盟友サイモン・ペッグも大絶賛! 『ベイビー・ドライバー』エドガー・ライト監督インタビュー
『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う』などのエドガー・ライトが脚本・監督を務めた映画『ベイビー・ドライバー』(8月19日公開)。
天才的なドライビングセンスを買われ、犯罪組織のゲッタウェイドライバー(逃がし屋)として従事する通称ベイビー(アンセル・エルゴート)は、デボラ(リリー・ジェームズ)と出会ったことで犯罪現場から足を洗うことを決意。しかし、組織のボス(ケヴィン・スペイシー)に彼女の存在を嗅ぎ付けられ……。
完璧なプレイリストが揃った『iPod』から流れる楽曲に合わせてギアを入れ、エンジンを吹かし、銃撃戦を繰り広げる――カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』とも評される今作。世界から称賛されたロックンロール・カーチェイス・アクションで本格的ハリウッド長編映画デビュー作を飾ったエドガー・ライト監督にインタビューを行った。
長年の構想が実現
――今作も非常に素晴らしかったです! 『ショーン・オブ・ザ・デッド』でクイーンの『ドント・ストップ・ミー・ナウ』のメロディに合わせてゾンビをやっつけるシーンがありましたが、その頃には既に『ベイビー・ドライバー』の構想が?
ライト監督:もっと以前の、僕が21歳の頃から構想していたんだ。言われた通り、『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『スコット・ピルグリム』、『ワールズ・エンド』でも、音楽に対して人物の動作をコレオグラフィ(振付け)するのは少しずつチャレンジしていた。それはすべて、『ベイビー・ドライバー』を作りたいという思いからだった。スタジオを説得するために、過去に僕が手掛けた作品から音楽に合わせて振付けられているシーンを1本のフィルムにまとめて提出したよ。
――今作のオープニングシーンを見るに、きっと監督が手掛けたミント・ロワイヤルの『ブルー・ソング』のPVもその説得材料に含まれていたと思います。冒頭から最高に格好良かったです。
ライト監督:最初から観客を掴みたいという思いがあったんだ。音楽をメインにして、ほとんどセリフは無く、これから見る映画の方向性を示している。映画のオープニングは、観客に呪文や魔法をかける役割が重要だ。『ベルボトムズ』(ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン)や、その後の『ハーレム・シャッフル』(ボブ&アール)のシークエンスは、そんな効果を狙っているんだ。
――音楽に動きを合わせるということで、テイク数もかなり重ねられたのでは?
ライト監督:『ベルボトムズ』のシークエンスは、カーチェイスを入れて8日間くらい撮影したかな。ベイビーが長回しでコーヒーを買いに行く『ハーレム・シャッフル』のシークエンスは、9時間で28テイク撮ったよ。リハーサルや通し稽古もしていて、とても面白い映像だからDVDの特典にしたいと思っている。
音楽がアイデアの源に
――監督ご自身はどんな音楽やアーティストに影響を受けてきましたか?
ライト監督:数多くのミュージシャンから影響を受けているから答えるのが難しいけど、若い頃はビートルズ、デヴィッド・ボウイ、クイーン、ロキシー・ミュージック、T・レックス、プリンスとかを聴いて育ったかな。自分の世代よりも少し前の音楽に夢中になっていたと思う。音楽は人生の大きな部分に影響を与えてくれたし、常にインスピレーションを受けている。脚本が書けない時でも、音楽を聴くとアイデアが浮かんでくるんだ。
――そうすると、今作で使用する楽曲を絞り込む作業は大変だったのでは?
ライト監督:そのシーンにピッタリの楽曲を選択するというアプローチだったから、あれもこれも使いたいということはなかった。好きな曲は数えきれないくらいあるけどね。
――ベイビーは『iPod』を何台くらい持っていて、何曲くらいの音楽が入っているのでしょうか?
ライト監督:ベイビーのアパートでたくさん『iPod』が保管されているシーンがあるけど、eBayとかを利用して何台もかき集めるのが大変だったよ。彼は10年くらいクルマの盗難を繰り返しているという設定だから、きっとクルマの中には『iPod』とサングラスが置き去りにされていると思ったんだ。それで、所持している台数については把握していないんだけど、僕も『iPod classic』を持っていて3万4000曲くらい入っているから、曲数については想像もつかないな。
――続編がいくらでも作れちゃいますね!
ライト監督:そうかもしれないね(笑)。
サイモン・ペッグも大絶賛
――ライト監督が手掛ける作品の主人公は、ちょっとポンコツなところがありますが、ベイビーに関してはまたちょっと違うアプローチで驚きました。
ライト監督:ショーンは怠け者だったし、『ホットファズ』のニコラスはワーカホリックで、スコット・ピルグリムは人の気持ちをイマイチ理解できない人物だ。ベイビーは好青年だけど道を踏み外し、自分がした事に対する責任を取らなければいけない。それぞれ異なるキャラクターだけど、観客に共感してもらいたい人物というのは共通していると思う。もちろん、誰しも銀行強盗のゲッタウェイドライバーの経験なんてないけど、彼と音楽との結びつきや、人生の過ち、人間として欠けている部分は共感を呼ぶ部分だと思う。観客は彼の変化、成長を一緒に経験できるんだ。
――ショーンやニコラスを演じたサイモン・ペッグさんは今作について何かおっしゃっていましたか?
ライト監督:ロサンゼルスとロンドンのプレミアに招待していたんだけど、ちょうど『ミッション:インポッシブル』の撮影で出席してもらえなかったんだ。だから自分でチケットを買って、劇場で観てくれたらしい。「すごく良かった」と褒めてくれたよ。
――きっと今作にも参加したかったのでは?
ライト監督:サイモンやニッグ・フロストと作る映画とは別物の企画だったら、その辺は理解してくれているはずだよ。それに、彼らは僕がいなくても十分忙しそうにしてるじゃないか。罪悪感は全くないよ(笑)。
――また彼らとの映画も楽しみにしています(笑)本日はありがとうございました!
映画『ベイビー・ドライバー』公式サイト:
http://www.babydriver.jp/
オマケ
『ベイビー・ドライバー』のオープニングシークエンスと、ミント・ロワイヤル『ブルー・ソング』のPVの比較。
BABY DRIVER – 6-Minute Opening Clip(YouTube)
https://youtu.be/6XMuUVw7TOM
Mint Royale – Blue Song(YouTube)
https://youtu.be/dfrcZsKcVxU
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