「ここに頼めば間違いない!」信頼できる会社ほど、顧客の“当たり前”を大切にしているーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第26回目です。
『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「10社かけてコールが5回以内で出る会社は2社ぐらいしかない」
(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第3巻 キャリア26より)
龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。
井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。
社会は“常識のない人”の集まりでできている
担当している転職希望者・高島との面談が終わり、自分の席に戻った井野。浮かぬ顔でため息をついている井野を見て、上司・海老沢が声をかけます。井野は海老沢に「高島は、若くてイケメン、有名私大出身と、傍目からは何の申し分もない人材。けれど実際は常識が足りないし、頼りなくて見ていられない」と打ち明けます。
ところが、それを聞いた海老沢の返事は「そんな人は世の中にいっぱいいる」というものでした。「年齢に関係なく、人間とは皆そういうもの。ちゃんとした人ばかりでなくても、それで社会は成り立っている」のだと話します。信じられない、という様子の井野に対して、海老沢が事例に挙げたのが「会社が電話に出るスピード」でした。
「試しに、会社に電話をしてみると、10社かけて5コール以内に出る会社は2社ぐらいしかないのが実情。たとえ大企業や有名なレストランなどであっても、電話をおろそかにしているところは案外多い。一方、そうした基本ができている会社の業績は着実に上向く。信頼され、それが成長に結びつくからだ」と言うのでした。
業務手順をマニュアル化し、社内に浸透させるまでの3ステップとは
「コールが鳴ってもすぐに電話に出ない会社が多い」のは、マニュアルに問題があると考えることもできます。確かに「マニュアルを作成する」というのは面倒な業務。しっかりと作り込み、常に最新の物を管理するように徹底している会社は、意外にもそう多くはないようです。
一方で、こういった基本を徹底している会社からすれば、他社の信頼に結びつかないサービスの在り方は、自社に顧客を流すことになるのでプラスに働きます。
では、契機を逃さないために、業務をマニュアル化し、社内に浸透させるにはどうしたらよいのでしょうか。手順としては、以下の3つのステップを通じて行われます。
《業務手順をマニュアル化し、社内に浸透させるまでの3ステップ》
第1ステップ:会社の業務をすべて洗い出し、必要事項を文章に落とし込む
第2ステップ:作成したマニュアルを社員に実行させる
第3ステップ:行動→改善・修正しながらルーティンワークとして定着させる
マニュアルと聞くと、その通りに実施することで融通が効きにくいものといったイメージがありますが、本来は「そんな細かいことまで決めるの?」というくらいに書き込んだものがよいマニュアルだと言えるでしょう。なぜなら、世間では、「この人にとっては当たり前でも、あの人にとっては当たり前ではない」ということが普通にあります。したがって、そうした個人差をなくすためのチューニングをするのがマニュアルの本当の役目だと言えるのです。
もちろん、マニュアルの価値は、マイナスをプラスマイナスゼロに最速で持っていくまでのところ。それ以上でも以下でもありません。
大切なのは、当たり前のことを当たり前にやること
マニュアルを作る目的の1つは「品質の維持」。誰が仕事をしても極力、同じ結果が出るようにする必要があります。なぜなら、当たり前のことができない限り、プラス要素もプラスとして機能しないからです。商売においては、顧客が一番求めていることが何かを知り、まずはそれを満たすことが大前提となります。
事例をお話しましょう。私の知り合いのあるライターは、文字起こしを外注しています。文字起こしとは、取材などで録音した音声を文字に起こす仕事のことです。文字起こしは「会話の内容を正確にタイピングする」という仕事であり、そこには工夫する余地はありません。要は、誰に頼んでも基本は差別化できない、ということになります。
となると、文字起こしの差別化要因とは一般的に、「スピード」や「価格」といった要素になるでしょう。
知り合いも以前は安いところに依頼していたそうですが、信頼性に不安があり、使うのをやめてしまったそうです。今の外注先は安くもなく、スピードも特に速くはないけれど、他社からも仕事の依頼が絶えず、絶大な信頼をおいているそうです。ここからも、当たり前の水準を保つことがいかに大事か、ということがおわかりいただけるのではないでしょうか。
©三田紀房/コルク
気になる兆候が現れた際には、基本を見直してみる
万が一、あなたの会社で「最近、売り上げが落ちている」とか「得意客が減った」というような気になる兆候が見られたら、一度マニュアルや基本業務の見直しをしてみるのはいかがでしょうか。ひょっとすると、顧客が離反する要因となるようなマニュアルの抜け漏れを発見できるかもしれません。
商売にとって、既存顧客の流出ほど痛い傷はないのですから。
俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。
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