『坂道のアポロン』“佐世保弁”指導の宝亀克寿さんに聞く「中川大志君は九州弁特有の開放感もマスターしていた」
TVアニメ化も大きな話題となった小玉ユキ先生原作の人気コミック『坂道のアポロン』が、知念侑李さん、中川大志さん、小松菜奈さんら豪華キャストを迎え、現在大ヒット上映中です。
昭和時代の長崎を舞台に、高校生たちがジャズに夢中になり、友情や恋愛、さまざまな苦難を乗り越えて成長してく姿が感動を呼ぶ本作ですが、とある演出にも注目が。中川大志さん、小松菜奈さんが発する”佐世保弁”に、ネット上で「小松菜奈の方言少女がかわいすぎた」「方言が自然で嬉しかった」「自分は長崎出身なので馴染み深い言葉が聞こえてきてほっとした」と好意的な意見が相次いでいるのです。
そんな彼らに方言指導という形で佐世保弁をレクチャーしたのは、声優や俳優、ナレーターとして活躍する宝亀克寿さん。海外ドラマの吹き替えや、人気アニメ『ONE PIECE』のジンベエ役でも知られるベテランです。本人も佐世保市出身で、アニメ版の『坂道のアポロン』に続き、今回映画版でも方言指導を担当。さらには本編に役者としても出演している宝亀さんに、本作での方言指導についてお話をうかがいました。
――方言指導というのは、具体的にどんな事を行うのでしょうか?
台本が出来上がっていく過程でその都度、台詞も佐世保弁に直していきます。決定台本が出来た段階で、各々の役の台詞を佐世保弁で録音し役者さんに渡します。役者さんの本読み、撮影現場で指導します。エキストラにも現場で適切な佐世保弁を選びます。最後に編集された映像を見ながら最終チェックするのが方言指導の一連の流れですね。
――今回映画『坂道のアポロン』の方言指導で工夫したこと、難しかったことを教えてください。
(作品の舞台となる)1966年頃と現在では、佐世保弁も時代の流れと共に変化しています。あまりにネイティブな佐世保弁は使えないので、なるべく日本中の人が聞いても解るように苦心しました。
小松菜奈さんが演じるヒロインの律ちゃんの語尾には気を付けました。現代っ子はテレビで標準語に慣れているせいか、コテコテの佐世保弁はほとんど忘れ去られているようでした。
――『坂道のアポロン』ではアニメ版、映画版と方言指導を担当されていますが、違いはありましたか?
映画の場合、何十人ものスタッフが動いているものですから、台詞一ヶ所の為、撮り直すのも辛い所ですが、最終判断は監督ですから(気になったところを)報告だけはします。アニメーションの場合は声だけのリテイクですから、比較的に時間をかけずに修正できます。役者に対するアドバイスは、映画もアニメーションも何ら変らず、納得する出来上がりでした。
――中川大志さん、小松菜奈さんへそれぞれ指導して、印象的だった事を教えてください。
顔合わせ、本読みが終わって、ビックリです!
決してオーバーでなく、大志君も菜奈ちゃんも相当に勉強して来た事がわかりました。特に大志君は、訛りのニュアンスと九州弁の持っている特有の開放感もマスターしていました。アニメ版とテープを相当に聞き込んできたんだろうなと思わせてくれました。乞うご期待!
――佐世保弁の特徴はどんなところにあらわれていると思いますか?佐世保弁ならではのルーツなどを教えてください。
佐世保弁の特徴は、語尾に「ばい」とか「けん」が付きます。「よかばい」「こがんしよった」「何も聞いとらんばい」等々。長崎弁と比較すると少し乱暴な気がします。
他県の人が男同士の会話を聞くと喧嘩しているように聞こえると、よく言われました。軍港が出来てからの街ですから、その歴史に関係あるのでしょうかね!
――今回映画にも出演されていますが、どのシーンにどんな役で登場していますか?現場はどんな雰囲気でしたか?
私の役は、千太郎が慕っている淳一(演:ディーン・フジオカ)の行きつけの外国人バーのマスター。昔、佐世保に「ダウンビート」というジャズバーがあり、撮影現場はその空気感を見事再現!「ダウンビート」のマスターは、私が遊びに行くとジャズの話をよくしてくれました。コーラを頼むとコークハイが出て来ました。役作りはマスターのおかげで、そのままです。
――ご自身で映画をご覧になっての感想、見どころをお願いいたします。
薫も千太郎も、母親の愛情を知らずに育った過去をお互いに知り、協会のオルガンの前に座っている二人の後ろ姿。千太郎がとある出来事で深く傷つき、薫の胸の中で号泣するシーン。涙腺を止められなかった。ラストで薫が自分の気持を素直に打ち開けるシーンは、何か心暖まる、これでいいんだと妙に納得してしまいました。
方言指導の先生が「相当に勉強して来たのだと思う」と感動した中川さんと小松さんの佐世保弁。映画の中ではストーリーや感動のセッションシーンと合わせて、見事な方言でのセリフまわしにもご注目を!
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(C)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C)2008 小玉ユキ/小学館
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