甲子園からプロ野球、メジャーまで…あまねく野球人から愛されるベリグに見るファンモンとの共通点

甲子園からプロ野球、メジャーまで…あまねく野球人から愛されるベリグに見るファンモンとの共通点
猛暑が続く中、甲子園では第100回 全国高校野球選手権が行われ、連日熱い戦いが繰り広げられている。昨日8月15日の第3試合では、奈良大付(奈良)に勝利した日大三(西東京)が次戦へ駒を進めたが、試合中スタンドから応援する同校の吹奏楽部による応援歌の中に、「ライオン」という楽曲があったことに気づいた方はいるだろうか。

 この楽曲は、ベリーグッドマンという大阪出身の男性3人組ボーカルグループの代表曲だ。今回の甲子園の地区大会では全国14エリアにてタイアップ起用され、番組などのテーマソングやオープニング曲として連日オンエアされていただけに、甲子園ファンの中には耳にした方も多くいるだろう。日大三の吹奏楽部は、かねてより応援歌用にアレンジした「ライオン」を演奏する動画をYouTubeに多数公開。今夏の甲子園では、1回戦からチームを応援する1曲として演奏し、一部で話題を呼んでいたのだ。

<NPBでの人気は現メジャーの前田健太選手から>

 実はこのベリーグッドマン、野球ファンにはかなり名の知れた存在だ。最初のトピックは2015年、当時広島東洋カープのエースだった前田健太選手(現ロサンゼルス・ドジャース)が、ペナントレースの登場曲として彼らの楽曲「1988」を起用した。これはたまたま楽曲を知った前田選手が気に入ったことから交流が始まり、同じ“1988年生まれ”だった縁から実現したのだが、ベリーグッドマンがまだまったくの無名新人だったことから、世間を驚かせる出来事となった。

 その後、プロ野球では、彼らの楽曲を登場曲に使用する選手が徐々に増えていく。今年のペナントレースでも多くの選手がベリーグッドマンの楽曲をセレクトしており、埼玉西武ライオンズのクローザー 増田達至選手や、東北楽天ゴールデンイーグルスの内田靖人選手など、実に5名の選手が前述の「ライオン」を登場曲に使用。他の曲も合わせると、計16名のプロ野球選手から選出されており、これはWANIMA やONE OK ROCKといった人気爆発中の若手やGReeeeN、Mr.Childrenなど錚々たる顔ぶれが並ぶ中、使用回数と使用選手数でともに4位の記録となっているのだ。

<大阪桐蔭や日大三がコラボ、高校生から「アガる」と話題>

 こうした人気は当然、高校生たちにも波及していく。昨年春には日大三と同じく甲子園常連校 大阪桐蔭の吹奏楽部が、「ライトスタンド」でベリーグッドマンとコラボ。そして同校は春のセンバツで見事全国制覇を達成した。さらに今年の1月には、テレビ朝日系『ミュージックステーション』の「高校生に聞いた部活でアガるJ-POPランキング」で20位に。こちらもゆず「栄光の架橋」やZARD「負けないで」、星野源「恋」や米津玄師「ピースサイン」など新旧入り交えた大ヒットソングに囲まれる中でのランクインとなり、直後にTwitterのトレンドランキングでは1位に躍り出る快挙を成し遂げたのだ。

 また、TwitterやInstagramでは、ベリーグッドマンの楽曲をBGMにしたムービーが多数投稿されている点にも注目したい。「ベリーグッドマン」のハッシュタグが付せられた動画を紐解くと、高校球児たちのハイライト映像や写真と共に、「ライオン」や「ライトスタンド」、「ハイライト」といった彼らの代表曲を題材にした感動的なショートムービーが連日のように投稿されている。

<かつて野球人に響いたファンモンにも通ずる現象とストーリー>

 では、なぜそれほどまでに彼らの楽曲は野球人たちから愛されるのだろうか。かつて彼らの先輩格であるファンモンことFUNKY MONKEY BABYSは、のちに代表曲となるシングル「あとひとつ」のジャケットとミュージックビデオに、当時東北楽天ゴールデンイーグルスに所属していた田中将大選手(現ニューヨーク・ヤンキース)を起用。田中選手も自身の入場曲として同曲を使用した。

また、2010年の『速報!甲子園への道』テーマ曲、『高校野球中継』各試合や『熱闘甲子園』のオープニング、ABC夏の高校野球テーマソング等々高校野球関連番組でも、「あとひとつ」は多数使用された。結果、高校球児や甲子園フリークからも愛されるナンバーとなり、その盛り上がりは社会現象にまでなっていった。前述した近年のベリーグッドマンとも通ずる現象やストーリーである。

 ファンモンのファンキー加藤は、元々野球少年だったこともあり、高校球児の甲子園に懸ける想いや野球選手の一球に込める思いへの理解があった。ゆえにどんなに格好悪いと思われたとしても、抑えられない気持ち=エールを歌にし、何度も「あきらめないで」と全身全霊で歌い続けることができた。

それは元々高校球児だったメンバー MOCA擁するベリーグッドマンにも同じことが言えるだろう。今夏も甲子園やプロ野球を彩る「ライオン」に力強く込められた、どんなにつまづいても転んでも「ここでは終われない」と走り出す不屈の心。もうダメだと追い詰められても負けずに立ち向かっていく信念は、いつの時代も野球人たちと共鳴する。いや、野球人に限らず、同じ想いで戦い続ける人々の胸を打つ。

<ポップスの生まれづらい時代におけるベリーグッドマンの稀少さ>

 多くのアーティストが限定された世界で局地的な人気から抜け出せず、紅白やランキング番組を見て「知らない曲ばかり」とぼやく人々が年々増えている昨今の音楽シーンにおいて、この普遍性をアイデンティティにしている存在は稀少だ。誰もが口ずさめる歌=ポップスの生まれづらい時代になってから久しい。リスナーの背中を押してあげたい、夢を諦めずに追い続ける大切さを知ってほしい。そんな思いで音楽を届け続けているベリーグッドマンが、2018年夏、高校球児の蒼い情熱とともに大きな盛り上がりを見せている。また、日大三の3回戦は、明日8月17日 15時30分開始予定となっているが、甲子園に高らかに響き渡る「ライオン」は、白球を追う球児たちに力を与えてくれるのか、注目だ。

◎2018年 プロ野球登場曲使用回数ランキング(使用選手数)
1位.WANIMA 28回(23選手)
2位.ONE OK ROCK 22回(21選手)
3位.GReeeeN 21回(21選手)
4位.ベリーグッドマン 19回(16選手)
5位.Mr.Children 14回(13選手)

◎2018年 ベリーグッドマン楽曲使用選手一覧
・福岡ソフトバンクホークス
 今宮 健太「ハイライト」「ファンファーレ」
 川瀬 晃「YOU」
 栗原 陵矢「ライオン」「ハイライト」
・埼玉西武ライオンズ
 増田 達至「ライオン」「Hello」
・東北楽天ゴールデンイーグルス
 内田 靖人「ライオン」
 八百板 卓丸「ライトスタンド」
 山下 斐紹「ハイライト」
・オリックス・バファローズ
 T-岡田「ハイライト」
 山岡 泰輔「ライオン」

・広島東洋カープ
 鈴木 誠也「ライトスタンド」
・阪神タイガース
 岩田 稔「Mornin’」
・横浜DeNAベイスターズ
 楠本 泰史「ライトスタンド」
・読売巨人ジャイアンツ
 大江 竜聖「ライオン」
 山川 和大「おかん~yet~」
・中日ドラゴンズ
 杉山 翔大「おかん~yet~」

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