30歳過ぎたら、仕事は「効率」よりも「〇〇」を重視すべき!ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

30歳過ぎたら、仕事は「効率」よりも「〇〇」を重視すべき!ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第2回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「30歳過ぎたら利息で暮らせ」(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第1巻 キャリア2より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を排出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが・・・。

自分の市場価値を上げるにはどうすればいいのか?

英語教師を辞めようかどうかと迷っていた井野に対して、転職代理人の海老沢は「確かに、転職先を選ばなければ働くところはいくらでもある。ただし、社会的地位と収入は確実にダウンする」と忠告します。

さらに海老沢に「今の井野さんのエンゼル(市場価値)はゼロだ」と告げられた井野は、怒ってその場を去ろうとします。すると、「あなたのエンゼルを上げる方法が一つだけある」と海老沢。井野はその先を聞こうとしますが、「まずは自分で考えろ」と元・同僚の桜木に言われてしまいます。

別れ際に、「エンゼルを上げる方法を教えて欲しい」と懇願する井野に対して、桜木が与えたヒントが「以後、どれだけ多くの利息をとって暮らせるか、そのためには何が必要かを考えろ」というものでした。

「転職して年収アップ」というのは、転職希望者の多くが希望するところです。しかし、実際は働く場所だけを変えても、そう簡単に年収は上がりません。注意しないと、社内での蓄積がゼロになってしまう転職は、かえって自分にとって不利になる場合がある、ということを、前回「会社で『必要とされる人』と『そうでない人』の差はどこにあるのか?ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス」の中でお伝えしました。

アウトプットを増やすには、効率だけでは限界がある

それでは、桜木の「30歳過ぎたら利息で暮らせ」の言葉には、一体どういう意味が含まれているのでしょうか?これは実は“修行時代”のことを言っています。つまり「将来的に利子だけで暮らしていけるようになるために、今、どれだけの仕込みができるか?」ということです。

市場で自分の労働価値を上げていくためには、「いかに同じ労力で価値の高い仕事ができるか?」もしくは「同じ労力でアウトプットを増やせるか?」といったことを考えていかなくてはなりません。

ここで多くの人は、「アウトプットを増やす」と聞くと、どうしても効率主義に陥ってしまいます。効率とは、早い話が“時短”です。仮にこれまで1時間で行っていた作業を50分にできたからといって、その貴重な10分は、瞬く間に他の作業で埋まってしまいます。それは結局のところ、「作業の繰り返し」に過ぎません。

大事なのは「効率」ではなく、「効果」に着目することです。

仕事が回る仕組みづくりこそが大事

「利息」は一般に、元金を金融機関などに預けておくことによって付きます。最初の元金は自分で苦労して稼ぐ必要があるでしょうが、利子は労せずして増えていきます。この考え方を、仕事にも応用するワケです。

事例をお話しますと、私は会社員としてメーカーに勤めていた時に、アウトレット流通業を社内起業しました。それは、メーカーの売れ残った在庫などをアウトレット店で販売する、というものでしたが、最初の1店舗目をオープンした際の店長は私でした。

当初から、多店舗展開することを視野に入れていた私は、その時「仕組みをつくるのは今しかない」という気持ちでした。ですから、店のことを知るために「誰よりも店舗にいる」と決めて、実際にそうしました。もちろん、管理職ですから、「残業代がつくかどうか?」などは関係ありません。

お店は半年後に2店舗になり、1年後には4店舗に増えました。この時、1年間の店長経験を活かしました。自分がいなくても店舗が回る仕組みをつくり上げた私は以後、店舗のシフトに常時入る必要はなくなり、マネジメントに専念するようになりました。これが「利子で生活する」という意味です。

その道を極めれば、業界を超えることも可能

こうなると、その次に必要となってくる「マネジャーの育成」という段階に先回りするための時間を確保することができます。仕組みは、一度できあがれば、基本的にはずっと使い続けることができます(もちろん、軌道修正は常に必要ですが)。これが「効果」の威力です。

さらには、商品すらも制限を受けなくなっていきます。これをエンゼルバンクの登場人物(英語教師)にたとえると、必ずしも英語でなくてもよくなる、ということです。一つのことを極めれば、たとえば「教え方のコツ」「人を惹きつける話術」「参考書の書き方」など、もっと活躍のフィールドを広げることが可能となります。これが「業界を超える」ということです。

もし、これをお読みの方の中で、「自分は毎日、繰り返し作業をしているだけだ」という人がいれば、ぜひ「どうしたら自分も利息で暮らすことができるだろうか?」と考えてみることをオススメします。なぜならそれこそが、自分の価値を高めるための近道なのですから。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が12刷となっている。著作累計は35万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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