「覚えたいことを、覚えたいときに、覚えたいだけ」記憶するコツとは
『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『英語を「続ける」技術』(かんき出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに「正しい英語学習の方法」についてお話しいただくこのコーナー。第11回目の今回は、「脳科学を活用し、記憶力を圧倒的に良くする方法」です。
英単語が覚えられないのは、「脳の仕組み」を知らないことが原因です。脳科学を活用して、覚えたい単語が覚えたいだけ覚えられるボキャブラリー増強術をご紹介します。なお今回は「英語」に限らず「勉強」や「仕事」など全てに通ずるお話です。
あなたは素晴らしい潜在“脳”力を持つ「天才」
私がよくいただくご相談の1つが「英単語が覚えられない」というものです。中には「私は記憶力が良くない」などと思っている人もたくさんいることでしょう。
最初に、1つ断言させてください。あなたは天才です。あなたは天才的な脳を持っています。その脳を“うまく”使えば、天才的な記憶力を発揮することは誰にでもできるのです。
パソコンやスマホなどに例えると分かりやすいかもしれません。コンピュータを活用して、バリバリ仕事をしたり、素晴らしい成果物・作品などを生み出したりしている人たちがいます。また一方で、コンピュータに“使われ”ている人や、苦手なためにできるだけ避けて生活をしている人までいます。
この差がどこから生まれるかというと、コンピュータに「何ができるか」「どう動かせばよいか」を理解し、その通りに「動かしている」かどうか――。苦手だという人は、コンピュータがどのように動いているかもよく分からずに、ごく一部の機能を恐る恐る使っているだけだったりします。
実は、みなさんの脳の使い方にも全く同じことが言えるのです。「英単語が覚えられる」人や、「頭が良い」と言われる人は、脳に関して「何ができるか」「どう動かせばよいか」を理解し、その通りに「動かしている」だけなのです。逆に言えば、記憶力をうまく発揮できていない人は、本来どれだけたくさん覚えられるかを知らず、どうやったら覚えられるかも理解せず、脳をうまく動かすことができていないだけだと言えます。
みなさんの脳は、素晴らしい性能を持っています。脳が持つ記憶容量は、一説によると17.5テラバイト(tera=兆)あると計算できます。これは、新聞に置き換えると約52,000年分の朝刊ですし、DVDであれば約3,800本に匹敵します。それだけの記憶容量を持っているのですから、脳にとっては数百個~数千個の英単語なんてわずかなものです。覚えられないとしたら、脳の機能をうまく引き出せていないだけなのです。
覚えるために脳は努力を必要としない
以下に、3桁の数字があります。
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さて、目をつぶって、3秒間深呼吸をした後、目をつぶったまま、上の数字を口で言ってみてください。
いかがでしたか? 簡単にできますよね。
もう1つ、今度は12桁の数字で同じことをやってみましょうか。数字を見た後、目をつぶって、3秒間深呼吸をした後、目をつぶったまま、下の数字を口で言ってみてください。
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今度はおそらく、うまく思い出すことができなかったのではないでしょうか?
頭の3~7桁くらいが思い出せても、途中から怪しくなってしまう人がほとんどでしょう(なお、正確に12桁全てを言えた人は、超天才の可能性があります)。
もう1問、やってみていただきましょう。今度は、先ほどの12桁の数字が4桁ずつに区切ってありますので、もう一度同じことをやってください。
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さて、今度はいかがでしたか? 12桁全部言えた、という人もいるかもしれません。そこまでいかなくても、さっきよりは言える桁数が増えたはずです。
実はいまのことが、みなさんの脳に関する「3つの重大な事実」を教えてくれています。ここを押さえておくことが、記憶力を伸ばすためには欠かせませんので、しっかりと理解してくださいね。
1つ目は「覚えるために、脳は努力を必要としない」ということです。最初の3桁の数字については、「覚えよう」と努力をする必要がなかったはずです。脳は本来、自然と記憶することができるものなのです。
そして2つ目は「長すぎると、記憶に残りづらい」ということです。マジックナンバーと呼ばれるのですが、4±1桁、つまり数字であれば3~5桁、言葉の場合には3~5文字ならば、誰でもすぐに記憶にとどめることができます。逆に、それを超えて長くなってくると、コップから水があふれてしまうように、記憶にも留めておくことが難しくなってしまうのです。
また、チャンク(「塊」の意)と呼ばれますが、短いチャンクに区切ることで、記憶に留めやすくなるというのも重要なポイントです。12桁の数字を4桁ずつに区切るだけで、記憶しやすくなるのです。
覚えられないのは、記憶の仕組みを無視しているから
ここで、あなたが過去に覚えようとして、覚えられなかったものを振り返ってみてください。例えば、英語が苦手な人であれば「Wednesday(水曜日)」や「February(2月)」のスペルがなかなか覚えられなかったりします。Wednesdayは9文字、Februaryは8文字ありますから、脳にとっては長すぎるのです。
これを丸ごと覚えようとすることは、350ml缶に入ったジュースを、200mlのコップに全部入れようとするようなもの。それはもう努力の問題ではなく、ちょっと無理のあることなのです。
ジュースであれば、コップを複数用意して小分けにする必要があります。長い単語であれば、例えばWed-nes-day、Feb-rua-ryなどと区切るべきなのです。そうするだけで、楽に記憶に残るようになります。
それなのに小分けにせずに、気合と根性で乗り越えようとしてしまいがちです。単語を何度も書き取って、“手で”覚えるケースも多いでしょう。それでは、最初のボタンを既に掛け違っていますから、覚えることが大変になってしまうのです。その結果、うまく覚えられずに「自分は記憶力が悪い」などという大きな勘違いを生んでしまっているのです。
覚えられない原因は「覚えよう」としてしまうから
そして、みなさんの脳に関する「3つの重大な事実」の3つ目をお伝えする前に質問です。最初の3桁の数字がいくつだったか覚えていますか?
「思い出せない……」という人がおそらくほとんどでしょう。それが正常なのですが、3つ目は「放置すると、すぐに忘れてしまう」ということです。
記憶する上で「繰り返し」が大事だということは、多くの方がご存じでしょう。しかし、その繰り返しを行う場所を間違ってしまっている人が少なくありません。多くの方が、何度も何度も「覚えよう」とします。先ほどの例でいうと、WednesdayやFebruaryという単語を覚えようとして、何度も頑張って書き取ります。
ただし、先ほどお伝えしたボタンの掛け違いが起こっているために、何度も繰り返すのはあくまでも「覚える」ため。本来必要のないところで、繰り返すという努力をしてしまいます。そして覚えた後は、安心してしまうのか、放置してしまうのです。それが、努力をする場所を間違っているということであり、それでは頑張って覚えたことも結局忘れてしまいます。
何度も言いますが、脳にとっては記憶するのは簡単なこと。ですから「覚える」ことを繰り返してもほとんど効果はないのです。「覚えよう」とする必要は全くありません。いや、むしろ「覚えよう」と努力しなければいけない時点で、何かが間違っている可能性が高いでしょう。
情報が長ければ、まずは短く区切りましょう。それなら脳は楽に記憶できますが、すぐに忘れてしまうのです。ですから大事なのは、覚えた後のこと――。覚えた内容を忘れないように、何度も記憶に呼び戻す、つまり、何度も「思い出す」作業を繰り返すべきなのです。
そのためのツールとしては、単語カード(フラッシュカード)がオススメです。効果的な使い方については次回、お伝えしたいと思います。
西澤ロイ(にしざわ・ろい)
イングリッシュ・ドクター
英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。
TOEIC満点(990点)、英検4級。
獨協大学英語学科で学んだ言語学に、脳科学や心理学も取り入れ、英語流の「発想」や「考え方」を研究、実践することで、大人だからこそ上達する独自のメソッドを確立する。
暗記の要らない英会話教材「Just In Case」、正しいリスニング方法が身につくトレーニング教材「リアル・リスニング」も好評を博している。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『英語を「続ける」技術』(かんき出版)他、著書多数。さらに、ラジオで4本のレギュラーがオンエア中。特に、木8の番組「めざせ!スキ度
UP」が好評を博している。
「頑張らない英単語記憶法」
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