「英語が上達しない人」に共通する3つのクセ

「英語が上達しない人」に共通する3つのクセ

『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに「正しい英語学習の方法」についてお話しいただくこのコーナー。第16回目の今回は、「英語が上達しない人に共通するクセについてです。5,000人以上の英語学習者を分析して分かった、英語が上達しない人に共通する3つの「無意識のクセ」とは? そこから抜け出し、自然と英語が上達するようになる方法をお伝えします。

「今度こそ英語ができるようになりたい!」

そのように思う方もたくさんいらっしゃるでしょう。

私は今までに5,000人以上の英語学習者の方を指導してきました。その経験からたどり着いた、「英語が上達しない人に共通する3つのクセ」を今回はご紹介します。

どれも「無意識のクセ」ですから、気づいていない人がほとんどですし、なかなかピンと来づらいかもしれません。ですがこれらは、多くの人が気づかずにハマってしまっている落とし穴のようなものです。ぜひ自問自答しながらお読みください。

1.理想が高すぎる

総じて、日本人には「理想が高い」人が多いです。高い理想を持っていること自体は素晴らしいですし、そのおかげで質の高い仕事ができたり、世の中をより良くする仕事ができたりするわけです。しかしそのせいで逆に、英語学習がうまくいかなくなってしまっている人もかなり多いのです。

例えば、日本人の大部分が「自分は英語ができない」と思い込んでいます。実はこれ、理想の高さの裏返しなのですが、そのことに気づいていない人がほとんどでしょう。

「英語ができる」ということに対して、「英会話で不自由がない」とか「字幕なしで聞き取れる」といったレベルを無意識に求めてしまっているのです。ネイティブに近いレベルに到達しなければダメだと思っていますから、このこと自体が既に、理想がかなり高い証拠なのです。

そこに達するためには、下手をすれば10年とか、もっとかかるかもしれないのです。そのような高いレベルに到達できるまでずっと、「自分は英語ができない」と思い続けたいですか?

「理想が高い」ことがダメなわけではありません。「理想を基準にして評価してしまう」ことに問題があるのです。理想はあくまでも理想であり、届かなくても仕方のないもの――。野球であれば、毎打席ヒットを打てる、つまり10割打てることが理想ですが、現実的には良くて3~4割です。「毎打席ヒットが打てていない私は全然ダメだ」と、自分を否定し続けている選手がいたら……大成すると思いますか?

理想があるのは素晴らしいことですから、ぜひそこを目指してください。しかしその理想を、「できない」と評価するために使ってはいけません。現実として「自分ができること」にきちんと目を向け、それを着実に伸ばしていくことが大切なのです。

2.暗記グセ

英語を「暗記科目」だと思っていませんか? 私は以前から、英語は「暗記科目」ではなく「納得科目」だと主張しています。もちろん、暗記が一切いらないわけではありませんが、暗記する必要の全くないことまでを暗記してしまっている人が非常に多くいらっしゃいます。

過去に受けた学校教育の影響も大きいでしょう。「英語はそういうものだから覚えろ」などと、先生から言われた経験のある方も少なくないはずです。

そもそも、中学生以上の大人には、丸暗記は推奨できません。脳科学的にも、大人は理屈が分からないと「やる気」が出づらくなり、「記憶」にも残りづらいことが明らかになっています。理屈が理解できて、「なるほど!」と思えることが、大人が英語を学ぶ上では欠かせないのです。

しかし、多くの方が英語を「暗記科目」だと思い込んでしまっています。単語は暗記するもの。文法も暗記するもの。英文も、何度もリピートして丸暗記。それがクセになってしまっていませんか?

また、暗記グセがある人は、分からないことや疑問点がでてきても、それを放置してしまいがち。疑問が出てくるということは、何かわからないことがあるという証拠です。また、その疑問を解消できれば、理解の階段を一歩上ることができるのです。

しかし、疑問点を放置して丸暗記をしてしまうのは、単なる「鵜呑み」。それでは、上達は得られないのです。

3.インプット過多

また、英語を「勉強」だと思ってしまっている人もかなり多いです。単語帳を買ってきて覚える。文法書を買ってきて、一冊最後までやる。真面目な姿勢は素晴らしいと言えますが、英語は「コミュニケーションの道具」なのです。

英語が上達しない多くの人が、「知識を吸収しよう」としています。その根底にあるのは「知らないから、しゃべれない」という誤解――。そう、誤解なのですが、多くの方が「英単語や表現を知らないからしゃべれない」と思い込んでいます。そして、新たに単語を覚えたりしてしまうのです。

英語がしゃべれない原因は、「知らない」からではありません。私は「知識肥満」と呼んでいますが、むしろ、知識がありすぎて動けなくなってしまっているのです。

基本的に、日本人の大人が英語をやり直す時には、新たに単語を覚えようとすべきではありません(難しい文書などを読まなければいけない人は別として)。過去に習った単語を思い出し、あやふやな知識を総動員してでも、どんどん英語を口に出してみることをお勧めします。

別に、いきなりの英会話を勧めているわけではありません。独り言的に、口で言ってみたり、英文を書いてみるのでも構いません。とにかく、既に知っている知識を使って、英語を言ったり書いたりしてみる、という「アウトプット」を行なうべきなのです。

日本語における漢字も同じなのですが、読めるけど書けない漢字ってありますよね。「薔薇」や「憂鬱」などです。こういった漢字は、自分で書かない限り、書けるようにはなりません。英語も同じで、自分で使わない限り、使えるようにはならないのです。

自分で使おうとすると、そこで新たな疑問が出てくるはずです。その疑問を1つ1つ解消していくことが、本当の学びの姿なのです。

まとめ

「○年も学んだのに、こんなことも分からないなんて…」などと思ってしまうこともあるかもしれません。しかしそれは「理想」というかむしろ、「これだけやったら、このくらい上達すべき」という「幻想」に過ぎません。現実には、「分からないという事実」を受け入れるしかないのです。

なお、「分からない」ことに気づけたのは「プレゼント」だと思ってください。アウトプットを行なったからこそ気づけた、貴重なプレゼントなのです。そして、その分からない箇所を1つ1つ解消していきましょう。

アウトプットをして、出てきた疑問を解消する。それを繰り返していけば、あとはもう上達しかしません。ぜひ安心して、上達の階段をのぼっていってください。

西澤ロイ(にしざわ・ろい)

イングリッシュ・ドクター

英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。

TOEIC満点(990点)、英検4級。

獨協大学英語学科で学んだ言語学に、脳科学や心理学も取り入れ、英語流の「発想」や「考え方」を研究、実践することで、大人だからこそ上達する独自のメソッドを確立する。

暗記の要らない英会話教材「Just In Case」、正しいリスニング方法が身につくトレーニング教材「リアル・リスニング」も好評を博している。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)他、著書多数。さらに、ラジオで4本のレギュラーがオンエア中。特に、木8の番組「めざせ!スキ度

UP」が好評を博している。

TOEIC L&Rテスト最強の根本対策 PART5

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西澤ロイ 公式サイトはこちら

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