根っからのライブバンドSaucy Dog、ツアー初日で見せた鋭さと穏やかのギャップ―OTOTOYミニ・レポート

Saucy Dogという名前がライブハウス・シーンで一気に広がり出したのが、「MASH A&R」のオーディションで、いまでこそYou Tubeでその存在を知った人も数多くライブハウスに訪れるようになったが、彼らは、もともと根っからのライブバンドだ。

デビューする前から全国で月間120本のライブを重ね、じわじわと地力で人気の裾野を広がるなかで勝ち取ったオーディションのグランプリ獲得が、その勢いに拍車をかけた。

そんなライブバンド＝Saucy Dogという図式は、あのオーディションから2年が経とうとするいまも全く変わっていない。今年は、春に全国11本をまわるワンマンツアー「one-one tour 2018」を終えたあと、4月にリリースしたミニアルバム『サラダデイズ』を携えて開催している現在の「ワンダフルツアー2018」は、10月の対バン編25本を経て、先日11月8日の恵比寿リキッドルームから全10ヵ所をまわるワンマン編が始まった。あいだにフェスや文化祭への出演もあるから、まさに年中ライブ尽くし。そのなかでツアーごとにハコのキャパシティを上げていくという急成長ぶりで進んでいるのが、いまのSaucy Dogだ。

ツアーの初日、恵比寿リキッドルームで見たライブについては、まだツアーは始まったばかりなので詳しい内容は書かないが、ミニアルバム『サラダデイズ』で歌われる、やるせない痛みや抱えて歌う明日への希望や、不安や戸惑いを越えて前へ進もうとする意思、そういうものを1曲1曲丁寧に届けようとする姿が印象的だった。

スリーピースというバンドとして最小限の編成。そこで互いが熱く衝動をぶつけ合うというよりも、しっかりと3人が息を合わせて、繊細にメロディとコーラス、それぞれの楽器の演奏を重ねていく。MCでは「緊張する（笑）」と漏らしながら、「私たち3人のために1,000人近くの人が来てくれるって、すごいことじゃないですか？」と、ドラムのせとあやかが素朴な言葉で喜びを語ったり、あくまでも等身大だ。情熱的で焦燥感漂う楽曲たちとは、どこか対照的な位置にある、メンバーの穏やかな雰囲気はこのバンドの持ち味だろう。

今回のツアーファイナルで、Saucy DogはマイナビBLITZ赤坂へと帰ってくる。バンド史最大キャパとなるワンマン会場で、どんな成長を見せてくれるのか楽しみだ。（秦理絵）

Saucy Dog『ワンダフルツアー2018』ワンマン編
2018年11月８日(木)恵比寿リキッドルーム