意外と知られていない「文章の書き方」2つの基本ポイント――山口拓朗の『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』

“文章による見える化時代”に求められる文章作成スキル

得意先に電話をしたら「その内容をメールでもいただけますか?」と言われた。上司に企画のアイデアを出したら「そのアイデアをA4一枚の企画書にまとめといて」と言われた。以前までは口約束が慣習化していたが「文面として残っていないのはマズイだろう」と、最近は書面でやりとりするようになった。

あなたも似たような経験をしたことがあるのではないでしょうか。このように、近年、文章で情報のやり取りをしたり、コミュニケーションを図ったりする機会が増えてきました。「文章に残すこと」や「文章で伝えること」の重要性が高まってきたのです。そんな“文章による見える化時代”のなかで、次のような悩みをもつ人が少なくありません。

・「文章を書くことがストレスです」

・「文章を書くことが苦手です」

・「文章を書くのに時間がかかりまくります」

・「支離滅裂な文章を書いてしまいます」

・「『この文章はどういう意味だ?』と上司に怒られます」

・「そもそも頭のなかにあることを、文章にすることができません」

このような悩みを抱えている人たちにとって一筋の光明となるのが、新刊『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』が話題を呼んでいる山口拓朗さんがお届けする短期連載です。報告書からメール、企画書、ブログまで、これまでの学校教育で“教わっていそうでいて、実は教わっていない「文章作成の基本」”を学んでいただきます。f:id:k_kushida:20180227204415j:plain

「文章力をつけたければ、とにかく量を書くしかありません」のウソ

スポーツ選手で「わたしはまったく基本を学んだことがありません」という人がいるでしょうか? 基本を教わらずにみるみる上達していく人は、(仮にいたとしても)ごくわずかでしょう。

たとえば、あなたが趣味でテニスを始めたとします。誰からも何も教わらなかった場合と、月に1度、コーチからアドバイスを受けるのとでは、1年後にうまくなっているのはどちらでしょうか? 答えは言わずもがなでしょう。コーチから教わるものは、おそらく「テニスの基本」ではないでしょうか。基本を身につけると、その後の上達が加速します。なかには、基本を身につけた瞬間からテニスがうまくなる人もいます。

ところが、こと「文章の書き方」に関しては、おかしなアドバイスがまかり通っています。「文章力をつけたければ、とにかく量を書くしかありません」と。この助言は極めて乱暴です。テニス初心者に「テニスがうまくなりたければ、とにかくラケットをたくさん振るしかありません」とアドバイスしているようなものです。テニスであれば、このアドバイスの“滑稽さ”に気づきますが、文章作成の場合は、なぜか“滑稽”だと思わずに納得してしまう人がいます。悩ましい現実です。

文章を上達するうえで大事なポイントは、「やみくもに書くこと」ではありません。基本を身につけたうえで量を書くことです。そこを間違えると、書けども書けども上達しないという“悪魔の無限ループ”に迷い込んでしまいます。

そこで、今日から数回に渡って、記者・ライター歴22年、現在は講師として「伝わる文章の書き方ノウハウ」を伝えている筆者が、「そもそも文章ってどう書けばいいんですか?」と頭を抱えている人たちへ向けて、文章の書き方の基本をお伝えしていきます。

「文章作成=書くこと」にあらず。4ステップで成り立っている!

まず押さえてもらいたのが「文章作成」とは「書く」という作業だけではない、ということです。少なくとも筆者のなかで「書くこと」に対する意識は3割程度しかもっていません。なぜなら、文章作成とは、「書く前の準備」から「書き終えたあとの推敲・直し」までを含む一連のプロセスをいうからです。

【文章作成の4ステップ】

ステップ1:情報を集める

ステップ2:書く前の準備をする

ステップ3:文章を書く

ステップ4:書いた文章を推敲・修正する

これが筆者の文章作成プロセスです。このステップを見れば、「書くこと」に対する意識が3割程度であることにも合点がいくのではないでしょうか。もちろん、それぞれのステップで押さえておくべき基本やノウハウがあります。しかし、それらに先んじて重要なことは、文章作成プロセスの全貌(4ステップ)を認識していることです。文章力アップを目指すうえで“欠かせない視点”といえるでしょう。

「うまい文章を書く人たち」に共通するポイントとは?

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ところで、そもそも「うまい文章」とは、どういう文章を指すのでしょうか。筆者は「うまい文章=目的を達成できる文章」と定義しています。

たとえば、取引先の人に何かお願いをするメールであれば、その人から快諾をもらうことが目的でしょう。あるいは、上司に提出する企画書であれば、上司から「この企画はすばらしい。実現に向けて前向きに検討していこう」とお墨付きをもらうことが目的ではないでしょうか。「うまい文章を書く人たち」は、文章を書いて、それらの目的を上手に達成していきます。

社会人が書く文章で「内容さえ理解してもらえばOK」というケースは、意外と少ないものです。多くの場合、文章を書く目的は、仕事をスムーズに進めるためのであり、もっと言えば、仕事で成果を出すためのものです。

お客様に営業メールを送るのは、自社商品・サービスを購入してもらうため、という目的があるからです。上司から「目的はとくにないけど、お客様にメールを書いておいて」と指示されたら、何をどう書けばいいのか……さっぱりわからないはずです。逆にいえば、あなたがスラスラと文章を書くためには、何はともあれ目的をはっきりさせる必要があります。

「文章を書くことが得意ではありません」は大きなリスク

さて、話をまとめましょう。あなたは文章作成プロセスの全貌(ステップ1〜4)が見えていますか? そしてもうひとつ。自分が書く文章の目的がわかっていますか? もしも、これらの質問に「イエス」と即答できないようであれば、今日からこの2点を徹底して意識する必要があります。脅かすわけではありませんが、この2点を意識することなく文章力アップを図ることは不可能です。

文章作成に必要なステップ1〜4の基本や、具体的なノウハウは、次回以降の記事でお伝えします。“文章による見える化時代”のなかで、「文章を書くことが苦手」な状態を放置しておくことは、大きなリスクです。どれだけすばらしい仕事をしても、そのことを文章でうまく伝えることができなければ、マイナスの評価を受けかねない時代だからです。あなたもぜひこの機会に「文章を書くことが苦手」から「文章を書くことが得意」へと変身しましょう。

著者:山口拓朗

『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』著者。

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伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』(日本実業出版社)のほか、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)他がある。

山口拓朗公式サイト

http://yamaguchi-takuro.com/

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