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「新人教育なんてしたくない!」と全社員10人に退職され、社長自ら出社拒否…挫折乗り越え会社が成長|株式会社Surpass

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「スキルアップって、一般的にはどういうもの?では、この会社でのスキルアップとはどういうもの?」

「お金で買えない価値には、どんなものがある?」

「生産性とはどういうこと?生産性と信頼の関係とは?」

「ITなどのテクノロジーは、人にどんな影響を与える?」

グループワークでそんな議論がなされているのは、株式会社Surpass(サーパス)で2カ月に一度行われる「Vision会議」。

社員全員が土曜日に集まり、1日かけてワークを行います。

「なぜ働くのか、仕事を通じてどんな価値を生み出したいのか、どんな自分になって、どんな未来を創っていくのか。一人ひとりがそんなテーマに向き合い、メンバー同士で共有するため、そして何よりも、各自がなんとなくで生きるのではなく『本質的な思考軸を身につけ、決断できる人財』になってほしいと行っています」

そう語るのは、代表取締役の石原亮子さん。過去には、組織づくりに失敗し、10人の社員をすべて失った経験があるそうです。その後、新入社員2人とともに3人で再スタートを切った際に始めたのが「Vision会議」。以来、事業が軌道に乗り、およそ3年で80人の組織へと成長を遂げています。

Vision会議の大切さに気付くまでの道のりと、その効果について、石原さんにお聴きしました。

会社を立ち上げるも「自分一人でやった方がマシ」という思考に…

石原さんは「営業」のプロフェッショナル。生命保険会社でトップセールスとなった後、さまざまな業種の営業を経験し、いずれも高い業績を挙げてきました。

その営業ノウハウを活かし、2008年、女性中心の営業アウトソーシング会社を設立。業種問わず、クライアント企業の営業活動を請け負う事業をスタートしました。

「最初は営業経験豊富な人材を中心に集めていました。でも、なぜかクライアント企業とのトラブルが重なり、『こんなことなら自分一人で営業するほうが楽だし稼げる』なんて思い始めていたんです。そんなとき、出入りしていた営業マン――今は当社の取締役を務めてくれていますが、彼から『石原さんには理念やビジョンがない。だからうまくいかない』と指摘されたんです」

その言葉に衝撃を受けた石原さんは、働く上での理念と「何を実現したいのか」を見つめ直しました。

そこで思い出したのが、生命保険会社時代に抱いていた気持ち。営業は数字のみで評価され、本当にお客様のことを真剣に考えている人であっても、数字で結果が出せなければ存在意義を否定され、職場を去っていく――そんな状況をもどかしく感じていたのです。

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人の役に立つこと、人を助けること、人を幸せにすることに喜びを感じられる人が、きちんとキャリアを築いていける会社にしたいと思いました。『給料の分だけ仕事をする』ではなく、お客様にいかに貢献するかを考え、実行し、成果を挙げることで収入も上げていく。そんな発想で行動できる組織を目指そうとしたんです」

そんな理念をベースに、石原さんは一から人材教育に乗り出しました。しかし、すでに自分の営業スタイルを確立していたメンバーたちは「教育される」ことも、これから入ってくる人材を「教育していく」ことにも反発。当時10人いたスタッフは全員辞めていきました。

「さすがに心が折れて、自分が出社拒否の状態に陥ってしまった」と当時を振り返る石原さん。それでも最後の賭けだと覚悟を決め、新卒2人を採用。その2人と石原さんの3人で「Vision会議」がスタートしました。

「以前は、メンバー同士の会議といえば営業戦略や数値目標のことばかりでした。でも、考え方を刷新してからは、『Why(なぜ)』を突き詰めるところから始めたんです。『なぜ仕事をするのか?』から、営業活動のさまざまな場面を想定して『こんなときにはどうするか。なぜそうするのか』と。私の経験や想いを伝えると同時に、本人たちからも『Why』を引き出しました。そうして、ビジネスパーソンとして、人として、自分が大切にしたいことを明確にし、その志を持って仕事に取り組むことで、2人は大きく成長してくれたのです」

「自分に向き合う」ワークに取り組む

2カ月に一度のペースで行うVision会議。4回目を迎えるころ、社員は15人になっていました。このとき、外部から人材育成のプロを顧問に迎え、体系立てたワークも取り入れるように。お互いの考えを伝えて共有するだけでなく、課題意識を持って行うようになったそうです。

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ワークの一例を挙げると…

●生い立ちワーク

相互理解を目的とし、各メンバーに自身の過去~現在の歩み、そしてこれからのビジョンを共有。普段は意識していない自分の考えや想いを深掘りすることで、自分のビジョンを見つめ直し、仲間との共通点も発見できる。

●「最強チーム」ワーク

そもそも「チームワーク」とは何なのかを深堀りし、今までなんとなく使ってきた言葉の意味を再定義し、共通認識(言語)を醸成。ワークを通して、ひとつの言葉について共に深く考え、アウトプットすることでチーム内でのコミュニケーションミスを減らしていくことが、「最強のチーム」の第一歩となる。

●「5年後の自分たちの像は」ワーク

会社で掲げたビジョンに対し、自分のキャリアビジョンはもちろん、ライフビジョンも明確に描いてみる。そのビジョンから逆算し、「今(今日)の自分は、どんな具体的な行動が必要なのか」「1年後はどうなっている必要があるのか」まで明確にして、実行可能なアクションプランまで落とし込む。

どんなテーマで取り組むかは、組織の状態によっても変えていくのだとか。理念とビジョンの共有ができた状態のときは「課題」に対して深掘りをしていきますが、1年間で社員が数十人増え、社員によって温度差がある状態となったときは、お互いが打ち解けることを目的に、エンターテインメント要素が高いワークを中心に行ったそうです。

なお、Vision会議には、入社を検討している人も参加。自分の価値観に合うかどうかを確かめられる場であるため、理念やビジョンに共感した人が入社を決断しています。これが風土の醸成にもつながっているようです。

固定観念から放たれ、安心して自分らしさを発揮できるように

こうしたグループワークを進めるにあたり、石原さんが意識しているのは「こうでなくてはいけない」と本人が無意識に縛られている固定観念から解き放つこと。

「子どものころから、女の子だから、とか、長女(長男)だから、とか、『それではダメ』『ちゃんとしなさい』という言葉を浴び続けている人もいます。いろんな方面からネガティブワードにさらされ、萎縮している人も多い。それって自分が立っている足場が狭くなっているのと同じ状況。そんな状況だと、普通は『落ちたらどうしよう』ばかり考えてしまいますよね。だからこそ今必要なのは『こうでもいいんだ』と、まずはその人自身に敬意を持ち、肯定型のコミュニケーションから足場を広げてあげること。そうすればジャンプだって回転だってできるようになりますから」

そしてもう一つの目的は「セキュアベース」を築くことだといいます。

セキュアベースとは、発達心理学における「安全基地」という概念。外の世界に出ていっても、安心して帰ってこられる場所、喜んで迎えられると確信できる場所を指します。

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発言が間違っていてもいい。考えを否定しない。ありのままをメンバー同士で共有することで、人間関係が深まります。誰かが発言したことに対し、言葉の表面だけを捉えるのではなく『この人がこういう言い方をするということは、こんな背景があるんだろうな』と、根っこの部分を理解して判断することもできるようになります。そうすれば、コミュニケーションのすれ違いも減る。会社やチームが、自分のことをわかってくれている、受け入れられていると感じられる場であるようにしたいですね。当社のメンバーは、普段はクライアント先に常駐していて、各地に散らばっているので、安心できるホームの存在は特に大切です」

グループワークでは、「信頼とは何によって積み重ねられるか」「生きる上で必要なスキルとは何か」など、「本質を捉える」ことを目的とした課題も多数。

メンバーたちが自分の経験や考えを語る中では、仕事においてまだ成果を挙げられていないメンバーの、内に秘めた強みが発見されることもあるといいます。

「仕事に自信を持てなくても、自分の本質が仲間に認められれば、自信がつきます。それによって仕事にも自信を持って取り組めるようになり、成果を出し始める人もいます」

自分に向き合うことで次のステップへ踏み出すことができ、「大切にしたいこと」をメンバー同士で共有することでチームワークが築かれる。それが、Surpassの成長の秘訣といえそうです。

株式会社Surpass(サーパス)

EDIT&WRITING:青木 典子 撮影:平山 諭

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