい、と思う人もいるのではないでしょうか。
全出場チームとビデオ審査の結果は下記のページにまとめられています。
ETロボコン2018 ガレッジニア部門 詳細ページ【ETロボコン2018公式サイト】
http://www.etrobo.jp/2018/gaiyou/garagineer_performance.php
チャンピオンシップ大会で4チームが競い合う
ビデオ審査の結果、11月14日にパシフィコ横浜で開催されたチャンピオンシップ大会へ出場を果たしたのは下記の4チーム。持ち時間8分のプレゼンテーションで作品のデモを披露しました。

AMazing Sour(日立オートモティブシステムズ)
靴を脱いで上がる居酒屋でスムーズに入退店ができ、指紋認証による本人確認で靴を間違えることがない靴管理システム“Shoe 納くん”を披露。

NEXT漢育児(コニカミノルタ)
上記動画で紹介されたロボット“ちょびっと”の動作を実演。

追跡線隊HiICSイエロー(日立産業制御ソリューションズ)
自動車の上に取り付けると洗車してくれる家庭用自動洗車機『バンジーウォッシャー』を提案。

稚内北星学園大学INNN(稚内北星学園大学 情報メディア学部)
ヒマラヤ伝統の石臼をIoT化する“Amako Jato(アマコ ジャトー)”をプレゼン。稚内と横浜で互いに設置された石臼を音声操作で動かすデモを実演しました。
“IoT石臼”が最優秀賞を獲得

4チームによるプレゼンテーションを審査員が評価した結果、最優秀賞は稚内北星学園大学INNNが獲得しました。
ETロボコン2018ガレッジニア部門_293_稚内北星学園大学INNN(YouTube)
https://youtu.be/AHR03QGPtgY
こちらの作品、ビデオ審査の段階では正直、ピンと来なかったのですが、石臼という原始的な道具がインターネットにつながり、遠隔地から声の操作で動き出す様子を会場で目にすると、不思議な感動が沸き起こりました。ヒマラヤに住む家族と同じ体験をしたいというコンセプトのよさもあり、納得の受賞だったのではないでしょうか。
受賞した稚内北星学園大学INNNのメンバーは、来年1月にラスベガスで開催される『CES 2019』に招待されるとのこと。最新のIoT機器や技術に触れて知見を得た同チームが、今後どう作品を発展させていくのか、今後が楽しみです。
デベロッパー部門とガレッジニア部門を含め、チャンピオンシップ大会の模様は『YouTube』で配信され、現在もアーカイブが公開中。興味を持った方は一度ご連になってみてください。ガレッジニア部門は4時間28分ごろから。
ETロボコン2018チャンピオンシップ大会生配信(YouTube)
https://youtu.be/0vd_vBoP5ww
※スクリーンショットは『ETロボコン2018』ウェブサイトより引用
ETロボコン2018概要|ガレッジニア部門
http://www.etrobo.jp/2018/gaiyou/garagineer.php

宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます
ウェブサイト: http://mogera.jp/
TwitterID: shnskm
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。