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東京都ヘイト条例も名目はオリンピック! 成立した都条例を読んでみた(しょほしょぼ)

東京都ヘイト条例も名目はオリンピック! 成立した都条例を読んでみた

今回は済印 さんのブログ『しょほしょぼ』からご寄稿いただきました。

東京都ヘイト条例も名目はオリンピック! 成立した都条例を読んでみた(しょほしょぼ)

 東京オリンピック・パラリンピックの経費が3兆円を超えるという報道*1 が2~3日前にありました。名目を「オリンピック・パラリンピックのため」とすると予算が通りやすいということなのではないかと疑ってしまいます。

*1:「東京五輪・パラ経費3兆円超か 検査院指摘、国支出8011億円に膨らむ」2018年10月04日 『産経ニュース』
https://www.sankei.com/tokyo2020/news/181004/tko1810040002-n1.html

 東京都のヘイト規制条例が都議会で可決されたようなのですが、これも名目は「オリンピック・パラリンピック」でした。
 まず概要を「東京都のヘイト規制条例が成立 性的少数者の差別禁止も*2」から。

*2:「東京都のヘイト規制条例が成立 性的少数者の差別禁止も」2018年10月05日 『朝日新聞デジタル』
https://www.asahi.com/articles/ASLB543LJLB5UTIL01L.html

以下引用(太字は済印によるもの。以下同じ)

 ヘイトスピーチの規制や性的少数者を理由にした差別の禁止を定めた東京都の条例が5日、都議会本会議で賛成多数で可決、成立した。いずれも都道府県の条例で初めての内容で、来年4月に全面施行される。
 成立したのは、「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」。2020年東京五輪・パラリンピックで多くの人たちが集まることをふまえ、人権問題への取り組みをアピールする。・・・

引用終了

 条例を確認したら、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」となっていて、少なくとも「オリンピック」名目であることは明らかです。
 なお、パラリンピックとオリンピック憲章との関係は、パラリンピック憲章のようなものがあるのかどうかを含めて良く分かりませんでした。パラリンピックも大会を運営する組織がある以上、憲章のような根本的な定めはあると思われますが、見付けられませんでした。

 「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」はここ*3 で見ることが出来ます。ただ、縦書きのため横長のモニターなどでは読みにくいと思います。山口貴士弁護士の「【テキスト化しました。】東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案*4 」に横書きにしたものがありましたので、こちらの方が読みやすいでしょう。

*3:「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例(PDF)」『東京都総務局』
http://www.soumu.metro.tokyo.jp/jinken/jyourei.pdf

*4:「【テキスト化しました。】東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」2018年09月21日 『弁護士山口貴士大いに語る』
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2018/09/post-6e60.html

 恐らく議会での修正はなく、「条例案」通りに成立したと思われますので、これを元にいくつか検討しようと思います。
 まず、「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念」とはこれなのだろうと思います。日本オリンピック委員会の「オリンピック憲章*5 」にあった「オリンピック憲章 Olympic Charter 2016年版・英和対訳(2016年8月2日から有効)*6 」から引用します。

*5:「最新のオリンピック憲章」『日本オリンピック委員会』
https://www.joc.or.jp/olympism/charter/

*6:「オリンピック憲章」『日本オリンピック委員会』
https://www.joc.or.jp/olympism/charter/pdf/olympiccharter2016.pdf

以下引用

オリンピズムの根本原則
6. このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会のルーツ、財産、 出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。

引用終了

 「性的指向」が入っているのが新しいところなのでしょうが、わざわざオリンピック憲章を持ち出す必要があったのか疑問が湧きます。自民党が反対したそうなので、できるだけ反対を少なくするために「オリンピック」を名目として持ち出したのではないかと邪推してしまいます。

 内容について、一番我々に関係する条文はこれでしょう。以下、単に「新条例」と表記し、漢数字はアラビア数字に変換するとともに、「項」、「号」を追加します。

新条例
第3章 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進
(拡散防止措置及び公表)
第12条 知事は、次に掲げる表現活動が不当な差別的言動に該当すると認めるときは、事案の内容に即して当該表現活動に係る表現の内容の拡散を防止するために必要な措置を講ずるとともに、当該表現活動の概要等を公表するものとする。ただし、公表することにより第8条の趣旨を阻害すると認められるときその他特別の理由があると認められるときは、公表しないことができる。
1号 都の区域内で行われた表現活動
2号 都の区域外で行われた表現活動(都の区域内で行われたことが明らかでないものを含む。)で次のいずれかに該当するもの
ア 都民等に関する表現活動
イ アに掲げる表現活動以外のものであって、都の区域内で行われた表現活動に係る表現の内容を都の区域内に拡散するもの
2項 前項の規定による措置及び公表は、都民等の申出又は職権により行うものとする。
(3項以下略)

 「表現活動が不当な差別的言動」になる場合に「概要等」が公表されることになるのですが、この「概要等」が何なのかは条例にありません
 また、「不当な差別的言動」は「第3章」の表題にあるように、本邦外出身者に関するものに限定しています。

新条例
(趣旨)
第8条 都は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律第4条第2項に基づき、都の実情に応じた施策を講ずることにより、不当な差別的言動(法第2条に規定するものをいう。以下同じ。)の解消を図るものとする。

 「不当な差別的言動」とは「法2条に規定するもの」となっていますので、ヘイトスピーチ解消法などと称される法律の条文を入れます。

「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」『電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ』
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=428AC1000000068

(定義)
第2条 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。

 この定義の説明は、

「ヘイトスピーチ規制法成立で警戒すべきこと」2016年05月25日『しょぼしょぼ』
http://blog.livedoor.jp/sumiin/archives/4632890.html

で書いていますので、参照して下さい。
 結論として、日本に適法に居住する外国出身者を「地域社会から排除することを煽動する」するような「不当」な「差別的言動」が対象になります。従って、

「「日本人に対するヘイトスピーチ」も対象 大阪市ヘイトスピーチ条例」2017年11月13日『しょぼしょぼ』
http://blog.livedoor.jp/sumiin/archives/4857694.html

で書いた大阪市の条例と異なり、「日本にルーツを持つ日本人に対する差別的言動」は入らないことになります。

 差別的言動をした場合の概要の「公表」以上に問題なのが施設の利用制限です。

新条例
(公の施設の利用制限)
第11条 知事は、公の施設において不当な差別的言動が行われることを防止するため、公の施設の利用制限について基準を定めるものとする

 「防止」ですから事前規制だと思われます。これは、

「遂に表現内容に基づく事前規制を始める川崎市1 規制の概要」2017年11月11日『しょぼしょぼ』
http://blog.livedoor.jp/sumiin/archives/4856915.html

のシリーズに書きましたので、それを参考にして下さい。

 新条例は「表現行為の規制の要件」という大事なことを「知事に委任」しています。つまり、住民の代表で構成する都議会を通さずに知事が勝手に決められることになっているのです。自民党がこの条例案に反対したことは上に書きましたが、通常なら人権派というか市民活動系の議員(国会だと立憲民主党、社民党、共産党など)が反対する内容だと思います。ここで「オリンピックのため」という大義名分が生きたのかも知れません

 例によって長くなったので、LGBT関連は少し触れるだけにします。

新条例
第2章 多様な性の理解の推進
(性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取扱いの禁止)
第4条 都、都民及び事業者は、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない

 「不当な差別的取扱い」をしてはならない者の中に都民も入っていますが、この「不当な差別的取扱い」が何かについては条例に規定がないようです。公表や行政処分、刑罰なども規定されていません。

 「性自認」と「性的指向」については3条に規定されていますのでそれだけ入れます。

性自認:自己の性別についての認識のこと
性的指向:自己の恋愛又は性愛の対象となる性別についての指向のこと

となっていて、

「告白されたのを他人に漏らすことが禁止される時代が来るのかも」2018年08月20日『しょぼしょぼ』
http://blog.livedoor.jp/sumiin/archives/4962395.html

で取り上げた「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」よりも簡略に定義していることだけ指摘するに留めます。

 以上の他にも指摘したいことはあるのですが、「急造の条例」という印象が強く残る条例であることは解って戴けたのではないかと思うので、ここまでにします。

「ちょっと待て!! 自治基本条例 〜まだまだ危険、よく考えよう〜」2018年03月10日『amazon.co.jp』
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「47都道府県これマジ!?条例集 (幻冬舎新書)」2009年11月26日『amazon.co.jp』
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「憲法の視点から見る条例立案の教科書」2017年03月10日『amazon.co.jp』
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「「ごみ屋敷条例」に学ぶ 条例づくり教室」2017年08月04日『amazon.co.jp』
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執筆: この記事は済印 さんのブログ『しょほしょぼ』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2018年10月11日時点のものです。

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