予言者とマラウィの大統領と確率の話。

予言者とマラウィの大統領と確率の話。

今回はKenさんのブログ『Tokyo Life』からご寄稿いただきました。

予言者とマラウィの大統領と確率の話。

ナイジェリアで人気の予言者(本当は伝道師・説教師なんでしょうが、予言で有名)のT.B.ジョシュアという人が、「60日以内にアフリカの指導者が死ぬ」と予言したのが先々月の2月。誰が死ぬんだろうと話題になり、ワッド・セネガル大統領(85歳。このあいだ落選して前大統領になりました)、ムガベ・ジンバブエ大統領(88歳)、キバキ・ケニア大統領(81歳)などの名前が取りざたされました。現職の元首じゃないですが、その死を語ることがほとんどタブーとなっているマンデラ元南アフリカ大統領(93歳)、ノーベル平和賞を受賞したツツ司教(81歳)など、ほかにもアフリカには高齢の指導者が多いです。

そのT.B.ジョシュアが、「死ぬのはムガベ・ジンバブエ大統領ではない」と示唆した翌週の4月5日に、マラウィのムタリカ大統領が心臓発作で急死していたことが明らかになりました。享年78歳。これでまたT.B.ジョシュアの人気が上がるのは間違いなしだと思います。

人の死を喜ぶのは趣味じゃないですけど、最近マラウィは旧宗主国英国との対立姿勢を強め、インフレ、燃料不足が激しくなるなどの“ジンバブエ化”が進み始めていたので、大統領の死は政策の方向転換をする機会になるかもしれません。

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まあしかし、アフリカには高齢の指導者が大勢いるので、「アフリカの指導者が死ぬ」という予言は的中しやすいはずですよ。アフリカ大陸には54か国あるので、少なくとも国家元首は54人いる。で、元大統領、宗教指導者、ノーベル賞受賞者とか、“指導者”と呼べる人はそれ以上いるわけです。

それで、フェルミ推定よろしく、仮に“指導者”が100人いるとしましょう。そしてアフリカの人々の平均寿命を50歳と仮定しましょう。平均寿命50歳というのは、無作為抽出した50人を1年間観察していれば1人は死ぬだろう、と言っているのと同じです。“指導者”たちは無作為抽出した人々よりも高い健康管理を受けている可能性が高いとはいえ、他方、高齢の人も多いので、まあそのまま50歳という値を使ってもそうおかしくはないでしょう。

そうすると、指導者が100人いれば確率的には1年間に2人くらい死ぬのが当たり前、ということです。200人だとすれば3か月に1人。
ということで、T.B.ジョシュアの「60日以内にアフリカの指導者が死ぬ」という予言は確率的に結構的中する可能性の高そうな予言です。
……という理屈をこねても、彼の信者たちには聞こえないんでしょうけどね。

執筆:この記事はKenさんのブログ『Tokyo Life』からご寄稿いただきました。

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