働いても、働かなくても「罪悪感」がある女性たちへ|川崎貴子の「働く女性相談室」

「働く女性の成功、成長、幸せのサポート」という理念のもと、キャリア支援やコンサルティング、結婚コンサルタントなど、幅広い領域で活躍されている川崎貴子さん。その経験と、女性経営者ならではの視点から、のべ1万人以上の女性にアドバイスをしてきた川崎さんが、「“働く女性”に立ちはだかるさまざまなお悩み」に、厳しくも温かくお答えするこのコーナー

第九弾は、「女性が感じる罪悪感、どうしたらいい?」というご相談です。

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<今回の相談内容>

ただいま育休中で、春には仕事復帰します。0歳の子どもと一緒に過ごすのも残りわずかとなり、周りのママ友やワーママの先輩たちと仕事の話をするようになりました。すると、仕事を辞めた専業主婦のママ友は「働いていない事に罪悪感がある」と言い、ワーママの先輩は「親には小さい子どもを保育園に預けるのはかわいそうと言われ、職場では時短なので周りに謝りながらの日々で、割り切れない気持ちがある」と言います。仕事をしてもしなくても、女性が罪悪感を感じるのは、とても生きにくい社会だと感じました。どういう気持ちでいたら前向きになれるのでしょうか?

(31歳 育休中)

<回答>

私がカウセリングしている女性たちも、皆さんそれぞれの立場で同じ悩みを抱えている事が多く、今回のご相談には「本当よねぇ」と大いに共感してしまいました。

バリバリ仕事をしていても、育休中でも、専業主婦でも、仕事と育児を両立していても、皆同じように「罪悪感」を抱えている社会は、確かに健全ではないと私も思います。

より多様な生き方や働き方を容認する社会にしようという動きは確かにありますが、浸透するには時間がかかります。

何より、ルールができようが、モデルケースがたくさん現れようが、私たち自身が変化できなければ「罪悪感」は消える事なく、私たち個人の生活に悪影響を及ぼします。

罪悪感の悪影響とは

罪悪感を抱いている人を極端な例で表すと、罪を犯した人です。

「私は罪を犯している訳ではない!」と思われるかもしれませんが、罪悪感の本質を捉えるために想像してみてください。

「今のところ誰にもバレてはいないけれど、自分は罪を犯した。いつバレるのか?と思い悩む日々。時効までの15年間、仕事に身が入りますか?心から笑えますか?新しいチャレンジ、新しい友人を作れますか?ご飯はおいしいでしょうか?目の前にいる人を目いっぱい愛せますか?」

私達が抱きがちな罪悪感はもっとうっすらした軽いものだけれど、抱えている限り幸せから遠ざかるのは一緒です。罪悪感を後生大事にとっていると、極端な話、

「仕事に身が入らず、心から笑えず、新しいチャレンジをせず、新しい友人を作らず、ご飯をおいしく感じず、目の前にいる人を目いっぱい愛せない」のです。

さて、そんなやっかいな感情である「罪悪感」はどうして生まれるのでしょうか?

どうして男性に比べて女性の方がそれをより感じてしまうのでしょうか?

現代女性にのしかかるバイアス

女性達の罪悪感は、「本当は○○しなければいけないのに、できていない」という内容がほとんど。

誰かに何を言われたわけではなく、周囲を見渡して自身でジャッジしているのです。

その背景には、世間や親の価値観を受け入れたものや、何より自分自身の「強固な思い込み」があります。

・女性は結婚、出産するべき

・女性は子どもをメインで育てるべき

・3歳までは母親がべったり子育てをするべき

・これからの女性は出世するべき

・忙しくてもお化粧はするべき

・ご飯は手作りするべき、家はきれいにしておくべき

・妻であり、母であり、女としてもキラキラしているべき

・男を立てるべき

・仕事と家事育児はちゃんと両立すべき

などなど、他にもたくさんありますが、上記だけでも一人の女性に詰め込むにはビリーミリガン並みに違う人格が必要です。

たまに、全部やっているようなスーパーウーマンがいたりしますが、皆、裏ではお手伝いさんや祖父、祖母など助けてくれる人がいるもの。本当にすべてご自身でやっていたとしても、確実に魂を削っているのでお勧めできません。

また「私は心から○○したい」ならともかく、「~するべき」なんて事、一つもないのです。この「すべき項目」の多さが女性たちに罪悪感を抱かせる元凶になります。

男性は、仕事以外のライフスタイルにおいて、この「すべき項目」が少ないし、情報をわざわざ取りにいきません。それよりも、「とにかく稼いでいればOK!」とか「休日に子育てすればOK!」とか、少し頑張ると「俺いい夫だな~」という肯定感につながりやすい。

わざわざ、子育てしている高収入男性(イケメン)のブログを見にいって

「俺は彼ほど稼いでないし、彼ほどかっこよくないし、彼ほど子育ても家事もできてない…。罪悪感を感じる…。」

なんていう男性にお目にかかった事、私はありません。

(男性は男性で、生き方の多様性が少ない分ツライ訳ですがそれはまた別の機会に)

柔軟な覚悟を持って生きよう

私は長女出産後、一カ月で職場復帰しました。

会社を大きくしている時期だった事もあり、ベビーシッター2名、実母、実妹、夫と私の6名体制でシフトを組んで子育てに当たりました。

「私が仕事を頑張る事は娘にとってもプラスになるはずだ」という信念を持ってやっていましたが、当時の長女は具合が悪くなると私から離れず、そんな長女をシッターさんに預けて逃げるように家を出たりする時は、何度も信念がぐらつきそうになったものです。

私が子どものころに具合が悪くなった時は、専業主婦だった実母がいつもついていてくれていたからです。

諸々割り切るのが得意な私ですら、そんな罪悪感をうっすら抱えてきましたが、当時赤ちゃんだった長女はもう中学生。

「ママ、いつも頑張って働いてくれてありがとう」と言ってくれるぐらい色々解るようになり、私の場合、仕事を辞めないで良かった事、時はあっという間に経つという事を、今、しみじみと感じ入っています。

また、立場は私とは真逆ですが、SNSで流れてきた専業主婦らしきお母さんの詩が私は忘れられません。「子どもを得て、母になって日常を過ごす中で、皆、失くした非日常(自由やおしゃれや仕事など)にフォーカスして嘆くが、違う」という内容でした。

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子どもといられる今が非日常なのだと。そして、将来子どもたちが旅立ったらきっと寂しいだろうと綴られています。

だから、忘れるものか、と。子どもたちの笑顔も、子育てで見えるすべての景色をも目に焼き付け、母として今を目いっぱい生きるんだ、と。

覚悟に満ちた詩でした。彼女の思いと生きざまが迫ってきて、電車で読んでいたのに思わず落涙してしまった事を覚えています。

私たちは、たった一人の人生しか歩めません。

でも一人分だからこそ、今生この人生を味わいつくす事ができるのではないでしょうか?

世間や親からの刷り込みや、自分の思い込みを見直し、余計な罪悪感や偏見を排除し、「本当はどう生きたいか」に注力する事。

間違えたり事情が変わったら、調整したり変化すればいいのです。

女性たちが前向きな人生を送るためには、

女性たち一人ひとりが、柔軟に、覚悟を持って「今を生きる」事が大切なのだと、私は思います。

回答者:川崎貴子

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リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。

1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。

→川崎 貴子氏の記事一覧

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