エバンジェリスト西脇資哲氏・野水克也氏と学ぶ!ソーシャル時代の動画活用と基礎テクニック
ソーシャルメディアの普及で、動画が身近なものになってきました。YouTubeに動画をアップして反響を楽しんだり、SNSでのタイムラインでも見かけるようになりましたね。かつては動画の撮影といえばビデオカメラを用いるのが当たり前でしたが、一眼レフカメラやミラーレス一眼、さらにはスマートフォンやタブレットなどでも手軽に撮影できるようになってきました。
動画は文字や写真よりも情報量が多く、伝わる力も強いため、企業のプロモーションなどにも活用するシーンが増えてきました。一方で、撮影する機材や編集の仕方などで悩む人も多いのではないでしょうか。今回は動画撮影に関する基礎知識についてお届けします。
今回動画撮影や編集のテクニックを伝授してくれるファシリテーターは、日本マイクロソフトのITエバンジェリスト西脇資哲さん、そしてプロの視点でナビゲートしてくれるのは、サイボウズで広告宣伝やマーケティングのエバンジェリストとして活動しながら、フリービデオグラファーとしても活躍している野水克也さんです。
プロフィール
西脇 資哲さん(日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エバンジェリスト)
日本経済新聞でも紹介されたITエバンジェリスト。マイクロソフトでの活動のほか、ドローン、プレゼンテーションやコミュニケーションから、トップアイドルグループ乃木坂46とのラジオ番組まで担当。TBSテレビでも番組を持つなどメディアにも積極的。さらにはTwitterフォロワー約10万人で毎週トレンド上位をたたき出している。
野水 克也さん(サイボウズ株式会社 社長室 フェロー 兼 フリービデオグラファー)
大学卒業後、北陸の番組制作会社でキー局の北陸担当カメラマンおよびローカルのディレクターを8年勤める。サイボウズでは広告宣伝担当やマーケティング部長を歴任して現職、年間100回を超える講演のエバンジェリスト活動の傍ら、副業として自治体の観光PR動画や空撮、インディーズアーティストやIT企業のプロモーションビデオを制作。
ソーシャルで映える撮影テクニックとは?
西脇:今回は野水克也さんに動画撮影と編集テクニックについてレクチャーしていただくのですが、その前にまずはソーシャルメディアでどういう写真を撮るといわゆるインスタ映えするのか、その極意をお伝えしたいと思います。
インスタ映えするのは、やはりカラーが多いことが重要です。白黒に加えてカラーバリエーションを多く入れましょう。おしゃれな空間は角度で決まります。影が出ず、うまく光が入る角度を考えながら、撮影すると華やかな写真になります。
料理の写真を撮る際は、手や道具・液体などで動きを見せたり、まっすぐ「横」や「縦」に撮るより、斜めに角度をつけて撮ったほうがインスタ映えします。器に入っている料理は立体感を出すために持ち上げると効果的です。
また、「手前」と「奥」を意識して背景をボカしたり、カメラを近づけてズームにするとプロが撮ったような写真になります。食事やお皿など撮りたいものの全体像を撮らず、見る人に想像させることも上級テクニックの一つです。気をつけたいのは、おしぼりやテーブルの上のごみなど、余計なものを写らないようにすること。足元や手を付けた料理なども写らないようにしましょう。
西脇さん直伝のソーシャルで映える撮影テクニック
・カラフルであること
・おしゃれ感があること
・動きがあること
・斜めに撮ること、角度をつけること
・奥行きを作ること/ポートレートにすること
・ズームにする
・持ち上げる
・想像させる/期待させる
・全部を撮らない
・余計なものを撮らない
絶対にやっておくべきこととしては、何枚も撮ること、カメラのレンズは絶対に“拭いておく”こと、自然光で撮る、あるいは照明を入れること、自分の影を映りこませないことなどです。
また、写真撮影時のマナーと注意事項として、できれば周囲に「撮影」していることを伝えること、撮影した食事は必ず食べること、関係者への御礼や公序良俗は意識すること、そして自分をあまり作りすぎないことですね。
写真をソーシャルにアップする際は、タグをつけてつけまくりましょう。被写体はもちろん自分や場所、気持ち、会話など、何でもタグにしてアップすると多くのユーザーに見てもらったり、共感が得られて楽しいですよ。
コミュニケーションは画像・動画の時代へ
西脇:最近は電話やメールよりも、手軽に写真を送ったり、ライブ配信などができるLINEやFacebookなどのソーシャルメディアを通じてコミュニケーションする人が増えてきました。インターネット上でのプロモーションもテキストや画像だけではなく、Facebook広告やInstragram広告など、動画によるプロモ―ションや広報が当たり前の時代になってきましたね。
野水:なぜ動画がいいのかというと、やはり情報量が多いことですね。何かを表す際、文字は人間が伝えたい25%しか伝えられないと言われていますが、映像は音と時間軸が入ってくるので、表現が豊かになります。
動画と写真(スチル)の違いは、写真は一枚で見せ切ってしまうのに対し、動画は連続した複数のカットで伝えられること。情報量が全然違います。欠点は縦横比が固定されてしまい、背景処理やトリミングができないため、人物を撮るときに苦労することです。あとはよけいな音が入ったり、コントラストが低いことですね。白と黒の部分を作らないように撮ります。レタッチもあまり派手にできません。
表現手法は写真は構図が命ですが、ビデオは動きをどう撮るか、どうやって動かすかが重要になります。また、写真も動画もファーストインパクトが大事。特に動画は最初が面白くないと、その後は見てもらえません。
余談ですが、同じ映像でも映画とテレビで伝わり方が違うんですね。テレビは情報を、映画やYouTubeは感情を伝えることに向いています。テレビは頭90秒で面白そうなシーンを使い、最初の5分で興味関心を引く作り方をしますが、映画は後半に向けてストーリーの盛り上がりを作る。映像は見る環境によって作り方が違ってくるのです。
インターネットの動画コンテンツは頭15秒が大事で、ファーストインパクトがないと見てもらえないことが多い。さらに、30秒に1回くらいの頻度で商品名を入れると、印象に残るのでPRには効果的だといわれています。
モノ(商品・サービス)からコト(体験)へ
野水:これまでのプロモーションや広報は、モノ(商品やサービスなど)を撮って伝えるだけでした。例えばテレビで観光名所を伝えるときは、仏像とか名所を撮って説明するだけ。でも最近は、それらのモノによってどんなコト(体験)ができるか、コトを見せることで、いかにその人の目線になって感情をゆさぶるかが重要になってきました。
撮り方も変化しています。昔は望遠レンズで撮ることが多かったのですが、最近は広角レンズを使うことが多いんですね。マイケル・ジャクソンとAKB48のミュージックビデオを比較するとわかりやすいと思います。前者は静止画から始まって望遠レンズで全体を撮る昔の撮り方ですが、後者はまるでそこにいるかのように自分目線で撮影する、今の主流の撮り方です。
カメラはプロカメラマンでない一般の人も、Canon EOS 5D Mark IIの登場で、一眼レフカメラで安価に高品質な動画を撮影できるようになりました。フルサイズで撮るときは、広角レンズで後ろをボカすことが簡単にできるEOS 35mmフィールドがよく使われています。
動画を撮影するための周辺機材もここ5年で革命的な進歩を遂げてきました。 ・ドローン:空撮が誰でも手軽にできる
・ジンバル:レールを引いて撮影していたショットが誰でもできる
・スライダー:クレーンを使った映像が誰でもできる
・スローモーション、タイムラプス機能
岡崎体育さんが歌う「MUSIC VIDEO」の歌詞にある、“ミュージックビデオにおける女の子の演出講座”も一眼レフと上記の機器があればだいたいできます。ジンバルを使ってだんだん遠ざかったり、近づいたりするシーンや、ぼかしたりするも可能です。本来の色で撮ると影が出てしまったりして大変なので、グリーンに近い薄い色で撮ると、後で加工が楽になります。全部グリーンだと、しわとかも消しやすいんですよね。 ・泣かす ⇒ 大型センサーと大口径レンズ
・踊らす ⇒ ジンバル
・音楽聴かす ⇒ 大型センサーと大口径レンズ
・窓にもたれさす ⇒ 大型センサーと大口径レンズ
・倒れさす ⇒ ジンバル
共感を得るためには、一眼レフじゃないと取れない映像もあります。ポイントはその人の気持ちに立って撮ること。ナレーションから考える人がいますが、もうそういう時代じゃありません。感受性ゆさぶって、見たいと思わせるだけ。とりあえず見たいと思わせたら、Webサイトで説明すればいいのです。
プロモーション動画を撮るなら知っておきたい豆知識
野水:映像のサイズも変わってきています。アナログテレビは640×480px、VHSビデオ3倍モードは320×240px、DVDは720×480px、HD(多くの30インチ以下の家庭用テレビ)は1280×920でしたが、地デジになると1440×1080px、フルHDは1920×1080px、4Kは3840×2180pxと解像度が高くなり、圧倒的な情報量で表現することができるようになってきました。ただ、1秒間に30個も画像を動かすので、再生できる機械や回線がまだない状態です。
ファイルの規格は、AVI、WMV、ASF、MP4、MOV、MPEG、MKVなどたくさんありますが、映像で一番向いているのはH264。4Kでも使えるし、圧縮しても画質が落ちません。H265は圧縮率が高いのですが、ノートPCで再生できない次世代規格です。
音声や画像などをコンピュータで扱うデータ形式に変換したり、元に戻したりするための機器や機能を「コーデック」、そのコーデックで圧縮された映像と音声が入っている箱を「コンテナ」といいます。映像コーデックと音声コーデックは、以下のような圧縮されたデータが入っています。
●映像コーデック:H265、H264、MPEG-4、MPEG-2、Xvid、Divx、VP8など
●音声コーデック:MP3、AAC、WMA、MP2、WAVなど
記録フォーマットは一定の規格を担保するために作られているもので、Blu-ray Discのアプリケーションフォーマット「BDMV」を応用し、ハイビジョン映像をビデオカメラで記録するための規格フォーマット(AVCHD)と、4K世代で使われるXAVC、XAVC Sのフォーマット(SONY)という二大規格を覚えておくといいと思います。
もう一つ覚えておくと便利なのが、LOGというカラーポジション。撮影後の編集段階で修正しやすいように、光の濃淡(黒と白)両方のデータを撮る機能です。いわゆるシネマトーン、映画のような雰囲気で撮ることができます。センサーの性能と上記の条件を一番満たしているSONYのカメラを私は使っています。SONYのセンサーは世界の3割以上のシェアをが占めています。ちなみに、このLOGの撮り方はiPhoneではできません。
カメラの手ブレを補正してくれるスタビライザーやカメラをスムーズに移動させながら撮影できるレールレスドリーなどの周辺機材も、重量や機能面で革命的な進歩を遂げてきました。
※イベントでは、「ぱくたそ」のフリー素材モデルで人気の河村友歌さんを題材に、動画撮影の実演レクチャーも行われました。
野水:最後に伊万里を撮影した動画を題材に、ちょっとした撮影テクニックを紹介したいと思います。ポイントは近景と遠景どっちも撮る、山や煙突との背景とのかさなり具合、器を全部写さずに手の動きを撮る、ゆっくり写すといったところです。こちらにも作品紹介があるので、参考にしてみてください。
▲The village of the Secret Kilns. ” Imari-Okawachiyama ” 秘陶の里 伊万里 大川内山
── 野水さんは動画の撮影スキルを宣伝・広報での本職ではもちろんのこと、動画撮影の腕を買われてプロモーション動画を撮影する副業にも活かしているとのこと。今回はお試しの第0回ということで、第1回の開催も近々あるかもしれません!ぜひ、学んでみたいと思った方は、西脇さんのTwitterをフォローしてチェックしてみてはいかがでしょう。
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