真の賢者は1位を目指すのではなく、1位になれる分野で勝負をする!ーー『マネーの拳』に学ぶビジネス格言
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。三田紀房先生の『マネーの拳』、第9回目をご紹介します。
『マネーの拳』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
ここでは、私がオススメする名作マンガの一コマを取り上げます。これによって名作の理解を深め、明日のビジネスに生かしていただくことが目的です。マンガを読むことによって気分転換をはかりながら、同時にビジネスセンスも磨くことができる。名作マンガは、まさに一石二鳥のスグレモノなのです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「業種なんて関係ない。まずはその世界で一番になることだ」(『マネーの拳』第2巻 Round.12より)
地元・秋田の高校を中退した花岡拳(はなおかけん)は、友だちの木村ノブオとともに上京。花岡は、偶然始めたボクシングによって才能が開花し、世界チャンピオンにまで上り詰めます。
その後、ボクシングを引退した花岡は、タレント活動をしながら居酒屋を開業しますが、経営は思うようにいきません。そんな時に知り合ったのが、通信教育業界の成功者・塚原為之介会長でした。花岡は会長の教えを受けながら、ビジネスの世界でも頂点を目指すべく、新しいビジネスをスタートさせますが…。
「他人が参入したがらない市場」こそ狙い目
塚原会長から出資を受けた1億円を元手に、ビジネスでも頂点を目指す花岡。しかし、西野から引き継いだ工場は零細で、従業員16名の小さな会社に過ぎません。特にアパレルは海外からの攻勢が厳しく、価格では太刀打ちできないのが実情です。
「生産現場はどこもだいたい自転車操業で、後継者がいないのが悩み」だと説明する西野。しかし、それを聞いた花岡は、かえって「若者にとって魅力のない業界ということは、ライバルがそれだけ少ないということではないか」と考えます。
花岡から話を聞いた塚原会長は、「業種も景気も商品の売れ行きとは関係がない。肝心なのは企画力ーー人々が求めているものを作れるかどうかだけだ」と言います。「どの業界を選ぼうと、すべてはそこで一位になってからだ」とアドバイスするのでした。
©三田紀房/コルク
日本のモノづくりの現場で起きている危機的状況
“モノづくり”は、日本経済の中核をなす重要な産業です。ところが今、その多くが引き継ぐ人もなく、危機に瀕しています。
2015年、中小企業経営者の中でもっとも数が多かった年齢は66歳でしたが、その方々も2020年ころを境に大量に引退すると見られています。2016年の調査によると、60歳以上の経営者のうち、50%超の人が「廃業を予定している」と回答しています。
現在、日本にある企業の99.7%が中小企業であり、雇用の約7割を担っています。これまで日本の経済と雇用を支えてきた中小企業の多くが、人的資源を理由に事業の継続を断念せざるを得ない状況に置かれている、という現実を、これをお読みの皆さんにも、ぜひ知っていただきたいと思います。
「一番になることの意味」とは、シェア一位を獲得すること
多くの人が「競争が厳しい」と考えているアパレルに、逆に勝機を見出した花岡ですが、塚原会長はなぜ、「一番になれ」と言ったのでしょうか?考えられる理由の一つに「市場の占有率」が挙げられるでしょう。
かつて、GEの伝説的名経営者だったジャック・ウェルチ氏が提唱したのが「ナンバーワン、ナンバーツー戦略」です。それは「自社がナンバーワンかナンバーツーになれる事業以外は撤退し、経営資源を一番と二番に集中させる」というものでした。この「選択と集中」の結果、同社は強い企業に生まれ変わりました。
もともと、企業間競争とはシェアの獲得競争です。シェア一位を獲得できれば、規模を生かしたコスト競争力や利益の確保、知名度の上でも優位に立てるなど、さまざまなメリットがあります。元来、弱者がシェアを占有する方法とは、基本的に「人より早く参入する」か「自ら新しい市場をつくるか」のどちらかしかありません。これは、主にベンチャー企業がよく使う手法です。
一般に、人は人気のある業界を好みます。「他人が希望する業界」「なりたがる職業」「入りたがる会社」等々。しかしそういうところには、当然ながらライバルも大勢ひしめいています。そこで一位になるには、まずは強力なライバルとの競争に勝たなくてはなりません。
結局のところ、人々が行列をつくるような“花形部門”は、それだけすでに広く認知されているということです。つまり「人が殺到するような市場」となった時点で、すでに競争過多に陥っている、とも言えるのです。
もっとも、私個人的には、レッドオーシャンと言われる成熟市場において新しい視点で商売する方法が、どちらかというと好みです。
競争と戦略は、市場規模と競合相手との兼ね合いで決まるので、必ずしもどちらが良いということではないのですが、今回の趣旨とは少しそれますので、この辺りの話はまたいずれ。
一位になるコツは「範囲を絞ること」
現実問題として、一位を取るのはかなり難しいでしょう。そういう時に有効なのが、「範囲を絞る」という方法です。「日本一」はムリでも「都道府県一」「市内一」等々。範囲とは、必ずしも場所のこととは限りません。「商品の範囲を絞る」「時間帯を絞る」など、「比較対象となる条件を絞る」ということです。
たとえば、世の中にラーメン屋は星の数ほどあります。しかし、その中でも「メンマラーメンの専門店」とか「サンマーメンの専門店」などと範囲を絞れば、その中で一位になることは比較的楽になるでしょう。その品目だけに力を入れているところは少ないからです。このように、何かを絞ることによって比較対象が減り、さらにそれを極めれば、「その道の専門家」と認知されることも夢ではありません。これはちょうど、検索エンジンで「どのキーワードを入れたら、あなたは上位表示されるのか?」というニュアンスです。
花岡も、商品を絞って厳しいアパレル業界に打って出ることになります。花岡は一体、どの商材でビジネスの頂点を目指すのでしょうか?今後の展開からも目が離せませんね。
俣野成敏(またの・なるとし)
大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が13刷となっている。著作累計は38万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。
俣野成敏 公式サイト
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