『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』への複雑な思いと映画製作に滾らせる情熱 『スカイライン-奪還-』コリン・ストラウス(プロデューサー)インタビュー

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VFXのスペシャリストが映画を製作・監督する理由

▲『スカイライン-奪還-』(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

――日本の漫画やアニメがお好きだそうですね。『スカイライン』シリーズにもその影響を感じたのですが……これまで、どういった作品をご覧になってきたのでしょう?

コミックよりは、ジェームズ・キャメロンなどの映画から受けた影響のほうが大きいですね。日本のアニメだと、若い頃に『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や『AKIRA』を観ていました。実は、息子のミドルネームはアキラなんですよ。ぼくは、黒澤明やアニメーションの『AKIRA』のファンなので。子どもの頃は『X-フォース』や『X-MEN』などのアメリカンコミックをずっと読んでいました。日本のマンガにはまったのは、20代の後半だったと思います。最初はロボットデザインの研究のために読み始めました。特に『GHOST IN THE SHELL』で描かれている未来の世界観はすばらしいと思います。

――オドネル監督には『獣兵衛忍風帖』をすすめられたそうですね。同作のような、ダークな雰囲気のアニメがお好きなのでしょうか?

そうですね。『獣兵衛忍風帖』をぼくに勧めてくれた人は、「これは日本アニメ界の『スター・ウォーズ』だ」「日本のアニメについて学びたいなら、これを観るべきだ」と教えてくれました。「『AKIRA』や『GHOST IN THE SHELL』は観ている」と伝えたら、「いや、この作品の無修正版を観ないと!」とも言われました。修正されたものも観たんですが、無修正版は本当に美しくてダークでした。昔からダークなキャラクターや悲惨なエンディングが好きなんです。『獣兵衛忍風帖』の暴力の中には美しさがある。単にグロテスクに見せるのではなく、あの世界の暴力をありのままに描いて、キャラクターを広げているんです。

――ただの暴力ではない、と。

ストーリーテリングには何の効果もないけど、ただグロテスクなものを見せたくて、暴力的に描写している作品もあります。そういうものは、見せびらかしているだけなんですよね。『獣兵衛忍風帖』は、決してそうじゃない。トーンがとにかく好きで、チャンスさえあれば観ている作品です。

▲『スカイライン-奪還-』(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

――『スカイライン-征服-』のエンディングも、コミックのようですよね。

一作目は、何となくですが、コミック本っぽい映画を目指していました。観客には気づかれないようにです。『スカイライン-征服-』で試したかったのは、ジャンルの融合です。SF映画ですが、最後はホラーに近い作品とも言えます。『エルム街の悪夢』のフレディは必ず生き残るでしょう? ホラーでは悪人が生き延びて、善人が死ぬ。SF映画はそうじゃなくて、クリーチャーが登場して、問題が起き、人間が原因を突き止める。『インディペンデンス・デイ』では、ウィル・スミスが最後にエイリアンを殺して、人類が勝利を収めます。でも、ぼくたちは様々なジャンルをあえて混ぜ合わせたかった。その一つの要素が、コミックなんです。とにかくユニークな作品にしたくて、エンディングでも複数のジャンルの融合であることを示したかった。「これはただのSF映画ではない」とね。

――なるほど。

最後は「主人公が脳みそを奪われる」という悲しい結末を迎えますが、物語はそこでは終わらない。一作目は、いわゆる前編のようなものなんです。だから、静止画のシーンで流すために、ブライアン・タイラーにヘビメタ風のロックソングを書いてもらいました。観客を驚かせたかったし、落ち込んだ気分のまま劇場をあとにして欲しくなかったんです。人類はコテンパンにやられたけど、(脳みそを奪われた)主人公が次回作で何かしてくれる、という期待を持たせたかった。一見悲しいエンディングだけど、気分を上げて終わらせたかったんです。確かに妙な演出で、好きな人もいれば嫌いな人もいる。でも、ぼく自身は、変わっていて、予想不可能なところが気に入っています。

――子どものころから、映画製作に携わろうと思っていらっしゃったのですか?

そうですね。幼い頃から映画に関わりたいという夢は抱いてました。IBMに勤めていた父親の影響もあって、ぼくは子どもの頃からオタクでした。ただ、当時はオタクであることはカッコいいことではなくて、どちらかと言うとダサいことでした。ぼくは、幼い頃からコンピューター技術に魅せられて、小学校6年生の頃には自分でプログラミングしてビデオゲームを作っていたし、高校に入学する頃には3Dアートを作成していました。だから、デジタルアートやコンピューターは詳しかったんです。でも、『ジュラシック・パーク』と『ターミネーター2』を観て、人生が変わりました。「VFXは、今後すべての映画にも使われるだろう」と感じたんです。あんなカッコいいものは見たことがなかった。「これぞ未来だ!」と思って、母親を劇場にも連れて行きました。それを機に、(ロサンゼルス・ハリウッドのある)カリフォルニアに移ろうと決めたんです。それ以前に影響を受けたのは、スティーヴン・スピルバーグ監督の映画。『インディ・ジョーンズ』に『スター・ウォーズ』……特に『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』ですね。兄と最初に観たR指定の映画は『エイリアン』で、ホテルの部屋でペイパービューで観たのを覚えています。観た瞬間、ぶっ飛びましたよ。『マスク』などのILMが手がけた初期の作品も大好きで、そういう映画にどうにかして参加したかったんです。

▲『スカイライン-奪還-』(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

――なぜ、本作や『テイク・シェルター』、『ザ・ベイ』のようなインディペンデントな映画の製作に積極的に参加されるのでしょうか?

主な理由は“自由”です。映画を制作するのは本当に大変なことです。どんな映画でもそうですけど(笑)。こんなジョークがあります。「出来の悪い映画を作るのはほぼ不可能。いい映画を作るのはそれ以上に大変」。特に、大手スタジオの制作プロセスは、とにかく苦労が多い。『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』は色々なことが複雑で、ぼくたちの希望どおりの脚本にはならなかったし、自分たちが思い描いていたような映画を作れなかった。製作費も4000万ドル(約40億円)あったのに、それでも毎日セットでお金が足りなくて悩んでいました。その頃には、すでに兄と経営している制作会社(ハイドラックス)でCMやPVを作っていたので、予算管理については分かっていたんです。だから、なおさら『AVP2』の現場では苛立ちが募っていきました。何が原因なのか理解できなかった。そこで、もっと効率的な方法で映画を作れるのか試すつもりで作ったのが、『スカイライン -征服-』です。

――なるほど。

いわば実験のようなもので、配給のことを考えずに、とにかく作り始めた作品なんです。誰にも観てもらえず、オフィスの棚に眠ることになったとしても、ぼくたちは気にしなかったと思います。それくらい、何が何でも作りたかった。自己満足の作品になっても構わなかったんです。だから、劇場公開されて、海外で成功したことに驚いています。自分たちのやったことが正しいと証明されてよかった。VFXの会社を経営している監督なんて、世の中にほとんどいないですよね。ポスプロが分かっていて、特殊効果を理解している監督は少ない。

――多くはないですね。

ぼくたちは、ありとあらゆる機材を自ら購入しました。カメラ、照明、レンズ、けん引トラック、クレーン、すべてです。すべて自分たちのものだから、誰にも指図を受けずに済みました。ぼくたちは、自分たちの作品を“所有”することができたんです。他の人とは違うことをしたかったし、映画を作る全プロセスを理解したかった。メジャースタジオの映画と比べて、自由があるのは本当に素晴らしいことです。毎日が闘いで、仕事量は多いですけどね。メジャースタジオなら小切手を切って終わりですけど、インディペンデント映画の場合は、予算の会議をしたり、交渉したり、苦労は絶えません。でも、ぼくたちにとっては、まるで巨大なパズルのようなものなので、楽しみながらやっています。

『スカイライン-奪還-』は10月13日(土)より、新宿バルト9他全国ロードショー。

構成・文=藤本洋輔

『スカイライン-奪還-』予告篇(YouTube)
https://youtu.be/nyWf5fJKiq8

『スカイライン-奪還-』
(2017年/シネスコ/ドルビーデジタル 5.1ch/106分)
原題:Beyond Skyline
監督:リアム・オドネル 『スカイライン-征服-』(脚本)
出演:フランク・グリロ ボヤナ・ノヴァコヴィッチ ジョニー・ウエストン イコ・ウワイス ヤヤン・ルヒアン
VFXスタジオ:ハイドラックス 『アバター』『ジオストーム』
配給:REGENTS/ハピネット
レーティング:R15
公式サイト:https://skyline-dakkan.jp/
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