なぜ新聞は間違いを繰り返すのか? 新聞内部からの証言

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写真:fukaponさん http://www.flickr.com/photos/fukapon/3889728888/ (写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません)

※この原稿はガジェット通信へ匿名でご寄稿いただいたものです。ガジェット通信では、新聞やテレビなどマスコミ現場からの証言をお待ちしております

相手のジャーナリストやメディアが信用できるか見極める方法

ガジェット通信を初めて読ませていただきました。

私は地方紙の整理部に籍を置いておりましたが、今は子会社地域紙の編集整理の担当をしている者です。
大変印象深い内容がありましたので、ちょっと書かせていただきます。コメントで不特定多数に読まれるのは、私の思うところではないので、失礼・場違いを承知で、あえてこのフォームから書かせていただきます。

「表面上の誤字は校正の人が繰り返し読めば正しく直すことができます。しかし内容が正確かどうかは結局当事者にしかわからないのです。時間をかけて取材しても正確な記事を書くのはなかなか難しいものですし、限られた時間の中でやるのであればなおさらです。「取材対象から影響を受けないため」「過去の事件の教訓」とかなんとかもっともらしいことを言ってるところもありますが、そんなの言い訳で、影響を受けるかどうかは記者自身の問題ですし、相手が事件に巻き込まれる可能性がある等、本当に見せてはまずい場合だけ避ければいいのです。つまるところ、締め切りに間に合うように記事を出すのが第一で、そのためだったら内容が間違っていてもよいという考えだから当事者や取材対象に確認させたくないのではないでしょうか。」
※ガジェ通日誌より引用: https://getnews.jp/archives/181342

 新聞媒体に限ってのことですが、日刊の整理部に居る頃、このようなトラブルはよくありました。

 これは、取材から印刷工程までの制作手順そのものに問題があると考えています。取材した記者は原稿を、まずデスクが読み、校正します。この時点で取材される側の人物をまったく知らない人間が校正するのですから恐ろしいことです。言いまわしを一字変えるだけでまったく逆の意味になってしまうことも少なくありません。そして、デスクの校正した原稿を、整理部に送り、そこで整理部員が原稿を読んで見出しを付けたり(社によってはデスクが付けるところもあります)、場合によっては、またそこで言いまわしを変えてしまうこともありますし、紙面に入りきらない場合は文章を削ってしまうことも多いです。整理部員という第三者が読むので、記事を削るのにも本人が読んで主観的に削るか、記事の後ろからスバスバと削っていきます。写真説明も、実際に撮った本人が付けてこない場合は、整理部員が文章を読んで付けます。もう、この時点で、取材される側の意思や事実関係が壊されていることも少なくありません。

 この新聞制作工程の流れが、どうして変わらぬものなのか? と今でも不思議に感じています。

 新聞媒体では、整理部員が最初の読者と言われていますが、当事者を知らない社員が見出しを付けることがあるので、当然、トラブルは起きます。

 これがもし、取材した記者が見出しを付けて紙面レイアウトまで行えば、こういうトラブルは今よりは減るのでしょうが、最近は届く原稿を読んでも、とらえ方がいくつにもなる書き方をしてくる若い記者も居ます。

 かつて、「紙面の初稿ゲラを取材先から確認したい」とデスクに言うと、すごい剣幕で「活字になる前に見せるのは記者にとってこれ以上の屈辱はない!」と机を叩いて怒りまくっていました。

 「あなたは取材された経験がありますか? 自分の意思をもって話したことと違う意味のことを活字にされたら、怒りませんか?」との問いに反感を買ったのか、左遷されてしまいました。取材されて痛い目に遭ったことのない媒体のデスクにはわからないのでしょう。「報道の自由」を印籠に、他人のプライバシーや危険にさらされることなど、まさに”他人事”のように思わなければやってゆけないのでしょう。

 一度活字になってしまったものには訂正が効かないので、取材される人は、ゲラの確認はされた方がよいと思います。今、私の扱っている紙面では、少なくとも、書いた筆者には小組ゲラを送って確認してもらっています。読んで悪い意味に受け取られそうな場合や、少しでも疑問に思った場合は、すぐ記者に確認し、再度、取材先にFAXでゲラを送って確認してもらっています。

 「締切時間に間に合わせるため」「影響がないと判断した」は言い訳にはなりません。それをよく分かっているのは媒体に居る人たちのはずなのですが、自分で自分を否定するという、器用なことができるうらやましい人材ばかりです。

 締切時間なんて、5~10分くらい遅れても、制作部の能力が優れていれば遅れの時間は取り戻せますし、配送トラックも少しくらい印刷が遅れても待っててくれます。

 もっとひどい記事は、共同通信や時事通信から届く原稿にちょっと手を加えて、記事の最後に(共同)と付けるやり方ですね。共同通信の原稿を一字も置き換えないなら記事の最後に(共同)とクレジットを入れてもよいのですが、助詞1つ変えても意味が変わってしまう文章だってあります。それに(共同)とクレジットを付けるやり方は、いかがなものか? と思うのは私だけでしょうか?

 ゲラを取材先に見せて確認してもらうことは、自分たちの媒体の信用を高めるはずなのですが、どうやら部数増と広告取りに必死な媒体は、そういう観念はまったく無いようで頭が下がります。

ボヤキになってしまいましたが、お時間とらせて申し訳ございませんでした。

※ガジェット通信へ匿名でご寄稿いただきました。
※写真:fukaponさん http://www.flickr.com/photos/fukapon/3889728888/ (写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません)

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