「トンデモ設定だけど泣ける」奇跡の映画『スイス・アーミー・マン』ルーツは『もののけ姫』だった?[ホラー通信]

ダニエル・ラドクリフが“万能な死体”役を演じ、ポール・ダノ演じる遭難青年に生きる希望を与える……。という凄すぎる設定ながら、観た後はなぜか感動してしまう、青春サバイバルアドベンチャー『スイス・アーミー・マン』。現在大ヒット上映中です。

本作を手がけたのは、CMディレクター出身の監督コンビ、ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート(通称:ダニエルズ)。初長編作ながら、サンダンス映画祭やシッチェス・カタロニア国際映画祭で数々の賞を受賞し注目を集めている若き才能です。今回ホラー通信は、ダニエルズのインタビューを入手! 次回作の話なんかも飛び出したぞ。

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――本作の魅力はなんといっても、その設定の凄さだと思います。どんなところから発想を得たのでしょうか?

シャイナート:子どものころに森でサバイバルをしたときのような映画を作りたいと思っていたんだ。ビジュアル的にも映像的にも面白いと思ったしね。

クワン:昔から宮崎駿さんの『もののけ姫』なんかを観て、森というのは神秘的なイメージもあり、森の美しい映像、人間が作り出した人工物のコラボレーションを表現したかったんだ。

――死体役にダニエル・ラドクリフを起用した理由を教えてください。

クワン:色々な作品に出ている彼を観てきたけど、とても才能溢れる素晴らしい俳優だよ。ハリウッドではハンサムな俳優さんもたくさんいるけど、彼はすごく普通なんだ。

シャイナート:あと彼はちょっと変人っぽいよね(笑)

クワン:そうそう!そんなところもあって、彼以外は考えられなかったよ。

クワン:子どもの頃から『ハリー・ポッター』シリーズは観てきてたし、ずっと彼のファンだったんだ。

シャイナート:あと、あの役は体重が軽い人が良かったんだ。ダニエルは比較的背も低いし、ポールが担ぐのにちょうど良かったんだ。ポールにも「死体役にダニエル・ラドクリフはどうかな?」と聞いてみたら「最高だね!」と言ってくれたよ。

クワン:ポールも僕らと同じく彼のファンだったから、試しにオファーしてみたんだ。

シャイナート:仮に断られたとしても笑い話になると思ったしね(笑)。

クワン:でも実際、オッケーが出たときは驚いたけど、結果として彼のおかげでとっても良い作品になったよ。

――死体を演じて欲しい、というオファーをラドクリフは快諾してくれたのでしょうか?

シャイナート:躊躇せずに「やりたい」と言ってくれたよ。あと死体役を演じる上でスタントも自分でやりたいと言ってくれたんだ。彼ほどのビッグネームだとNGもあるだろうけどさ。

クワン:でも、彼自身がやりたいと言ってくれたから、遠慮なく撮影が進められてとても楽しかったよ。

――本作を拝見して、サバイバル映画以上に青春映画だと思いました。その狙い(青春映画を意識したかどうか)はありましたか?

シャイナート:サバイバル映画を作ろうというつもりはなかったよ。僕らみたいなのは劇中繰り広げられるサバイバルを得意とするタイプでもないしね(笑)。青春時代の素直な自分、ありのままの気持ちを映し出したいと思ったんだ。

クワン:この映画では単なる死体がどんどん成長していく姿が描かれているんだけど、それは一キャラクターの成長であって、青春というテーマを狙った意識はなかったかな。

――映像がとても綺麗でした。お2人のルーツとなった作品(例えば、こういう映画の美しさを目指したなど)を教えてください。

シャイナート:宮崎駿さんはもちろん好きだし、あとポール・トーマス・アンダーソン監督の『パンチドランク・ラブ』だったり、ミシェル・ゴンドリー監督の『エターナル・サンシャイン』なんかに影響を受けてるかな。

クワン:僕なんかはとにかくアニメが好きだから、映画は実写にアニメの要素も取り入れて、ライブアクションで展開するのもいいんじゃないかな。

――次回作の構想はありますか?

シャイナート:たくさん可能性のある脚本を今は書いているよ。

クワン:SFのドラマで、たくさんの宇宙が存在している、可能性を秘めているという脚本も書いていて、それと同時に税金を取り扱った脚本なんかもあるよ。

――超楽しみにしてます!!

【STORY】
無人島で助けを求める孤独な青年ハンク(ポール・ダノ)。いくら待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、波打ち際に男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。ハンクは、その死体からガスが出ており、浮力を持っていることに気付く。まさかと思ったが、その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。ハンクは意を決してその死体にまたがるとジェットスキーのように発進!様々な便利機能を持つ死体の名前はメニー。苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。「生きること」に欠けた者同士、力を合わせて大切な人がいる故郷に帰ることを約束する。果たして2人は無事に家へとたどり着くことができるのか―!?

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

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