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「何をしているかわからない人」がたくさんいる。それが大事なワケ|革命を起こすチームの作り方【前編】

職場の悩みで上位になるのが「人間関係」。どんな仕事でも一人では進めるのは難しく、常に社内外の人たちと良い関係を保っていかなければいけません。個性豊かなメンバーをまとめるとなったら、その苦労もひとしおのはず。でもNECソリューションイノベータ株式会社 イノベーション戦略本部長 八尋美徳さんは「どんな現場でも人の組み合わせを工夫することが重要」といいます。

ハッカソン(一定期間集中してプログラムやサービスの開発を行うイベント)の運営で「場の一体感を作る仕事」をしている羽渕彰博(ハブチン)さんは、八尋さんのチームのマネジメント法を知って「これはみんなが使える!」と思い、今回詳しく聞いてみることにしました。これまでの組織論とは違う新しい“チームの作り方”について、2回に分けて紹介します。

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八尋美徳さん(右)

1963年福岡県生まれ。1985年九州日本電気ソフトウェア株式会社に入社、地元企業や自治体と一緒にIT関連のオープンソリューションを提案、実施。事業企画部や生産革新推進室などを経験したのち、2014年に自社を含めたNEC子会社7社がNECソリューションイノベータ株式会社として統合。2016年4月にイノベーション戦略本部長となると同時に東京本社勤務に。社会課題を解決できる新ビジネスを創出するため、部門を率いている。

羽渕彰博(ハブチン)さん(左)

1986年大阪府生まれ。2008年パソナキャリア入社後は自社新規事業立ち上げに従事しつつ、アイディアを短時間で具現化する「アイディアソン・ハッカソン」のファシリテーターとしても活躍。2016年4月に独立し株式会社オムスビを設立した。復興庁が取り組む「共創力で進む東北プロジェクト」にも参加し、人と人をつなぐ活動に注力している。

イノベーションで、環境変化に耐える力をつける

ハブチンさん 八尋さんとは、復興庁が中心に行っている「共創力で進む東北プロジェクト」のイベントでご縁ができました。いろんな人がアイディアを出し合ってオープンにイノベーションを起こすアイディアソンやハッカソンに僕が参加して。

八尋さん 弊社が事務局になっているので、そのときが初めてでしたね。以前から「ハッカソン芸人」という面白い人がいるとは聞いていて、お会いして「ああ、この領域を仕事にする人がいるんだ」と感心したんですよ。

ハブチンさん ありがとうございます。ちゃんとお話ししたのが飲み会だったと思うんですけど、そのとき八尋さんが話してくださったマネジメントの内容がめっちゃ面白かったんです。

組織には必ず「ビジョンを描く人」と「形にまとめる人」がいて、それを「CEO(最高経営責任者)っぽい人」と「COO(最高執行責任者)っぽい人」と定義する。一人が両方の性質を担うより、役割分担を意識してチームとして組ませたほうが成長できるんだといわれた。その発想にすごく感銘を受けました。みんな頑張って両方をやろうとするじゃないですか。でもそうじゃないよ、と。

八尋さん 自分にとっては特別な話とは思っていなくて、今回のインタビューの依頼は少しびっくりしました。

ハブチンさん 八尋さんの名刺を見ると会社名にも「イノベータ」があるし、役職名は「イノベーション戦略本部長」です。部下の方々もイベントでご一緒するんですけど、皆さんパワフルで個性が強い。その中で「こうやってチーム作りをするといい」というご自分の解答を持っていらっしゃることにとても興味を持ったんです。イノベーションというと意味が非常に広いのですが、会社ではどんなミッションがあるんですか。

八尋さん 新事業・ビジネスの創出を狙って組織を作っています。当部とは別に、イノベーションラボラトリというR&Dの組織もあって、ここで基礎研究などを行い、生まれた技術を使って新しい事業につなげていく。私たち「NECソリューションイノベータ」は“社会課題解決のために何ができるか”を常に考えて実践する企業なんです。

もちろん技術軸からイノベーションを起こす方法もありますし、ITが届かなかったところにITを持ち込んで新しいマーケットを創出するほか、配車サービスの「Uber」や民泊の「Airbnb」のように新しい発想をモデル化することも仕事です。その一環として、ハブチンさんと出会ったハッカソンや全国のイベントがあります。

ハブチンさん 今までは仕様通りに作る受託だったのが、お客様と対話しながら新しいモデルを作るほうへシフトしているんですね。たしかに僕が参加するイベントでも情報システム業界が変わり始めているのを感じます。

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八尋さん ずっと同質のところにいると環境変化に耐えられなくなる。そこで変えなきゃいけないというのが「イノベーション」の一つの意味だと思います。ずっと受託型のままでは世の中の流れが変わったとき切り替えるのは難しいでしょう。切り替えるとしても、今までの延長である「改善」はできても画期的な「改革」は難しい。

社内で革命を起こす一番の方法は同質の中に異質を入れることだと思います。異質とぶつかって新しい考えや発想が生まれ、今までにないような環境変化への耐性ができる。企業の場合は、既存の技術や方法と創出した新しい技術や方法を組み合わせて、初めて多様性が持てると思うんですよ。新しいものだけで成長するのではなく、既存と組み合わせることでも変わることはできます。

異質を意識して混ぜる、社外からでも構わない

ハブチンさん 僕はそこで必要な「異質」として呼ばれているわけですね。業界未経験の僕がインフラや銀行のワークショップに行く理由はそこにあると。

八尋さん そうですね。本当はそれが企業の中でできればいいんです。でも企業だとみんな同じ軸を持った同心円を目指して、ある人は「大きい」、ある人は「小さい」という比較になりがちです。できれば小さくても違う場所に軸を持った円を混ぜて、それを含んだ大きなフィールドで考えられる環境にしたい。「あの人は何をしているかわからない」という人がたくさんいるとフィールドは一気に広がります。今は社外からハブチンさんのように異質な円を取り込みつつ、社内でも既存に囚われず違う軸を持てる人材を育てている段階です。

ハブチンさん 最初に出た「CEO型」「COO型」でいうと「CEO型」の人を増やしたいということですか。以前お会いした八尋さんの部下の方についても、皆さんフットワークが軽くてめっちゃ驚きます。失礼なんですが「ずっと外に出ていて、社内からは何をしているかわからないだろうな」と思うことがよくあります。

八尋さん 特に共創や地方創生関連活動の場面では、そういう人材が活躍できるように、とは意識しています。私たちの組織はまだ何をしているのか知られていない部分もあって、まず課題解決につながる人たちとのネットワーキングを先に行う必要があると思っています。物売りではなくて一緒に解決したいと思っていることを伝え、信頼関係を築いて初めて「それなら私たちにはこんな技術があります」と提案できるからです。でもひょっとしたら、自社技術でなくても別の良いツールを組み合わせて課題解決ができるかもしれません。その発想も含めて社内外で旗を振ることができるCEO型の人材は非常に重要です。

ハブチンさん 外でどんどん機会を作って信頼関係を築くCEO型人材は、八尋さんが社内で探し出されたんですか。それとも異動で来た方を育てられたのか。

八尋さん 見つけた、かもしれないですね。社内でこういう人がいるらしいと聞いて「やってみないか」と声をかけました。受託型の仕事だと、組織の中で「あの人はいつも言いっぱなしだ」とか「いつも大きな話をする」という評価があると「一緒に仕事をするのはちょっと」と思われてしまいます。その評価のために、せっかく能力があるのに重要な仕事を任されない人材がいる。でもネットワーキング活動なら後々の組み立てより「誰と何をするか、そのために誰と話すか」に対してセンスと行動力があるタイプが生きます。

実際に当部門で活躍しているメンバーは、ブルドーザーのようにいろんなところへ行って人脈を広げて、キュレーションしながらコラボを考えることをやってくれます。彼らはCEO型であってCOO型ではありません。だから「あなたがそう言ったんだからちゃんと実現しなさい」というのを任せようとすると、うまく回らなくなる。組織では「その人に任せるとあとが大変」という表現でくすぶってしまう。

ハブチンさん そこで、チームにプランを実行できるCOO型の人材が必要なんですね。

八尋さん そうなんですよ。旗を振ってビジョンを立ち上げた人をサポートして、きちんとマネジメントできる人も必要。CEO型とCOO型は、お互いを補う存在として一緒に活動してもらえばいいんです。

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ハブチンさん 僕、それを聞いてすごくホッとしたんですよね。たぶん僕はCEO型なんですけど、仕事ではCOO型の作業もしなきゃいけない。でも「これは得意な人に任せて一緒にやればいいんだ」とわかってから気持ちが楽になったんです。分業してからはパフォーマンスが良くなって、苦手な作業も効率化できました。これって大小に関わらずどんな組織でも応用できるじゃないですか。だから八尋さんのこの話はぜひみんなに知ってほしいと思ったんです。

イノベーションには多様な人材の混ざり合いが不可欠。集まったメンバーを組織としてまとめるには「CEO型」と「COO型」の役割分担がコツだといいます。後編では異なる役割を意識させた組織の効果と、マインドの保ち方、職場への応用方法をお聞きします。

インタビュー・文:丘村 奈央子 撮影:竹内けい子

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