“結果を出し続ける”人は「学び」を「学び」のままにしない――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第17回目です。
『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。
【本日の一言】
「投資には忍耐が重要であることを学んだ」
(『インベスターZ』第3巻credit.20より)
大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。
「投資の神様」が初めて行った株の売買とは
道塾学園の創設者・藤田金七(かねしち)の玄孫(やしゃご)・美雪は、道塾学園の投資部に対抗して、自分も友達と3人で女子投資部を設立。9歳の時から投資を始めた美雪は、投資初心者である部員2人に向かって、投資の心得を話します。事例に挙げたのは、「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏でした。
バフェット氏は、11歳で株式投資を始めます。自分と姉のために、シティ・サービスという会社の株を3株ずつ買います。しかし購入時、1株38ドルだったその株は、一時27ドルまで下落してしまいます。その後、株価は持ち直し、40ドルになった時点で売却。ところが売った後で、株価は200ドルにまで上昇。この経験によって、氏は投機目的で株を売買することの愚を悟ります。
「投資とは、差益だけを狙う投機とは違う。目の前の株価を見て『上がった』『下がった』と一喜一憂するものではない」ということに気づいたバフェット氏。「投資には忍耐力が必要である」という、重要な教訓を得たのでした。
人は他人と同調することに安心感を覚える
このエピソードは、バフェット氏の投資家としての才能が並々ならぬものであったことを示していると言えるでしょう。子どもながら、氏はこの一件によって「投資とは感情で動いてはいけない」ことに気づいたワケです。
浮き沈みの激しい金融の世界で、トップを走り続けているバフェット氏ですが、その投資戦略は一貫しています。それは「優良企業の株を割安で買い、持ち続ける」というものです。このシンプルな法則こそ、氏を成功に導いた重要な教えの一つですが、これを実行するのがいかに難しいかは、氏の地位が他の追従を許さぬものであることからも、容易に想像できるのではないでしょうか。
なぜ、これがそんなに難しいのかというと、人はつい、他人と同じ行動を取りたくなる生き物だからです。例えば、「この株なら絶対に上がる」と信じて買ったにも関わらず、人は市場の値段が下がればハラハラし、他人が群がっているものには、自分も一緒に群がりたくなります。
あなたも、何かで不安になった際に、「ほかの人もやっているのだから大丈夫」と自分をなだめた経験が、一度や二度はあるのではないでしょうか。けれど、ビジネスの世界においては、他人とは別の道を行かなければいけません。バフェット氏も「『ほかの誰もがやっている』という言葉ほど、危険なものはない」と戒めています。
世界のトップメンバーに入り続けるために必要な“2つの要素”
ところで、私は以前、社会人になってから3年経ったころに10カ月間休職して、大手企業が社員を送り込む海外研修プログラムに自費参加したことがあります。実は、その留学先というのが、バフェット氏の生まれ故郷であり、現在も氏の本拠地となっているネブラスカ州オマハでした。その上、氏の自宅は、私が通っていた大学のすぐ裏にありました。
当時から「世界の大富豪」と呼ばれた氏ですが、自宅はアメリカ人としてはごくごく標準的な住まいでした。それに対して、当時その町には通販会社で成功したという、ある日系アメリカ人の社長の住まいがありましたが、そちらはまるでお城のような御殿でした。もちろん、人によって価値観が違うのは当然のことですが、成功しても自分のスタイルを変えないバフェット氏の姿勢は、自宅にも現れていました。
人も羨む成功を手にするのは難しいことです。しかしもっと難しいのは、その成功を維持し続けることです。バフェット氏は、その「成功を維持し続けている稀有な一人」ということになりますが、考えられる要因としては、主に2つが考えられます。
(1)常に学び続け、同じ失敗を繰り返さないように努力していること
(2)学びを教訓に変え、マイルールに落とし込んでいること
の2つです。
すべてを満たすには、人生はあまりにも短すぎる
結局、成功の秘訣とは、余計なものには目をくれず、自分が天から与えられた才能を研ぎ澄ませ、一心に行くべき道を進むことなのではないでしょうか。
11歳にして「時間を味方にする」ことを学んだバフェット氏は、同時にこの時、自分が一生をかけて目指すべき道を、悟っていたのかもしれません。
何をするかより、何をしないか。
そのことの重要性をリアルに実感するエピソードですね。
俣野成敏(またの・なるとし)
大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。
俣野成敏 公式サイト
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