過去の景気クラッシュに学ぶ不動産市場の終焉とは?

過去の景気クラッシュに学ぶ不動産市場の終焉とは?

バブル期を超えたマンション価格

不動産市場の活況が続いています。不動産経済研究所の調べでは、2017年度上半期に発売された首都圏のマンション一戸当たりの平均価格がなんと5993万円(!)、とうとう16年前のバブルの頂点の時よりも高くなってしまいました。

事実、別の調査機関の東京カンテイが公表した新築マンション年収倍率は、首都圏で10.68倍(!)。これは、新築マンション価格が年収の何倍に相当するか計算したもので、通常であれば5~6倍程度、あまり高いと注意信号、将来の住宅ローン負担で家計が厳しくなるというものです。

マンション販売会社も一戸当たりの面積を小さくしたりしてなるべく安くしようと努力していますが、もはや焼け石に水状態。同研究所の分析によれば、人件費や資材コストの高止まりに加え、地価の上昇も原因とされています。

ここまで不動産価格が上昇すると、マンション開発会社も庶民向けマンションは売れにくいとみて、より付加価値が見込める「億ション」の開発にシフトしています。それも2億、3億といった超高級マンションの開発に注力して、これがまたよく売れているといいます。

戦後2番目ともいわれる景気拡大を受けて、株式市況も不動産市況も活況を呈している中、このような景気がいつまで続くのか、過去の例を振り返ってみましょう。

10年続く景気拡大はない

さてここ50年の地価動向を見てみると、次のきっかけで不動産価格が大きく下がりました。

証券不況(1964年)

東京オリンピック後の金融引き締めにより、企業業績が悪化。それまで無理な資金繰りをしていた証券会社があおりを食って赤字となり、山一證券への日銀特融や赤字国債の発行で対応しました。年40%から80%も上昇していた地価は、その5年後にほぼ0%まで変動しました。

ニクソン・ショック(1971年)とオイルショック(1973年、1979年)

ニクソン大統領がドル紙幣と金の交換を停止し、急激な円高(1ドル360円→308円→変動相場制)が起きたためによる円高不況、それに続いて原油価格が1バレル5ドルから11ドルと2倍以上に上がった結果、それまで年30%から40%上昇していた地価は、年マイナス10%くらいまで変動しました。

プラザ合意の円高不況(1985年)とバブル崩壊(1991年)

その後、プラザ合意を経てバブル景気につながりました。地価も年30%から90%も上昇しましたが、不動産業への貸し出しを規制する総量規制をきっかけに地価は年マイナス20%からマイナス40%も下落することになりました。

リーマンショック(2008年)

ようやくバブル崩壊から回復しようとしていた時、アメリカの住宅バブル崩壊をきっかけとしたリーマンショックは、日本でもカタカナ不動産会社がバタバタ倒産する事態となりました。バブル後から回復しようとしていた地価も、再び下落することになりました。

次はいつ下落する?

現在、アメリカも、ヨーロッパも、世界的に好景気にあるようです。日本の景気拡大は58か月と長く続いています。一方、歴史を見れば10年続いた景気拡大はなく、今後、景気も、不動産市況も何かのきっかけで下がることも考えられます。しかし、残念ながらそれはいつになるかは誰もわかりません。

しかし過去の歴史をみれば、不動産市場の崩壊は、金融と株式からはじまることが多いとわかります。不動産市況が崩壊する前には、必ず金融政策と株式市場が変調します。心配な方は、日経平均などを日々チェックしておくとよいのではないでしょうか。

(中山 聡/一級建築士・不動産鑑定士)

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