シングルペアレント世帯の貧困率が世界一高い日本。解消するには?
シングルペアレント世帯の貧困率とは
子どもの貧困の深刻化が社会問題になっています。格差社会における貧困状態を表す指標として「相対的貧困率」があります。所得が、全世帯の中央値の半分に満たない世帯に属する人の割合です。
全世帯で見た場合の日本の貧困世帯率は、約20%ですが、18歳未満の子と一人親の世帯(シングルペアレント世帯)でみると、貧困率は54.6%と半数を超える結果となっています。そして、この一人親世帯の貧困率は、世界で最も高いとされています(OECD統計)。
高い就労率にもかかわらず貧困率が高いワーキングプア状態
さらに、一人親世帯の貧困率を、親が働いている世帯とそうでない世帯に分けてみると、日本では、親が働いている世帯の貧困率の方が高くなっている点に特徴があります。一人親世帯のうち80%以上が母子世帯ですが、母子世帯の就労率も80%を超え、父子世帯では90%を超えています。就労すれば収入が入るのだから貧困率は下がるはずなのに、一人親世帯では、働いても貧困から抜け出せないワーキングプアの状態となっています。
背景には、フルタイムでの就業が困難であったり、給与の男女差が大きいといったことがあると考えられます。
ワーキングプアの改善に向けて
改善策としては、就労外収入の増加、就労収入の向上が考えられます。
(1)就労外収入の増加
(ア)養育費の確保があげられます。一人親世帯になった理由の約80%は離婚です。けれども、離婚の際に、養育費の取り決めをしたのは、母子世帯では38%に留まり、継続して受給している母子世帯は、20%にすぎません。未成年の子どもがいる離婚の場合、必ず養育費を取り決め、確実に支払わせる制度を確立する必要があります。
(イ)児童扶養手当など、公的支援の増大も急務です。現在、一人親世帯は、所得に応じて、児童扶養手当を最大月額42,290円支給されることとなっています(第2子以降は、9,990円。第3子以降5,990円など加算)。前記のとおり、就労世帯において高い貧困率であること、その他の改善策は即効性が高いとはいえないことを考慮すると、増額を検討することは急務と考えます。
(2)就労収入の向上
(ア)給与の男女格差の是正は言うまでもありません。母子世帯の就業状況として、母が正職員として働いている割合は、4割以下です。そして、年間就労収入を母子世帯と父子世帯で比較すると、母子世帯は父子世帯の約半分となっている実態があります。
(イ)社会全体の働き方の見直しも必要です。一人親世帯と婚姻世帯を比較したとき、一人親にとって、家事育児のための時間の制約は、明らかです。一人親本人に能力があっても、時間に融通の利きやすいパート・アルバイト等で就労している場合も少なくないでしょう。日本の企業社会において、長時間労働が要請される正社員・正職員制度の根本的な見直しを検討すべきときに来ていると思います。
一人親世帯の貧困率が世界一高い日本。ワーキングプア状態を解消するには、働き方の見直し、公的支援の増大、養育費の確保などを行っていくことが大切です。
(中村 伸子/弁護士)
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