「やらされ感ゼロ」気持ちよく仕事を引き受けてもらうための「巻き込み方」とは?|クラウドワークス田中さん
「自分の弱みは、誰かの強み」をテーマに、自分らしく自然体で働くストーリーをお届けするこの連載。今回は、株式会社クラウドワークスで働く田中健士郎さんにお話しをお伺いしました。
前編では、人に気持ちよく仕事を依頼するのが得意だとわかったそう。後編ではその具体的な方法について詳しくおうかがいします。
田中 健士郎さん(たなか けんしろう)さん
上智大学卒業後、大手製造業会社で電子デバイスの海外営業を担当。2015年日本最大級のクラウド・ソーシングサービス「クラウドワークス」の経営企画/地方創生マネージャーとして、地域パートナーや自治体と連携してクラウドソーシングの普及促進・ワーカー育成に携わる。株式会社オムスビ(神奈川県逗子市)の「カタリスト」として、プロダクト・マネジメント構築や組織づくりにも取り組む。
相手のメリット「非金銭的な報酬」はあるか?
―仕事を快く引き受けてもらうために、どんな意識をもって依頼しているのでしょうか。
僕自身、仕事を依頼することで何が一番嬉しいかというと、仕事をお願いした人がイキイキと仕事をしている姿が見られることなのです。だから僕は、依頼する仕事を「タスク」にしたくないんです。
製造業に勤務していた時、半導体製品の営業で、僕には具体的な技術はわからない世界だったけれど、消費電力を抑えられるすごいデバイスを作る設計者が社内にいて。自分にできないことをやれちゃう、その人の仕事が「最高にかっこいいなあ」とワクワクして見ていました。その僕の気持ちが技術者の方に伝っていたように思うんです。
仕事を依頼するときに常に考えていることは、仕事を受けた相手にとって、やりがいやワクワク感といった「非金銭的な報酬」になっているか?ということです。
お金の報酬なら非常にわかりやすいですが、社内で仕事を依頼する場合、給料は変わらないのにその仕事がプラスになるだけなので、もしかすると、相手にとっては面倒くさいことかもしれません。それでもスキルアップにつながるとか、満足感が得られるとか、「非金銭的な報酬」でやりがいが得られる可能性。それを見つけて、共有しています。
―「非金銭的な報酬」の共有ですね。ほかにも気を付けていることはありますか?
伝え方でしょうか。大きなプロジェクトが進んでいく中で、ある一部分を依頼したいとき「この部分を期限までにやってください」と依頼することが一見スムーズに見えます。
しかし依頼された側は何のためにやっているのかよく分からないまま引き受けるという形になり、単なるやらされ仕事になりがちです。
これを、全体を共有する形に変えてみると結果が全く違ってきます。
例えば
「この仕事は、〇〇市が地方創生プロジェクトの目玉にしている非常に大きなプロジェクト。今度プレスリリースも出す施策です。納期が短いんですが、この事業の完成のためにここをやってください」
と、具体的にその人が持っている仕事のピースと全体を一緒に説明する。
すると「会社全体の価値が上がるプロジェクトに関われるんだ。それなら、納期はいつもより厳しいけど頑張ろう」と思ってくれたりするんですよね。
こうした「全体を一緒に作っているんですよ」という形での「巻き込み方」が非常に重要だと思っています。可能であれば、プロジェクトが始まる前に全体像を話せる場を持ちます。細かいタスクが出てきたときに、「あの時のここなんですけどね…」と全体の位置づけから具体的な仕事を示す。このように位置づけを示すのも重要な「非金銭的な報酬」だと思うんですよね。仕事の価値や目標を示して周囲を巻き込んでいくんです。
―「登山」に例えると分かりやすいですね
そうですね。チームが一つに向かっていくときには必ず「山の全体」を見て、一緒に登っていくことが大切で、それが結構楽しいのです。山の頂上に到達するのが目標なら、どのルートを通ってもいい。全部を自分でやらなくてもいい。職人肌の人で「いや、絶対にこの道を通りたい」という人もいます。そこをできる限り尊重し、全員が納得して進めるルートを見つけることも楽しい山登りの秘訣です。
道の途中に大きな岩が出てきて、嫌になって引き返そうかな?と思うこともあるかもしれません。そんな時は「頂上にみんなで一緒に登りたいから、ここの岩をどかすのを手伝ってくれませんか」という巻き込み方が重要です。
最後は「みんなで一緒に頂上に登れました!ありがとうございました!おかげ様です」という報告をすれば、達成感の共有につながります。
誰もやりたがらない仕事は、「感謝される仕事」
―みんながやりたくない仕事、苦手な仕事が残ってしまう場合もありますよね。
できるだけその仕事を分担して取り組むためのやり方や仕組みを考えます。結局誰もやりたがらない仕事は、仕事への意義や目的が見出せなかったりしているので、それを理解しやすく見せていく。つまり、「可視化」ですね。
以前、クラウドワークスでも、好きな業務と嫌いな業務を全員が付せんに書き出して、壁に貼って可視化しながらディスカッションしたことがあります。すると意外なことに、それぞれが嫌いな業務、好きな業務がうまくバラけるんですよね。お互いの好きな仕事、嫌いな仕事、得意、不得意を共有し、理解したうえで仕事をすると、とてもスムーズにプロジェクトが進みますし、ストレスも減ります。
プロジェクトメンバー全員が好きじゃない仕事はアウトソーシングを検討してもいいでしょう。クラウドワークスはそこが得意分野でもあるので、アウトソーシングの積極導入も意義があります。
また、「誰もやりたくない仕事」というのは見方を変えると、「感謝される仕事」です。その仕事を誠心誠意やっていくと、その様子が伝わって、チーム全体が変わっていくことがあります。一瞬、依頼された仕事を「嫌だな」と思っても、実際にやってみたら、自分にとって意外に良い仕事だったり。最後に「ありがとう」と言われると、「いいよ、いいよ」なんて返事していることもあります(笑)。
―見方を変えるのもひとつの手ですね。
最後に田中さんが今後挑戦したいことはありますか?
最近、明確に進むべき方向が見えてきた感じがします。自分が一緒に働きたい人と、自分の価値を創造しながら、常にワクワクして仕事をしていられたら幸せだと思うんです。
あとは、「暮らし」と「働く」をどんどん近づけていきたいということ。僕の人生では、家族が幸せでいられることが重要な目的で「仕事の時間が多くを占めるから、家族と一緒にいられない」というのは本末転倒のような気がして、だから働き方を変えたいと思ってクラウドワークスに入ったわけです。実は、先月1カ月ぐらい、育児休業を取っていたんですよ。そして今も、週2~3日ぐらい会社に来て、後は在宅でのリモートワーク。そういう新しい働き方、暮らし方ができるのもありがたくて。暮らしを大切にしつつ、暮らしの中に働くということをどんどん入り込んでいく、そうしたスタイルを追及できるといいなと思います。
そう考えると、どこを暮らしの拠点にするかも、職場や仕事を選ぶのと同じぐらい大事だと思います。首都圏は「働く」はあるけど「暮らし」がないがしろにされがち。一方で地方は「暮らし」はあるけれど「働く」が不足している。そのアンバランスをクラウドワークスのサービスやリモートワーク、副業等でグッドバランスに変えていきたいと思います。 インタビュー・文:野原 晄 撮影(インタビュー):平山 諭
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