大企業と同じことをやっても意味がない。中小・ベンチャー企業に取材依頼が殺到する「勝ち筋」とは?
ベンチャー広報株式会社は、中小・ベンチャー企業に特化した広報・PR会社です。知名度が低い中小・ベンチャー企業こそ、経営戦略の一環として広報・PRが重要だという想いから設立し、一つひとつの会社にあったサービスを格安で提供しています。そんなベンチャー広報が本当に追求しているのは、社員の“幸せ”だったのです。
※本記事は、「PR Table」より転載・改編したものです。
世間を動かしているのは、マスコミではなく広報・PRだと知る
テレビや雑誌などのメディアは、あらゆる商品を様々なうたい文句で紹介しています。私たちの多くは、その情報を見て流行を知ったり購買意欲をそそられたりしているといえるでしょう。
ベンチャー広報の代表である野澤直人は、20代の頃、マスコミの世の中を動かす力や影響力に憧れ、ビジネス誌の編集の仕事をはじめました。そこでは、ベンチャー企業の経営者にインタビューを行なっており、会社には企業の広報担当やPR会社からの売り込み電話やプレスリリースが日々、送られてきていたのです。
野澤「この時、はじめて広報・PRの存在を知ったんです。それまでは、世の中を動かしているのはマスコミだと思っていたんですが、実はその裏にマスコミに影響力を与えている広報・PRが存在した。これは面白い!と思いましたね」
そして編集の仕事をはじめて3年が経ったころ、ちょうど次のステップに広報・PRを、と考えていた野澤にチャンスが巡ってきました。タイミングよく、知り合いだった留学関係のベンチャー企業の社長から「うちの会社、手伝ってよ」と誘われ、その会社で広報・PRの仕事をすることになったのです。
とはいえ、広報・PRの仕事ははじめて。担当者は社内に自分だけで、教えてくれる人もいません。そこで野澤は、本やセミナーを通し、独学で猛勉強に励みました。しかし、勉強してはじめて気づいたのは、世の中に出ている情報がどれも、すでに知名度がある大企業向けだということ。中小・ベンチャー企業に役立つ情報はほとんどなく、途方にくれました。
野澤「しょうがないから、自分で試行錯誤しながらノウハウをつくっていきました。そのノウハウをいまの仕事に活かしていますし、いまも日々試行錯誤してノウハウを増やしていっています」
溢れているノウハウは、たった1%の大企業のためのもの
▲2017年6月20日発売「逆襲の広報PR術」(野澤直人・著)
ベンチャー・中小企業の広報・PRは、大企業と同じことをやっても意味がありません。それは、そもそも広報・PRが担う役割が違うから。
大企業の広報は、「報道させない」のが仕事です。すでに知名度があるので、プレスリリースを一斉配信すれば当然のように取材依頼がきますし、なんなら、何も発信しなくても取材依頼がきます。広報担当は、その取材元である媒体と良好な関係を築き、不祥事を起こしてしまったときに、報道を最小限にしてもらうなどの「リスク管理」が一番の仕事なのです。
一方、ベンチャー・中小企業の広報は、「報道させる」のが仕事です。プレスリリースを一斉配信しても取材依頼がくる可能性は低く、何もしなければ取材依頼はほぼ100%きません。むしろ、プレスリリースを一斉配信することがマイナスになってしまうこともあるのです。
野澤「大事になってくるのは、マスコミの心理である『特ダネが欲しい』ということ。一斉配信のプレスリリースだと、すでにライバル会社も知っているオープン情報なので特ダネにはなりません。つまり、一斉配信されたプレスリリースはゴミとみなされてしまう。だったら、個別に情報を持って行って“特ダネ”にしてあげればいい」
これは、野澤自身の経験に基づいたことです。留学関係のベンチャー企業で広報・PRを担当していたころ、社長から「今度新しく出すプログラムを、日経新聞本誌の朝刊に載せたい」といわれました。当時は無名な企業なうえ、日経新聞に載ったことは一度もなかったとのこと。狂気の沙汰ともいえる相談です。
野澤は、どうすれば載せてもらえるのかを考え、まずは過去1年分の日経新聞をチェックし、留学関係の著名記事を調べました。すると、すべて同じ人が書いていることがわかったのです。
野澤「そのあとはもう簡単。日経新聞の企業報道部に電話して、その記事を書いた人につないでもらい、『あなたが書いた記事を読んで電話しました。もし留学関係にご興味あれば、当社が出す新しいプログラムについて相談させていただけますか』って。“もし”なんて言っていますが、この方が留学担当なのは確実で、興味があることはわかっていたんですけどね。で、本当に日経新聞本誌の朝刊に取り上げられた。これ、僕の自慢話です(笑)」
「これが勝ち筋だ!」と確信した野澤は、同じ手法をほかの媒体にも使いました。すると、当時20名くらいしか社員のいないベンチャー企業に、翌年からは年100件以上の取材依頼がくるようになったのです。
一方で野澤は、次のステップについても考えるようになりました。日本の企業の99%以上は中小・ベンチャーといわれているのに、その広報・PRのノウハウがほとんど世に出ていない。ということは、自分のように困っている人が多いということ。つまり、それをサービスとして提供すれば需要があるのではないか、と。
そんな想いを抱きながら、7年の間、実績を積み上げた野澤は、満を辞してベンチャー広報株式会社を立ち上げました。
3.11でクライアントがほぼゼロに。救いの手になったのはノウハウの開示
▲幼いころの野澤と、お父さん野澤はなぜ、ベンチャー・中小企業にこだわるのか。振り返ってみると、そこには野澤の父の姿がありました。
野澤の父は、町工場の経営者でした。大手電機企業の下請けの仕事をしており、社員は経営者である野澤の父だけで、あとはパートが10名のいわゆる零細企業。いつも汚れた作業服を着て汗を流しながら働いていました。
野澤「子どものころはそんな父が大嫌いでね。俺は大人になったらパリッとしたスーツを着てネクタイ締めて、大きな会社で働くんだ!って思っていました」
しかし、高校を卒業する頃に父がくも膜下出血で倒れ……。それを機に父のことを真剣に考えてみると、なんだかとても格好よく思えました。
長いものに巻かれるのではなく、起業家として、独立独歩で一国一城の主としてやってきたのが、今まで見てきた後ろ姿だったことをはじめて理解したのです。そんな父の影響もあってか、野澤は大学時代から「起業したい」という思いを抱くようになりました。
ベンチャー広報を起業したのは、2010年。リーマンショック直後のことでした。当時の景気はどん底。でも、良くいえば、これ以上景気が悪くならないということ。野澤はいまこそチャンスだと考えました。
ところが、クライアントが増えはじめていた1年後、さらなるショックが日本を襲います。2011年3月11日に起きた、そう、「東日本大震災」です。リーマンショック当時よりも景気が悪化し、抱えていたクライアントには軒並み契約を打ち切られ、収入はほぼゼロに。
野澤「これはどうにかしないといけないな、と。それまで知り合いの紹介などで仕事が入ってきていて、ほとんどプロモーション的なことをしてこなかったのですが、何かしないとって。で、考えた結果、ベンチャー・中小企業の広報について解説したメールマガジンをはじめることにしました。いまでいうコンテンツマーケティングですね」
その後、メールマガジンの購読者向けにセミナーを開催し、当日は無料個別相談も行ないました。すると、徐々にクライアントは増えていき、契約してくれたクライアントはサービスに満足してくれ、契約更新も増えていったのです。
社員が幸せになれば、クライアントが幸せになり、みんなが幸せになる
▲代表取締役 野澤とメンバーいま、ベンチャー広報の社員は10名程度で、1人あたり3〜4社のクライアントを担当しています。2人1組のチーム制を採用し、クライアントは個別に担当していますが、お互いの情報を共有し、いつでも相談できる環境。
広報・PRの仕事は、基本的にパソコンと電話さえあれば、どこでもできるもの。なので、月に1度30分間の全体ミーティングのとき以外は出社しなくてOKというスタイルです。
ただひとつだけ、野澤が私たちにいつもいっているのは、「お客様の満足度を最高に高めてね」ということ。そうすれば、クライアントはサービスに満足してくれるはずですし、契約も更新してくれます。
ある時、シリコンでできた調理器具のメーカーから「新規事業でスタートしたが、広告に使える経費がほとんどないので、マスコミの取材に頼りたい」という依頼がきました。
野澤は、「どうしたらお客様の満足度を最高に高められるか」を考え、取り上げてもらいたいのは調理器具であることから、主婦向けの雑誌やWeb媒体、新聞の家庭生活面に個別でアタックをかけました。
すると、約半年という短い期間で、テレビなどのメディアに数多く取り上げられ、どんどん売れていったのです。しかし、肝心のメーカーは5,000個しか商品を製造しておらず、あっという間に在庫切れ。まさに嬉しい悲鳴でした。
野澤「メーカーは、流通である小売店などから『お客様がこんなに買いたいっていっているのに、なんでもう在庫ないんですか!』って怒られるっていう(笑)。で、今度はメディアが“入荷待ちのなかなか手に入らない商品”として報道するんですよ。ただ単に予算の関係でつくっていなかったのに(笑)。それでさらに注目される。これは、広報冥利に尽きますよね」
このように結果を伴ったサービスを格安で提供できる秘訣こそが、「出社しなくてOK」というスタイルです。出社義務がないということは、オフィスが必要ないということ。つまり、家賃(固定費)を削減できるので、その分サービス料金を安く設定できます。
野澤「このシステムは、“幸せ”を追求した結果です。出社しなくてOKなど、働き方を自由にすることで社員は幸せになりますし、社員が幸せであれば仕事に意欲が出て、サービスのクオリティが上がります。すると、クライアントも幸せになります」
いま私たちは、いくつもの中小・ベンチャー企業を広報・PRの力で応援しています。彼らが世の中から注目されていく手助けができれば、きっと日本経済の活性化にも繋がるはず。そんな理想を持ちながら、みんなが幸せになるいいサイクルをつくっていきたいと考えています。
会社説明会では語られない“ストーリー“が集まる場所「PR Table」
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