人はなぜ「行列に並ぶ」のか…行動から見える仕事の“傾向”とは?ーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

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人はなぜ「行列に並ぶ」のか…行動から見える仕事の“傾向”とは?ーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第11回目です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、読むリラックスタイムですら学びの時間に変えることができます。私が強くお勧めする選りすぐりのマンガの名シーンの1コマを解説することで、より多くの方に名作の良さを知っていただけたら幸いです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「金を掘ったヤツに金持ちはいない!」

(『インベスターZ』第2巻credit.16より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

投資とは「荒野を宝の山に変えること」

財前が道塾学園の投資部に入部して半月あまり。定例の投資会議が開かれます。キャプテンの神代(かみしろ)が各人の投資状況を確認してみると、財前は神代が勧めた銘柄以外、買っていないことが判明します。

「なぜ商品を購入していないのか?」と聞かれ、「良い銘柄が見つからないから」と答える財前。すると神代は、「良い株を探すな。ボロ株を見ろ」と教えます。言葉の意味を計りかねている財前を見て、神代が事例として挙げたのが、1848年にアメリカで起こったゴールドラッシュでした。

当時、アメリカの西海岸で金鉱が発見されると、一攫千金を夢見た大勢の人がカリフォルニアに押し寄せます。しかし、本当に大金を手にできたのは、金を掘りにきた人たちではなく、そこに起きた「金を掘り当てたい」という需要に応じたサービスを提供した人たちでした。

「真に儲かったのは、金を掘るためのつるはしやスコップなどを売った人たちだ」と説明する神代。「投資とは宝の山に群がることではなく、荒野を宝の山に変えることだ」と語るのでした。

供給者になりたければ、そこにある“需要”を見つけること

物語の中で、神代はこうも述べています。「金持ちとは社会のブームを利用して稼ぐヤツのこと」だと。つまり、成功者は人々の需要を見つけ、それに乗じるのが上手いということです。

カリフォルニアのゴールドラッシュを利用して財をなした人の一人に、リーバイスのジーンズでお馴染みのリーバイ・ストラウスがいます。当時、鉱山での作業は激しい労働を伴ったため、普通のズボンではすぐに破れて使い物になりませんでした。そこでリーバイスは、補強のために金属製の鋲(びょう、リベット)を打ちつけたズボンを発売。丈夫で特徴的なズボンは労働者の間で大ヒットとなりました。

結局、砂金掘りに訪れた人々の大部分は、金の供給者になろうとしながら、いつの間にか自分たちがサービスを供給される側になっていたワケです。彼らが供給者になれなかった理由は、もしかしたら「金持ちになりたい」という自分の要求だけに目を向けていたせいかもしれません。“供給者=商売人”になりたければ、「他人が欲しいと思うもの」を提供する必要があります。

すでに「世間に広まっている方法」で稼ぐことはできない

「金を掘った者に金持ちがいない」のは、すでに世間一般に広まっているような儲け話で稼ぐのは簡単ではないことを物語っています。

人は通常、「行列ができているものが良いものだ」と考える傾向があります。それはいわば、他人が「良いものだ」と保証してくれているようなものだからです。けれどいつの世でも、桁外れの成果をあげる人は、自ら市場を開拓する人か、初期段階で他人よりも早くその市場の将来性に気づいた人です。成功するためには、他人とは違う道を行く勇気を持たなくてはなりません。

神代の言う「株はボロ株を見ろ」が意味するのは、「まだ人々が気づいていない金脈を探せ」ということです。確かに、ボロ株の中から自分で金脈を探すのは大変でしょう。失敗すれば、投じたお金がムダになってしまいます。人が「行列に並びたい」と思うのは、失敗を避けたい気持ちからです。

成功したければ、失敗は避けられない

多くの人が気づいていないのが「失敗を避けることは、同時に成功を避けることでもある」ということです。

機会損失は、企業活動においては非難の対象になり難いものですが、実は、この「見えない失敗」を避けることが、もっとも大きな経済効果をもたらす可能性が高いと言っても過言ではありません。

チャレンジをしたければ、失敗は避けて通れません。失敗したくないからこそ、人は真剣に自分の道を選択し、万一、失敗した場合は、そこから多くのことを学べるのです。

ただし、気をつけなければいけないのが「致命傷となるような失敗」です。つまり、「自分が負いきれない失敗はしてはいけない」ということです。かつて、ユニクロの柳井正氏も「致命傷とならない限り失敗はしてもいい」と述べています。

私は、人が何か大きな成果を手に入れるためには、「自らの失敗に学ぶか?」もしくは「他人の失敗から学ぶか?」のいずれか、もしくは、両方しかないと考えています。だとしたら、同じ失敗をするにしても、なるべく「早く小さく失敗する」ことで自滅しないだけの気力を残しておき、その後の飛躍に繋げることが肝要ではないかと、逆説的に考えているのです。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は39万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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