AIによるマンション推定価格「必要だと思う」が7割。そもそもAIとリアル査定はどう違う?
医療や犯罪捜査、将棋の世界に至るまでAI(人工知能)が活躍する昨今。大京穴吹不動産が、分譲マンションオーナーに対して、「AI推定価格に関する意識調査」を実施した。結果を詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「AI推定価格に関する意識調査」を実施/大京穴吹不動産
AI推定価格の公開サービスは、「迅速で容易に価格を把握できるので必要」が大勢
「AI推定価格」とは、“地域特性や経済指標、最新の不動産市場情報を含む売買履歴情報や賃貸情報などをベースにしたビッグデータを、AIが日々学習し、既存マンションの現在の市場価格をリアルタイムに算出するもの”。
AIが売買価格などを推定するサービスを「知っていた」(よく知っている5%+知っている19%)のは24%。知っている人で「利用したことがある」のは16%だった。調査対象は、千代田区、中央区、港区、江東区などマンションの売買や賃貸が活発な10区にマンションを所有している人なのだが、それでもAI推定価格の認知度はまだ高いとはいえない。
ただし、「AI推定価格をインターネットで公開するようなサービス」は必要だと思う(とても思う23%+思う48%)人は71%もいた。必要だと思う理由として最も多かったのは、「迅速かつ容易に価格を把握したいから」だ(画像1)。【画像1】「AI推定価格」のインターネット公開サービスが必要であると「思う」と回答した人の理由(出典:大京穴吹不動産「AI推定価格に関する意識調査」より転載)
たしかに、自分のマンションがいくらで売れそうか、いくらで貸せそうかといった価格価値をインターネットで簡単に把握できるなら便利だろう。売るのと貸すのとどちらがよいか、売るならいつがよいかを検討する判断材料にもなる。
一方で、必要だと思わない(全く思わない1%+あまり思わない3%)人の理由はと言えば、「AIによる推定価格と実際の取り引き価格の差があると思うから」や「AIによる推定価格に信憑性があると思えないから」と推定価格の信ぴょう性を指摘している(画像2)。【画像2】「AI推定価格」のインターネット公開サービスが必要であると「思わない」と回答した人の理由(出典:大京穴吹不動産「AI推定価格に関する意識調査」より転載)
AIとリアルなマンションの価格査定では、どこが違う?
では、実際のマンションの価格査定はどうやって行われているのだろうか?
実は、査定には主に2種類ある。まず、「簡易査定」とか「机上査定」とか呼ばれるものがあり、公示地価などの公的データや周辺の取引事例などを基におおよその価格を推定する。つまり、実際の建物の状況などは見ずに、データ上で算出するものだ。
次に、「詳細査定」とか「訪問査定」とか呼ばれるものがある。売却目的で不動産会社に査定を依頼すると、担当者が物件の状態を細かく調査し、法的な条件なども加味して、実際に売却できる価格などを算出する。
一般的にマンションの場合は、周辺の取引事例が多いこと、一戸建てのように敷地の形や道路に接している部分がそれぞれ異なるといった個別性が高くないことなどから、周辺の類似した取引事例を参考に算出する方法が採られる。したがって、データ上で価格を想定するだけなら、限られた時間で人がやるより、AIが大量のデータから分析したほうが早くて精度が高いといえそうだ。
とはいえ、不動産は一つとして同じものがない。幅広いエリアで同じようなものが買われる商品ではなく、一定のエリアで需要がある個別性の高い商品だ。
同じ住戸でも、修繕やリフォームなどきちんとメンテナンスされた場合と何もしていない場合では、その価値は違ってくる。また、そのエリアで該当するマンションを欲しいという人がたまっている時期とそうではない時期など、タイミングによっても売れる価格は違うだろう。
つまり、物件の詳しい状態を把握して、待ち客の有無などその時点のマーケットを加味して、売れる価格を推定する人の技も、不可欠ということになる。
だからといって、AIの査定価格を否定するわけではない。AIにどこまでのデータを分析させるかにもよるが、大量のデータを分析した査定価格が容易に手に入るなら、自分のマンションをどうするかの判断材料になるし、売却のタイミングを計る指標にもなる。
AIの査定価格を目安や参考価格として上手に活用しながら、最終的にはマーケットに精通した人の技による査定価格も確認するというのがよいだろう。ただ、マーケットに精通した人かどうかという問題は残るので、不動産の取引の際には担当者の実力を見極めることが常に求められる。
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