相次ぐ商品・サービスの値上げ、これって良いこと?値下げが期待できるものはあるのか
このところ、値上げのニュースを度々聞くようになりました。ビール、納豆、ゆうパックからガリガリ君まで。この後も、値上げを予定している商品やサービスが続くようです。
値下げが期待できるものはなさそうなので、給料を上げることで対応したい
この事態に関して、今回のテーマは「値下げが期待できるものはあるのか?」ですが、答えは、残念ながら「ない」です。もちろん、なかには値下がりするものもあるかもしれませんが、今回の値上げの理由の多くは、宅配便に象徴されるような人手不足という、我が国の構造的な問題が大きな要因となっているため、これからは値上げが続くことになると考えられます。
ということで、ないものねだりはやめにして、物価と給料の関係を考えてみることにしましょう。何故って、物価が上がっても給料が上がれば問題ないのですから。
経済の仕組みからすれば、物価上がれば給料が上がる
物価と給料の関係を考えてみましょう。ごくザックリと・・・。
皆さんの多くは、会社からの給料で生活をされていると思いますが、その給与は会社の売上の中から支払われていますよね。売り上げが上がれば会社の利益が上がります。利益が上がれば、皆さんの給料が上がり、その給料で皆さんが商品を買えば、更に、会社の売上が増して、利益があがり、皆さんの給料が上がる・・・、という循環が生まれます。
商品やサービスが多く売れるということになれば、当然、価格が高くなり(値上がり)ます。ということは、お金の価値が相対的に下がるということなので、皆さんの労働の価値(給料)も高くなる(値上がり)ということなのです。
この「モノやサービスの価値に対してお金の価値が相対的に低くなる」(=物価が上がる)状態を好景気、反対に「モノやサービスの価値に対してお金の価値が相対的に高くなる」(=物価が下がる)状態を不景気といいます。
好景気の時は、お金の価値が下がるので、手元に置いておくよりもモノに変えてしまう(=消費)ほうが得なので、お金を使います。お金が世の中に多く出回って、経済活動が活発になるという訳です。(図-1)
現在起こっている、値上げラッシュ(?)は、この循環の始まりといえる現象で、人手不足をきっかけに景気の好循環が始まりつつあるといったところでしょう。
過去の景気と給料の関係(変化)を考察する
では景気と給料の関係は実際どうなっていたのか見てみましょう。景気の動向を直接表すといわれる(一致指数)有効求人倍率の動きと、消費者物価指数、給料の動きを示す現金支給額(毎月勤労統計調査)の変化を見てみましょう。(図-2)
バブル崩壊前年の1990年を100とした現金支給額と消費者物価が、なんとなく似たような動きで少しずつ上がっていくのがわかります。しかし、景気の波を示す有効求人倍率との関係があまりはっきりわかりません。
では、現金支給額と消費者物価の伸び率で見てみましょう。(図-3)
二つのグラフから、給料と物価が景気の波とほぼ連動して動いていて、バブル崩壊前後とリーマンショックの後は、伸びが鈍ったり、マイナスになったりすることはあっても、傾向としては伸び続けていることがわかると思います。
ただ、この動きが常に給料の上がり方の方が物価に先行して上がっていることが大事になってきます。給料が物価の後追いをすることになれば、生活は苦しいですから。
給料アップが、物価上昇に先行することが大事!後追いは負担感が増してしまう
では、この差(消費者物価-現金支給額の金額)と、有効求人倍率との関係を見てみましょう。(図-4)
こちらは、バブル崩壊が懸念され始めてから、リーマンショックまでの景気の下降局面では、物価の伸びが給料を上回る時期が長く続きました(この期間は、グローバル化の進展や非正規雇用の拡大によって、人件費を削減する時代が続きました。だから、給料が物価を後追いすることになって、生活が楽にならない状態が続いていたんですね。)。
しかし、リーマンショックを乗り越えるあたりから給料の伸びが物価を上回るようになってきていることがわかります。
物価が上がるというのは経済全体の流れからみると「良いこと」
この様に、物価が上がることは、経済全体の流れから見てみると、そんなに悪いことではなく、むしろ良いことだということがわかっていただけるかと思います。
特に人口が減少する我が国では、労動力確保や消費拡大の両面からも給料アップによって好景気を目指す必要があるのです。(グローバル化、外国人労働者などいろいろな問題は山積しているのも事実で、そんなに簡単ではありませんが・・・)
現状は、人手不足で、経営者も「利益を従業員に還元しなくてはならない」ということに(無理やり)気づかされたということでしょうが、いずれにしろ、物価の上昇と給料のアップが景気の好循環を作っていくのです。
景気は「気」プラス思考が大切です。
※一致指数:景気の動向とほぼ一致して変化するといわれる指数。有効求人倍率以外に、商業販売額、営業利益、大口電力使用量などがある。
注)図-2~4:政府統計(有効求人倍率、消費者物価指数、毎月勤労統計調査から筆者作成)
(岡部 眞明/経営コンサルタント)
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