ドイツで見たおもしろいTV番組について(ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々)
今回はdoukanaさんのブログ『ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々』からご寄稿いただきました。
ドイツで見たおもしろいTV番組について(ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々)
ぼんやりテレビを見ていた
一人旅なので、夕方まで図書館で過ごして、食事を済ませたら、あとは宿でじっと静かに過ごしています。夜のうちに読書をしたり、仕事のメールを書いたりとか、できたらいいのですが、実際のところ毎日飲んでだらだらしているだけです。
ホテルの部屋にテレビがついていたので、ちょっと見てみることにしました。日本でもそうですが、テレビって、いつどんな番組がやってるかわからないので、継続的に見てないと、見る習慣がなくなってしまいますね。
以前滞在した時は、陸上競技のヨーロッパ選手権がやっていて、スポーツ中継は何も考えずに見ていられるのでいいなあと思ったのですが、昨晩はスポーツ番組はとくにありませんでした。チャンネルをパチパチ変えていくと、面白そうな番組が見つかりました。全身タトゥーが入ったお兄さんお姉さんがなにやら話し合っています。オーディションのように、視聴者の男女から何名かが、タトゥー兄さん姉さんに指名されました。一体何の番組なのか?
消したいタトゥーを修正する番組
しばらく見続けているとだいたい仕組みがわかってきました。過去に彫ってしまったタトゥーを消したいあるいは修正したいという視聴者が、身の上話を語り、それを聞いた腕利きのタトゥー彫り師たちが、違う図案に修正する。そしてビフォー・アフターを比べるという番組のようです。
『Horror Tattoos』
https://www.prosieben.de/tv/horror-tattoos
www.prosieben.de
(このサイト番組紹介や過去の放送だけでなく、タトゥーについての情報がいろいろ掲載されていて役立ちそうです)
タトゥーというだけで忌避感情が非常に強い日本では考えられない番組です。しかし、整形手術のビフォー・アフターのように、身の上話と施術後の変化、新たな人生への希望、とテレビ番組としてわかりやすい図式になっていることがわかります。ドイツではタトゥーは別に特別なことではありません。修正を希望してやって来る視聴者の人も、見るからにふつうの人たちです。
母の顔をライオンに変えたケビン
14歳の時死別した母の顔を胸に彫っていたケビンですが、母の死を乗り越えて新たな自分になりたいとタトゥーの描き変えを依頼しました。
(ワイン飲みながら片耳で聞いていた程度なので、正確でない部分もあるかもしれません)
おっかない彫り師さんが、施術しています。
できあがりました。迫力のあるライオンの顔になりました。
(番組ホームページから)このように前後を見比べると全く異なっています。
父親の顔を彫って欲しいというスーザン
何人か出てきた出演者のなかで、とりわけ興味深かったのがこの女性。彼女は、死んだ父親を敬愛していて、以前ある彫り師に父の顔を二の腕に彫ってもらったものの、それが似てなくて気に入らないのだといっています。
なるほど、なんていうかヘタです。お父さんの写真を見ると、似ても似つかないどこかのおっさんです。
彼女が持ってきた写真を元に、彫り師さんがきれいに修正を施していきます。
そしてできあがったのがこれ。
非常にリアルな仕上がりです。彼女も満足そうです。この後うれし涙を流していました。
前のタトゥーとは比較になりません。
実際のお父さんの写真を見ると、いかによく似せてあるかに驚きます。
もとのお父さんの顔を忠実に再現しています。肌のつやまで再現してあることに驚きます。
彼女がお父さんを思って、忘れないようにとその顔をタトゥーにしたいという気持ちはよくわかります。他の出演者も、死んだお母さんを胸に彫ったという青年や、友達との思い出をマンガで描いたものを彫っていた男性(あまりに拙い絵でなんだかよくわからなかったので修正依頼)などがいました。
この若者が脚に入れてたこのタトゥー
本人があれこれ説明していましたが、意味がよくわかりませんでした。
彼らは、身近な人との思い出や、大切なものを失った時の感情を、文字通り風化させたくなくてタトゥーにして残すのでしょう。(もちろん単なる若気の至りで、アホみたいなキャラクターを彫ってしまったおじさんなどもいました)
私もちょうど父が体調を崩していて、あまり元気がありません。これからどうなるか心配なので、お父さんの顔をタトゥーにした女性をみながら、自分の父のことを思い出していました。敬愛する父だけど、タトゥーを彫っていつも自分の肩にくっつけておく、というのはなんだかなあ、と思いました。おじいちゃん、おばあちゃん、母や兄もと次々増やしてしまうと、御先祖の絵がかかっている仏間みたいになってしまいそうですね。
執筆: この記事はdoukanaさんのブログ『ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年08月23日時点のものです。
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