現代の若者の生態を知るには… 意外な写真が役に立つ!?
これからの日本を背負って立つ若者たち。彼らはどんな環境で育ち、どんなふうに生活し、何を考えているのでしょう。
食卓写真を通じて、現代社会に生きる若者の実像に迫った本書は、早稲田大学人間科学学術院の外山紀子教授と大正大学心理社会学部の長谷川智子教授、専修大学経営学部の佐藤浩一郎准教授の3人の研究者によって編集されました。
「日本の食をとりまく環境は、近年、大きく変化した。(中略)食の変貌は、食の外部化や簡便化に加え、核家族化の進行、女性の高学歴化と社会進出、さらには長時間勤務の常態化と言った社会の大きな変化の中に位置づけるべき現象である。最近では、格差という視点も外せなくなった。(中略)食は食べ手とその食べ手が属する社会、時代を映す鏡となるのである」(本書「まえがき」より)
若者たちのSNSにアップされる”インスタ映え”する食べ物と現実の落差、彼らが幼い頃から社会問題化していた孤食の実態など、本書が描き出すのはさまざまな若者たちの生活と意識です。ここでは青年期に育まれる自意識やパーソナリティにさえ、食行動が深く関わっていることが指摘されています。
また、”飽食”を当然のこととして育ってきた若者たちが知らないのは、季節感やハレ(非日常)とケ(日常)のメリハリが生み出す喜びばかりではないようです。飢餓感を経験したことのない彼らは、”我慢”や”耐える”ことについての学習の機会が少ないことや、食物に命を感じる”生命感”についての実感が少ないこと、雑食性の動物として食物を選択する能力さえも必要なくなって、”本能”が失われがちなことなど、人間の本質にかかわる部分での変化さえあるといいます。
「若い人たちの思考や行動は理解できない」と困惑しているなら、若者を理解する参考書になるかも知れません。大学の先生たちが協力して作り上げた本だけあって、論理的で説得力に溢れた読み応えのある一冊です。
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