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『SUNNY 強い気持ち・強い愛』と『サニー 永遠の仲間たち』、少し『タクシー運転手 約束は海を越えて』(映画のブログ)

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』と『サニー 永遠の仲間たち』、少し『タクシー運転手 約束は海を越えて』

今回はナドレックさんのブログ『映画のブログ』からご寄稿いただきました。

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』と『サニー 永遠の仲間たち』、少し『タクシー運転手 約束は海を越えて』(映画のブログ)

 2018年公開の日本映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛*1 』は、韓国映画の傑作『サニー 永遠の仲間たち*2 』を、『モテキ*3 』『バクマン。*4 』の大根仁監督がリメイクしたのだから鉄板だ。歌あり、ダンスあり、恋と喧嘩と友情あり。懐かしい1990年代のヒット曲に乗せて、ついホロリとさせられる、とても素敵な作品だ。

*1:『映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』公式サイト』
http://sunny-movie.jp/

*2:「『サニー 永遠の仲間たち』 彼女が変わらない秘密」2012年07月19日 『映画のブログ』
http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-347.html

*3:「モテキ』 ガッポリ儲ける方法」2011年09月27日 『映画のブログ』
http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-267.html

*4:「『バクマン。』実写映画の3つの魅力」2015年10月06日 『映画のブログ』
http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-558.html

 ストーリーは原作映画とほぼ同じである。主人公たち六人組の暮らす現代と、彼女らが回想する高校時代を並行してたどりながら、ままならない人生の切なさと仲間たちとの輝かしい日々を描き出す。
 映画冒頭のテレビ番組で安室奈美恵デビュー25周年を報じていたから、劇中の「現代」は2017年だ。主人公・奈美が淡路島から転校してきた理由が、阪神・淡路大震災で父の職場が壊滅したためなので、「高校時代」は1995年であろう。これは2017年に40歳になった女性たちの物語なのだ。

 韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』は、映画公開の2011年を現代として、25年前、すなわち1986年の高校時代を振り返っていた。
 両作品は同じような設定で、時代もそれほど異なるわけではないが、映し出される光景はまるで違う。『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は必ずしも1995年でなく前後2~3年でも構わなかっただろうが、『サニー 永遠の仲間たち』が振り返るのは、どうしても1986年でなければならなかったはずだ。

 

 かつて、軍事独裁政権に支配され、民主制からほど遠かった韓国では、民主化運動が盛んだった。
 特に全斗煥(チョン・ドゥファン)将軍がクーデターで実権を握った後に起きた1980年の光州事件は、諸外国にも衝撃を与えた。韓国南部の光州市で、民主化を要求する市民たちと軍・警察が衝突、激しい抗争に発展し、多くの民間人が殺されたのだ。
 韓国は戒厳令下にあったため、何が起きているのかはっきりしたことが判らない中、危険を冒して光州市に潜入し、軍に武力鎮圧される市民の姿を映像に収めて日本国に脱出したのが、ドイツ公共放送連盟東京支局の特派員ユルゲン・ヒンツペーター*5 だった。彼の活躍により、光州市の惨状を世界が知ることになる。

*5:「위르겐 힌츠페터」『ko.wikipedia.org』
https://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%9C%84%EB%A5%B4%EA%B2%90_%ED%9E%8C%EC%B8%A0%ED%8E%98%ED%84%B0

 ”青い目の目撃者”と呼ばれるヒンツペーター記者と、彼を乗せたタクシーの運転手キム・サボクの決死行をモデルに映画にしたのが『タクシー運転手 約束は海を越えて*6 』(2017年)である。
 外信記者を乗せて民主化のために走り回っていたというキム・サボク*7 が、映画では金に困った冴えない親父キム・マンソプとして描かれたり等の違いはあるが、独裁者朴正煕(パク・チョンヒ)が倒された後の民主化ムードを一瞬で吹き飛ばし、新たな軍事独裁政権の幕開けを告げた光州事件の衝撃を、この作品はよく表している。
 (相対的に)自由と民主主義に溢れる隣国日本を対置させることで、独裁政権下の韓国の危険と不自由さを感じさせたのも印象深い。

*6:「タクシー運転手 約束は海を越えて [Blu-ray]」『amazon.co.jp』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07GKBGGYF/nadreckthepal-22/ref=nosim/

*7:「『タクシー運転手』キム・サボク氏の長男「本当の父の姿を知らせたい」」2018年05月15日 『hankyoreh japan』
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/30571.html

 光州市民を弾圧した後、オリンピックの誘致等で国民の目をくらましていた全斗煥政権であったが、激しい反政府運動に押され、遂に1987年6月に与党側から民主化宣言を出すことになる。
 『サニー 永遠の仲間たち』の舞台である1986年は、民主化宣言が出る直前だ。この映画では、民主化運動の闘志たる兄が登場したり、少女たちの喧嘩が政府と民衆の抗争に重ね合わされたりして、少女たちの生き様と、自由と民主主義を渇望する国民の戦いが重なる構図になっている。

*8:「民主化宣言」『ウィキペディア』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%8C%96%E5%AE%A3%E8%A8%80

 すなわち、『サニー 永遠の仲間たち』は、主人公の女性たちが高校時代を懐かしむだけの映画ではないのだ。彼女たちの回想を通じて、韓国の市民一人ひとりが軍事独裁政権下の生活と圧制に抗した日々を想い起し、あるいは当時生まれていなかった若者は政府と戦う勇気と先人の苦労を知り、いま手にしている平和と民主主義の大切さを噛みしめる作品なのだ。
 だからこそ、40代女性の回顧映画に留まらず、国民みんなの共感を得て、韓国で740万人を動員する大ヒットになったのだろう。

 

 日本版リメイクの『SUNNY 強い気持ち・強い愛』と同じく2018年に公開されたベトナム版リメイク映画『Thang Nam Ruc Ro*9 』(眩しい五月)も、韓国版の構図に似ている。
 ベトナム版は、時代を2000年と1975年に設定している。25年を隔てた二つの時代を描くのは韓国版と同じだが、ベトナムで1975年といえばベトナム戦争最後の年だ。こちらの映画は、1975年4月30日にサイゴン政権が崩壊する前の南ベトナムを舞台に据えて、ゴ・ディン・ジエム大統領の圧制に対抗するべく結成された南ベトナム解放民族戦線とサイゴン政権が戦った動乱の時代を振り返る。南北ベトナムの統一後、経済発展を続ける平和な現在と対比しながらだ。

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