テリー伊藤がロールスロイス シルバークラウドI を前に、理想の車選びを語る

▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!

▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!

いくつになってもこだわりを捨てない“ダンディズム”

今回は、「ヴィンテージ湘南」で出合ったロールスロイス シルバークラウドIについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。

~語り:テリー伊藤~

今回お邪魔したお店には、売り物として整備している車以外に、お客さんから預かっている車も所狭しと並んでいました。僕が好きなロールスロイスもたくさんある。中にはコーチビルダーが手掛けた珍しいものもありました。

ロールスロイスは存在自体がファンタジーです。例えるなら空飛ぶ宇宙船、あるいはメリーゴーラウンド。現実感、生活感がまったくないですからね。

ロールスロイス シルバークラウドI(Photo:柳田由人) ロールスロイス シルバークラウドI(Photo:柳田由人) ロールスロイス シルバークラウドI(Photo:柳田由人)

実は僕もかつてシルバーシャドウを持っていたことがありますが、乗るのは非日常を味わいたい特別な日でした。もちろん僕は自分で運転していましたが、実際に乗ってわかったのは、ロールスロイスは馬車だということ。

馬車に、「ひく馬」とその馬の「世話をする人」がいるように、あるいは広くてキレイな「庭」に手入れをする「庭師」がいるように、ロールスロイスも、「車を管理し日々手入れする人」がいてこそのものだと感じました。

もちろん僕にはそんな生活はできません。だから自分で維持できるロールスロイスを手に入れて、優雅な気分に浸るというコスプレを楽しみました。

ロールスロイス シルバークラウドI(Photo:柳田由人)

最近では大人でも、週末に回転寿司や食べ放題の焼肉に行ってしまう。かつてはみんなが遥か上を見て前に進んでいたはずなのに、気づいたら目の前の楽なところがゴールになっているんです。

僕くらいの年齢の車好きも「いつかはクラウン」と夢を見ていたはず。

ところが最近はその夢を忘れて「軽でいいかな」「ハイブリッドでいいかな」と妥協している人が増えていて寂しく思っています。ゴールのテープが見えているのに「まあいいか」と歩き出しちゃうんですね。

白洲次郎は留学先でブガッティに乗り、70歳を過ぎてなおポルシェを乗り回していました。そんなダンディズムに多くの人が惹かれているのは言うまでもありません。

ロールスロイスはさすがに大げさですが、自分のこだわり、好きなことを最後まで貫くのも大切なことだと思います。カーセンサーエッジを読んでいるような車が好きな人には、車の世界で自分の意地を貫いてほしいですね。

ロールスロイス シルバークラウドI(Photo:柳田由人)

テリー伊藤なら、こう乗る!

僕は車が大好きです。最後まで楽しい車、面白い車に乗って、車好きを貫きたい。

もし僕が今の年でこんなロールスロイスに乗るなら、真っ先に目立つことを考えますね。

所有する目的は、「一年で最も大切な日を思い切りゴージャスに楽しむ」。これ以外に考えられません。洋服にもこだわって、大切な人と大切な日を特別な時間にするのに、これ以上の演出はないでしょう。

もちろん僕がこれに乗っても貴族の生活はできないし、そもそもこの車が似合うどころか、止められる家に住むことすら難しい。仮に買ったとしても、家に帰るたびにむなしい思いをするかもしれない。

それでも、特別な一日を盛り上げてくれる車選びは諦めたくありません。

ロールスロイス シルバークラウドI(Photo:柳田由人) ▲作りが細かいですよね~

▲作りが細かいですよね~

多くの人は車を選ぶときに1台ですべてを満たそうと考えます。

普段の買い物に便利で、ゴルフバッグが4つ積めて、燃費がよくて、遠出をするのも楽。中には年に一度必要になるかもわからないのにキャンプに行くときの道具がすべて積めて、雪道でも大丈夫な4WDを選んでみたり……。

1台の車に多くのことを望めば望むほど、車選びは無難でつまらないものになります。

「うちは複数台所有はできないから仕方ない」という人もいるでしょう。でもたった1台を選ぶときも「特別な一日」のことを想像してみると、車選びは今までとは全然違う楽しさが見いだせるはずです。

ロールスロイス シルバークラウドI(Photo:柳田由人)

もうひとつ、僕がシルバークラウドを手に入れるなら自分で運転したい。

だってこんなすごい車、人に運転してもらうなんてつまらないじゃないですか。こういう車だからこそ自分でステアリングを握ることを想像するのが楽しいんですよ。

▲何歳になっても遥か上を見る。そんな気概をもって生きたいですね

▲何歳になっても遥か上を見る。そんな気概をもって生きたいですね

ロールスロイス シルバークラウドI

1955年から1965年の間に生産されたロールスロイスの名車。1959年にシルバークラウドII、1962年にシルバークラウドIIIへと進化。車両はフリーストーン&ウェッブというコーチビルダーが架装した車両となる

※記事に登場する車両はオーナー車であり、参考モデルになります

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■ テリー伊藤(演出家)

1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『ビビット』(TBS系/毎週木曜金曜8:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。単行本『オレとテレビと片腕少女』(角川書店)が発売中。現在は多忙な仕事の合間に慶應義塾大学院で人間心理を学んでいる。

text/高橋満(BRIDGE MAN)

photo/柳田由人

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